0話転生前
ある日、僕が一番大好きで一番大切な人が死んだ。
その日から僕は、誰かの家で過ごす様になった。
ある日、僕が次に大好きで次に大切な人が死んだ。
その日から僕は、誰かの家の一番隅っこに押し込まれた。
ある日、僕が過ごした部屋がなくなった。
その日から僕は、道の上を歩く様になった。
ある日、僕は男の人に連れて行かれた。
その日から僕は知らない人の家に住んだ。
ある日、僕が過ごす家がなくなった。
その日から僕は、いろんな家に移り住んだ。
ある日、僕は気づいた。
この世界には僕の居場所がなかった。
僕はそれから出来るだけこの世界には存在さえしていないかの様に息を殺していた。
死んでこの世界から抜け出すことも考えたけど、最初の親が僕に幸せを望んで付けたという名前や、多くの僕の大切な人との記憶を捨ててまで、僕は逃げることが出来なかった。
でもどれだけ逃げようとも向こうは必ず見つけてきた。僕が何度言っても子供だからと聞いてもらえず、何度も大切な人を失った。
何度目かの誰かの家にいる時、僕は小学校に入れられた。そこのは同年代の子供が集まっていて勉強をする所だと誰かが教えてくれた。僕はここでいろんな人と出会い、いろんな人が僕を知ろうとした。
でも僕は何も答えられなかった。皆んなを不幸にする怖さもあったけど、何より人と話す機会が無かったせいで、人との話し方が分からなかったのだ。
その後僕はクラスで孤立した。僕自身がこれを望んだはずなのに僕はその現実を受け止められなかった。
その後も何度もいろいろな小学校に通った。けどどこでも僕の扱いは同じ様なもので、僕は諦めていた。
その後僕は中学校に上がった。中学でも僕は孤立し、どこにいても一人だった。でも中学生になるとみんなが僕を知ろうとして、話しかけて来るようになった。僕も六年間の小学校生活で人と話す方法を教えてもらっていたので、クラスの人と生まれて初めて話すことが出来た。
その次の日、クラスメイトの約半数が交通事故に巻き込まれて死んだ。その次の日にはさらにその半数が通り魔殺人で殺され、残りは死ぬ恐怖に耐えきれず、自殺したか家に引き篭もるようになった。
僕はまたクラスで孤立した。
その時から、僕は人と話すのを極力避けるようになった。教室では興味も無い分厚い本を読み、授業中には先生の話を聞き、休み時間には教室と手洗いか教室と図書室の間しか移動せず、廊下は早足で駆け、人とすれ違っても挨拶はしなかった。放課後は部活にも行かず真っ直ぐ家に帰り、自室に引き篭もって生活した。
そんな生活を中三まで続けていたため学力だけは上がり、県内でも有数の進学校に僕は入学した。高校でも僕は人とは一切関わらず過ごそうと思っていた。
けど僕はある人に出会ってしまった。太陽の様に眩しいあの子に。