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ぼくらの島  作者: ねむるこ
真を見極める子
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63.ステージ・ゼロ(5)

「……これは、幽霊ってことでいいの?サン、向こうに行っちゃったから分からないよ!」

 (つくる)がハンティングモードの銃を手にしながら、声を上げた。真見は近づいて来るシールド職員を一瞥して、迷うことなく答える。

「この人たちは全員、幽霊だよ!」

「どうしてそんなはっきり分かるんだよ!」

「直感……」

 不安そうな創の表情を見て、真見は首を振った。

(私がそう思ったのなら何か根拠があるはず。考えなきゃ……。これから先、直感だけじゃ進んでいけない。お父さんとこの島を救うことができない!)

「私、ちょっと五感に敏感で……幽霊は少しだけ色合いが眩しく見えるんだ……。その、身体全体から光が出てるみたいに見えて……。空間に映し出された映像だからだと思うんだけど」

 それを聞いた瑠璃は目を瞬かせる。

「真見……。あんたどうして分かるの?存在する人間かバーチャルの人間か……。私には分からないのに」

「神野さんすごい!やっぱり五感が鋭いお陰かなー?」

 良が楽しそうに笑った。

 二人の反応を見て、真見は黙り込む。今までの胸のつかえがすとんと落ちたような気がした。

(自分の性質を使いこなすってこういうことなんだ……)

 普通ではない自分がずっと嫌いで、鋭敏な感覚をずっと捨て去りたいと思っていた。だけど今はどうだろうか。

 嫌いで邪魔だったはずの性質が今、最大限に発揮されている。真見は大きな何かに包まれている気がして、心地よさを感じた。

 自信に溢れた真見の姿を目の当たりにした創は照準を合わせる。

 さっきまで騒がしかった創が息を顰めるように静かになった。切り替えの早さと他者を介入させないほどの集中力に真見は思わず息を呑んだ。

 パンッと言う銃声と共に目の前のシールド職員が消えた。創が驚いた表情で真見の方を振り返った。

「本当だ!すげえ!」

 創が喜んでいる所に、近づいて来た偽物のシールドに向かってすかさず瑠璃が応戦する。

「ちょっと!よそ見しないで。とっとと走りぬけるよ!」

「あ……うん」

 瑠璃の背中を頼もしく思いながら真見も続けてエレベーターに向かって走る。真見を囲むように三人は陣形を組み、前に進んだ。

「ここ、無限湧きなんじゃないか?数が多すぎるよ!」

「無限湧き?」

 走りながら真見は創に問う。

「ゲームで言うところの無限に敵が湧いてくるところ!レベル上げとか、試し撃ちにはいいけど今は大迷惑だ!」

 そう言いながら創は確実に幽霊を打ち消していく。真見は直感からすぐに推理へと繋げる。

「上にXさんがいるから幽霊がそこに向かうのを阻止してるんだと思う!だから……私がエレベーターに乗れたらすぐに離れて!」

「……分かった」

「了解!」

 真見の言葉に瑠璃と創が返答する。良は何か思案顔をしているだけだった。

 不安になった真見の近くにシールドの職員に扮した幽霊が現れる。

「!」

 バーチャルの銃を構えるが、真見は引き金を引くのを躊躇った。本物の人間そっくりの幽霊に恐怖する。それが空間に映し出された虚像だと分かっているのに。

(どうして体が動かないんだろう)

 発砲音と共に目の前の幽霊が消える。撃ったのは良だった。真見は具合悪そうに礼を述べる。

「あ……ありがとう」

「大丈夫?神野さん、優しいから」

 良の笑顔に真見は自分が動けない理由を悟って、唇を噛み締めた。自分の弱さは「優しさ」にある。それがどうしようもないくらい情けなく思えた。

(優しいままじゃだめだ。優しさを消さないと……)

 真見は人知れず歯を食いしばった。

「着いた!」

 幽霊を撒きながら、エレベーター前に辿り着いた真見達はボタンに手をかざす。

「早く来なさいよ」

 迫りくる幽霊にバーチャルの銃で応戦しながら瑠璃が叫んだ。

(すごい。瑠璃、もう使いこなしてる)

 瑠璃は己の身体能力を。創はゲーム知識を。良は身体能力と仲間への気遣いを……。一人一人が持つ個性がこの非常事態にフル活用されている。

 扉が開くと真見は一番に乗り込んだ。他の乗客を拒むように素早く開閉ボタンに手をかざす。

 不安が大きくなっていくのが分かる。もうあと戻りすることはできないのだと直感した。

(優しさを消して、立ち向かうんだ。一人でもやれる!)

 瑠璃と創が驚いた表情を浮かべながら此方を見ているのが分かった。真見も目の前に迫って来るものを見て声を上げる。

「えっ?相模君⁉」

 細い、エレベーターの隙間をかいくぐるようにして飛び込んできたのは良だった。真見はぶつからないようにエレベーターの端に避ける。勢いよく乗り込んできた振動でエレベーターが揺れた。

 エレベーターに挟まれることなく、乗り込んできた良を見下ろして黙り込んだ。驚くべき身体能力に呆然とする。

(相模君、すごい身のこなしだけど……)

「なんで?」

 真見は思わず呟いていた。屋上へは一人で向かうつもりでいたからだ。

「昨日、話したよね?Xさんの狙いは私だから一人で向かうって……」

「神野さん」

 顔を上げた良が満面の笑みを浮かべて答えた。

「ごめん。なんとなく来ちゃった!」

 真見は浮遊感を感じた。エレベーターが最上階に向かって動き出したようだ。

「……危ない目に遭うかもしれないから、到着したらすぐ下の階に……」

「行かないよ。僕は……神野さんを助けたい。それにこの島も」

 良の真剣な瞳に真見は思わず壁際に縋りつく。いつになく心臓が騒がしい。

(落ち着け。相模君は良心から私を助けに来てくれたんだ。他意はないんだから!)

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