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ぼくらの島  作者: ねむるこ
真を見極める子
57/72

57.解法(1)


「セル社に事件の首謀者がいるの?」

「相模君、声大きいよ……」

 放課後、3人は防波堤に腰かけて話し込んでいた。3人で念入りに周辺を警戒したうえでこの場所にいる。

 潮の香りを感じ、カモメの声を聞きながら真見は雪野との捜査で分かっていることを伝えた。雪野が本島からの潜入捜査官であることは伏せて。

「今日は最初の事件のことを調べようと思って。そうすれば(エックス)さんの正体が分かるはず」

「Xさん?」

 瑠璃が腕組をしたまま首を傾げた。雪野との会話癖が出てしまい、真見は思わず口元を塞いだ。

「えっと……事件の首謀者のこと」

「そんな呼び方してるの?……まあいいや。それより最初の事件って?」

「12年前、島長が亡くなった事件……だよ」

 意外な答えに沈黙が流れる。

「だから昨日、じいちゃんから色々聞いてたんだ……。それで、何を調べるのー?」

「えっと……12年前の現場に行って見ようと思って」

 真見は2人の様子を伺うように提案する。

「オッケー」

「了解!神野探偵」

「探偵って……。やめてよ」

 2人の力強い返答に真見は自分の提案に自信を持つことができた。

「じいちゃんの話では……学校の裏に集会所があって、そこから真っすぐ進んで突き当たった防波堤らしいよ」

 良が有志に連絡を取り、真見達は12年前の現場へ移動する。現在地から防波堤沿いに島の中心部に向かう形になった。

「この辺りかな……?開発済みだから12年前ものは残ってないと思うけどねー」

 良が頭を掻きながら笑う。

(相模君の言う通り。何もないかもしれないけど、何か分かることもあるかもしれない)

 真見はすぐに現場に駆け出す佳史を思い浮かべながら、自身の行動に投影する。佳史を真似ることで直感を推理に近づけようとした。

 真見は恐る恐る防波堤から海を覗き込む。波が穏やかなためか真見の顔が海面に映し出された。

(鏡みたい……)

 暫く眺めていると、海面から何かが顔を出して真見は尻もちをついた。

「うわっ!」

「大丈夫?神野さん!」

「何かあった?」

 駆け寄って来た瑠璃と良が続けて海面を覗く。

「なーんだ。クロじゃん」

 そう言って良が顔を出したクロに手を伸ばした。真見は速まる心臓の鼓動を落ち着かせようと試みる。

「ク……クロ?」

「そ。多分、自動遊泳モードになってるんだと思う。僕が近くにいるのを探知して陸を確認したんだろうね。クロは夜中も自動遊泳で生き物の生態調査もしてるんだ。

あ!背びれにビニール袋がくっついちゃってる。困るなあ、昔みたいに変なものがくっついてたら……」

 良は文句を言いながらクロに引っかかったビニール袋を取ってやる。真見は良の言葉に引っかかり、思わず問い返す。

「……変なもの?」

「そう、セル社の人から聞いたんだ。昔、誰かのいたずらでロープみたいなのが巻き付けられてたことがあるって」

「ロープ……?」

 真見の頭の中に一筋の光が閃く。興奮気味に良に迫った。

「それって……。ごほっごほっ……それっていつの話?」

「落ち着いて、神野さん。……どーしたの急に?」

 むせてしまった真見の背を優しく撫でながら良が首を傾げた。

「何か降りて来たんじゃない。直感が。ねえ?真見」

 瑠璃が真見の両肩を持って良の側から引き離しながら呟いた。真見は小さく笑いながら瑠璃に向かって手を合わせた。

「あ……うん。ごめん、瑠璃」

「シー・リサーチャーの過去の記録を見れば分かるかも」

 良がセル・ディビジョンから文書をホログラム映像で浮かび上がらせる。良が真剣に映像を睨んだ。

「あ!あった。2048年と2050年だって」

「……その年って!」

 真見は声を上げるとポケットに入れてきた小さなノートを取り出す。瑠璃は真見が確認するよりも前に口を開いた。

「転落事故があった年」

 その言葉に2人は固まる。真見は慌てて良の映像と、事故があった日数を見比べる。

「2件とも転落事故のあった翌日にロープが確認されてる……!」

 真見の呼吸が浅くなる。考えたくない、おぞましい光景が頭の中で再生される。気持ち悪さに耐えながら良の方に顔を向けた。

「……12年前の記録は?」

「そんな前の記録、あるわけないよ。だって、シー・リサーチャーの本格的な運転が始まったのは5年前だから。僕が広報部として関わるようになったのも1年前だし……」

「そうだよね……」

 真見が黙り込む。良はそんな真見の様子を見たからか。何かを考え込むような素振りをみせ、やがて声を上げた。

「あーっ!そういえば。シー・リサーチャーのプロトタイプはあった気がする!」

「……え?」

「エマさんから聞いたんだけど、シー・リサーチャーは田切さんと僕の父が子供の頃に発明されたものが始まりらしいよ。って……神野さん?」

「瑠璃?」

 二人が目を見開いて真見の事を覗き込んでいた。真見は二人の視線を浴びて気が付いた。

(私……泣いてる)

 あまりにも残酷な真実を知ってしまったからだ。様々な感情が渦巻き、涙を流してしまった。

「ごめん……。ちょっと悲しくなっちゃって……」

「悲しい?」

 瑠璃の問いに真見が首を傾げた。真見が慌てて涙を袖口で拭う。

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