プロローグ 始まりの夜に
1960年5月
ある夜、前触れもなく表れた無数の流星が人々の視線を釘づけた。
この世界を祝福するように星は一晩降り続けこの世の常識をすべて破壊していった。
夜が明けると空が割れていた。
あの星たちがどこから来たのか、なぜ空が割れているのか、それ以前にこの表現がただしいのかさえわからない。
ただ、そこに空が割れたという事実があるだけだった。
あの日から世界は大きくかわった。
数週間後の世界中で不思議な力をもつ子供たちが現れた。
体がゴムのようなもの、体に磁気を発生させるもの、体に炎をまとうもの。その能力はさまざまだ。
しかし、これは始まりにすぎず次々に多種多様な能力が発見されいつしか特殊能力は社会の当たり前となっていった。
唐突に訪れた人間の進化ともいえるこの現象は、社会にはあまりにも残酷だった。
法律が対応せず名もない犯罪が増え、暴力により支配しようとする過激派も増えていった。
だが、逆に社会を守ろうとする者たちもあらわれる。
平和を望み、弱気ものを助け、社会の安定を目指す者たちだ。
その者たちは、いつしかヒーローと呼ばれ社会的地位を確立していった。
その中でも、ひときわ輝くヒーローがいた。飛翔のグリステン
現在にもその名をとどろかせていた英雄だ。
しかし、現在そのヒーローは過去の人となっている。
数年前に亡くなったのだ。
法律やヒーロー制度が整えられはしたが英雄の不在は社会をゆっくりとだが確実に壊していた。
社会の不安、理不尽に対する怒り、そのすべてをヒーローのせいにして誹謗中傷する。
そんなヒーローに厳しい社会で英雄である祖父にあこがれヒーローを目指す。
高校生 早瀬はやとの物語である。