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ぼくらの島  作者: ねむるこ
ゲームと見えない悪魔
41/72

41.バーチャルの幽霊(4)

『通報ですか?』

「ええ。昨夜学校の中で人影を見たって。念のために巡回に来ました」

 案内兼警備ロボットの前で帯刀(たてわき)が胡散臭い笑顔を向ける。画面越しにセル社の本部、警備担当の人間と繋がっているらしい。

 他のロボットは自動で建物の生体反応を確認し、各階を巡回している。

『昨日は何もありませんでしたよ。どのカメラにも何も映っていませんでしたから』

「だから。私が来たんです」

『しかし。セル社の警備は万全で……』

 帯刀がごねているところに佳史(けいし)達が駆け寄ってくる。

「良かった!お巡りさんもいる!」

 佳史は警備ロボットの前で声を張り上げた。

「すみません、忘れ物を取りに来たんですが……校内に入らせてもらってもいいですか?」

『忘れ物?明日じゃだめなんでしょうか』

「駄目なんです。何て言ってもその忘れ物……。最新のテクノロジーを詰め込んだ小型生態調査ロボット……『スカラベ』なんですから!」

『え?』

 セル社の警備員が驚いているのを良いことに佳史が畳みかける。

「学校に夜、人影を見たって噂があって怖いな……と思ってたんですけどお巡りさんもいるなら安心だな!一緒に入らせて頂きます」

『ちょっと君。勝手に困るよ。大人の事情ってもんが……』

「あ。それと僕達セル社の広報部に所属してるんですよ。名前を調べて貰えば分かるはずですよ」

『本当だ……』

「セル社の研究と技術の発展のために!ここはどうか!」

 佳史のこの言葉が止めとなって一同は学校に入ることができた。

「お前は本当に恐ろしい奴だよ……」

「褒めても何もでませんよ。帯刀駐在員」

「……褒めてねえから!」

 帯刀が佳史の頭を軽く叩いた。

「それで?結花(ゆいか)が話してた、幽霊が出た場所ってどこ?」

 瑠璃が屈伸をしながら正面玄関の方を見た。

「確か幽霊を見かけたのって……正面玄関の反対側、サッカーゴールの前らへんって言ってたよね」

 真見(まみ)が恐る恐る声を上げる。

「オッケー。じゃあ私、外から見てみる」

「俺も行こう」

 帯刀がペンライトを手に校庭側へ向かおうとする。

 真見は自分のセル・ディビジョンを操作して先ほど校舎に放ったサンの位置を確認する。学校に忍び込むためにわざとサンを放し、学校から出る直前に呼び戻すという作戦だった。

「僕は校舎内から確認しよう。他に調べたいことがあるしね。だから神野さんは僕と来て欲しい」

「え?」

 声が裏返ってしまい、真見は慌てて口元を手で隠す。

「それとヨシも」

 指名された良も真剣に頷いた。

「じゃあそういうことで。何かあったら連絡取り合いましょう」

 瑠璃が片手を上げて帯刀と姿を消す。

 真見は自分の心臓音を耳元で聞きながら前へ歩みを進めた。


(いつもの学校じゃないみたい)

 真見達はセル・ディビジョンの明かりを頼りに先に進む。闇に包まれた学校は普段の様子と大きく異なり不気味だ。

(……夜の香りがする)

 湿った木の香り、埃っぽい校舎に鼻をひくつかせる。静まり返った廊下は今にも幽霊が顔をだしそうだと真見は思った。遠くに何かが動くのが見えて真見は「ひっ」と小さな悲鳴を上げる。

 佳史が素早く物体に光を当てると、それがすぐに警備ロボットだと分かった。先ほど玄関にいた案内ロボットと同じ形状をしている。

「警備ロボットだよ。今僕らは許可が下りてるから部外者扱いされてないけど、もし侵入者を探知したら飛び掛かってくるんだ」

「そ……そうなんですね」

 真見は自分の手を自分で握る。暗闇という視覚情報が乏しいせいで他の感覚が過剰に反応しているようだ。今も皮膚がひりひりとする。どんなに小さな物音も、真見の鼓膜には大きな音となって響いた。

「大丈夫?神野(かんの)さん。怖かったら正面玄関で待ってても……」

 良の言葉を佳史が遮った。

「駄目だ」

 佳史は真見の手を引くとそのまま暗闇を歩き出す。真見は佳史の冷たい手に身震いした。いつもと違う様子に、場の空気が凍りつく。

「謎を解くには……神野さんが必要なんだよ」

 そのまま真見の手を引いて廊下をズカズカと進んでいく。

「あ!万野(ばんの)先輩ちょっと待ってよ!

 真見は佳史の荒っぽい表情におどろきながらも、心の中では頼られていると思って嬉しかった。少しだけ夜の学校を歩く恐怖が薄れる。

「ここが結花の言ってた幽霊を目撃した場所に一番近い教室だ」

 真見が佳史に手を引かれてやって来たのは驚くべき場所だった。

命島(めいじま)……資料室!」

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