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黒蛇の紋章  作者: へびうさ
第2章 諸侯たちの反乱

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53.兵士の必須技能

 黒蛇(こくじゃ)軍団に参加する女性兵士たちが、王都に集結した。

 レイシールズ城の防衛戦を経験している兵士を除き、総勢3146人。すべて志願兵だ。


 兵士になったばかりの者もいれば、以前から軍務についていた者もいる。

 とはいえ、まともな訓練を受けていた者はおらず、全員が新兵と言っていい。


 現在、王城に隣接する広場で軍団の結成式が行われている。

 マケランは新兵たちに向けて演説をするため、演壇に上った。黒蛇の紋章旗を持ったピットも、その後に続く。


 レイシールズ城で共に戦った217人の兵士たち、そしてマケランの同期生のリヴェットは、後ろで見守っている。


「あれがレイシールズ城の英雄、『黒蛇のマケラン』ね」

「意外にイイ男じゃないの」

「でも、ちょっと陰険そうに見えない?」

「隣にいるのが噂のピット君ね、かわいいっ!」


 マケランが登壇すると、新兵たちが騒ぎ出した。


(これだけの人数の女が1か所に集まると、やはり騒々しいな)


 一見して、すでに実戦を経験している「レイシールズ組」とは明らかに違う。顔に締まりがないのだ。

 次の任地がレイシールズ城であり、戦闘に巻き込まれる可能性が低いことを知っているため、緊張感がないのだろう。


「静かにしなさい!」


 新たに兵士長になったシャノンが前に進み出て一喝すると、新兵たちはピタッと静かになった。左目を黒い眼帯で覆った彼女は、すでに歴戦の空気をまとっている。


「なにあの人、怖い……」

「いかにも鬼の下士官って感じね。すごい迫力」

「シッ、そんなこと言ったら斬り殺されるよ」


 静かになったと思ったら、またボソボソと私語が聞こえてきた。

 シャノンはハアッとため息をついてから演壇を見上げる。


「司令官、見せしめに1人斬りましょうか? そうすれば彼女たちも自分の立場を理解すると思いますが」


(シャノンもグラディスに似てきたな)


「そこまでしなくていい」


 マケランはシャノンをなだめた。「あせるな。彼女たちがすぐに一人前になるとは、俺は期待していない」


 王との交渉により、新兵を実戦に投入するまでの時間的猶予(ゆうよ)を得た。今はじっくりと腰をすえて育てるべきだ。


 それに、すべての新兵がはしゃいでいるわけではない。姿勢を正し、引き締まった表情でマケランを見ている者もちゃんといる。


 新兵という言葉でひとくくりにするのは適切ではない。1人ひとりの兵士が個性を持った人間であることは、レイシールズ城で学んだことだ。


「諸君、よく来た! 俺がこの黒蛇軍団の司令官、ハマーチルド・マケランだ!」


 マケランが声を張り上げて名乗ると、今度こそ新兵たちは口を閉ざした。学者のような風貌のマケランが、ここまで大きな声を出せるとは思わなかったのだろう。


「知ってのとおり、現在我が国はペルテ共和国への侵攻のための準備をしている。遠征軍に参加するため、各地から将校や兵士たちが続々と王都に集まってきている。しかし、君たちが遠征軍に加わることはない。そんな力はないからだ。君たちは腰に剣を差してはいるが、場末の酒場で飲んだくれてる親爺にも勝てない」


 マケランはそう言ってから、新兵たちの顔をながめた。


(悔しそうな顔をしている者もいるな。なかなか見込みがありそうだ)


「君たちは、まず兵士にとって必須の技能を身につけねばならない。それが何かわかるか?」


 列の先頭にいた兵士が手を挙げた。マケランはその兵士に発言をうながす。


「剣の使い方でありますか?」

「もちろんそれは重要な技能だ。だが、もっと必要なことがある」


 別の兵士が手を挙げた。


「クロスボウの使い方でしょうか?」

「それも重要だ。だが、戦いの技能よりも先に身につけるべきことがあるんだ」


 さらに別の兵士が手を挙げた。


「軍規を覚え、上官に対して服従することを学ぶ必要があります」

「いいぞ、それはとても大事なことだ。しかし、今言いたいのはそのことじゃない。軍規についてはわざわざ教えないから、各自で覚えておくように」


 他に手を挙げる者はいないようだ。

 ちらっと後ろを振り返ると、レイシールズ組の兵士たちも不思議そうな顔をしている。


(どうやら、あいつらもわかってないようだな)


「兵士に必須の技能とは、すなわち――」


 マケランは新兵たちの顔を見回し、重々しい口調で告げた。


()()()()だ」

 この話は文字数が少なかったので、おまけとして士官学校について説明します。


 王立士官学校は12年前にタイパン王によって創設され、入学試験に合格すれば身分を問わず入学が認められました。

 学費は王家が負担するのが原則ですが、リンクードのように自分で払っている者もいます。


 学生は4年間で将校に必要なことを学び、成績によって順位がつけられますが、順位にかかわらず卒業後は少尉に任官されます。

 階級は上から順に、元帥、大将、中将、少将、大佐、中佐、少佐、大尉、中尉、少尉と定められています。これもタイパン王が考えました。


 ただし階級制度はまだまだ未成熟です。

 現在は第1期から第8期まで112人の卒業生がいますが、戦争で手柄を立てるような機会はなかったため、まだ少佐以上の者はいません。


 マケランたちの世代は特に優秀な学生がそろった最強世代と評価されており、「花の第8期」と呼ばれています。

 第8期生の特色として、学生同士もしくは教官がつけた異名を持っています。


 以下は各人の序列と異名です。ストラティスラとリヴェット以外は男です。

 今さらですが、この世界の人名は姓が先、名前が後になります。


第1位『黒蛇』ハマーチルド・マケラン

第2位『常勝』ブラッドレイ・ストラティスラ

第3位『完璧』ハイウェザー・リンクード

第4位『狂獣』グレイブン・バーギー

第5位『堅実』レズリー・フィディック

第6位『黒龍』ローウォーカー・エルギン

第7位『豪運』キングスリー・ダフトン

第8位『忠士』リーチ・カード

第9位『不屈』ヘズリック・ノッカンド

第10位『神速』ウルフリッジ・キース

第11位『病将』メタルハート・アルタバイン

第12位『鉄壁』ストロング・ロセス

第13位『好漢』ラマンノ・タマナブリ

第14位『脱兎』レッドソーン・ブリーヴァル

第15位『魔弓』ヘス・ダルウィン

第16位『老亀』ウォルトン・インチゴ

第17位『沈着』エヴァートン・アベロア

第18位『双剣』グローバー・マクドール

第19位『蛆虫』ゲイガン・デュラン

落第生『暴風』クライトン・リヴェット


 順位はあくまでも学校の成績に基づいたものです。実戦においては、トップ3に引けを取らない実力者がいるかもしれません。

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― 新着の感想 ―
〈序列と異名をついて〉 19位は異名と言うより、蔑称では? 以下気になるリスト 豪運:面白いエピソードが楽しみ 病将:本編出てこれるのか?(病で死なない?) 黒龍:この国だと、マケランの劣化版? 狂獣…
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