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ぼくらの島  作者: ねむるこ
ゲームと見えない悪魔
40/72

40.バーチャルの幽霊(3)

 聞こえてきたのは機械でつくられた穏やかな音声だった。真見はゆっくり立ち上がるとフクロウに話しかける。

「えっと……あの。命島の新聞、情報誌のようなものはありますか?」

 フクロウは嘴を開けて答えた。

『命島に関する資料は全て、命島資料室に保管されています』

 真見は呆気にとられながらも転入初日に足を踏み入れた教室を思い出す。

「あ……ありがとうございます」

 ロボットに対して丁寧にお辞儀をすると、真見は廊下を飛び出した。

そうか。命島のデータはあそこに集まってたんだ。新聞があれば当時の事故について何か載っているかもしれない)

 真見は足早に資料室へ向かった。後ろから小さな足跡が聞こえ、思わず振り返る。

(つくる)君!何でいるの?」

 真見に見つかった創は口元に笑みを浮かべた。

「面白そうだから!何調べんの?」

「……私、島に来たばかりだからもう少し島のこと調べようと思って」

 事件のことを濁して真見が答える。

「ふーん」

 創は楽しそうに返事をする。真見から離れる気はなさそうだ。

 だんだんと陰った廊下に足を踏み入れる。日が出ていた廊下とは違い、空気がひんやりとしていた。

 真見は教室の前で立ち竦む。

「立ち入り……禁止?」

 教室の扉には『立ち入り禁止』という文字が浮かんでいた。

「どうして?」

「いつの間に閉まってたんだな……」

 後から付いて来た創も不思議そうに首を傾げている。

 正面玄関の方から人が歩いてくるのが見えて、真見は視線を移した。そこには小走りで近寄ってくる葛西の姿があった。

「どうかしたのー?資料室は昨日からメンテナンス中なのよ」

「そうだったんですね」

 真見は肩を落とした。事故の情報を得て、佳史に報告しようと思っていたのに無理そうだ。

「何かあった?先生ができることがあるなら手伝うよ?」

 葛西がにこやかな笑顔を見て真見は固まった。一瞬、今まで起こった命島の事故について聞こうと思ったが口を噤む。直感で話すべきではないと判断した。

(そんなことしたら、広報部の活動がバレちゃうもんね)

「いえ。大丈夫です。自分で調べますから」

「そう。また何かあったら言ってね」

 葛西が笑みを浮かべると同時にチャイム音が鳴り響いた。

「昼休み終わっちゃった……」

「つまんねーの」

 何も起こらなかったので創は不満げに資料室を後にする。真見も後ろ髪を引かれるようにしてその場を立ち去った。


 夜八時過ぎ。玄関に立った真見は薄暗い部屋を後にする。

 夕食は既に済ませていた。真見が暮らす開発エリアは比較的明りが多い方だが未開発エリアは街灯が少ない。

 社宅を見上げ、雪野の家の明かりを確認する。

(部屋にいないみたい)

 真文は相変わらず帰っていない。二人がどこかで密会してるのかと思うと落ち着かない。真見は深呼吸する。今は幽霊事件の法に集中しなければならない。

(お父さんから何にも連絡ないし。だったら私も連絡しなくていいよね)

 浮気現場を目撃した時は悲しみと衝撃で胸がいっぱいだった。瑠璃に話したことで感情が落ち着き、怒る余裕も出てきた。

(帰ってきたら一度話を聞いてみよう。どうして私達に何も言わずにいるのかって……)

「行こう。サン」

 小さな瞳を光らせてサンがポケットから顔を出す。社宅を背に、真見は学校へ走った。


「本当に事件に関連することなんだろうな?」

「それはもちろん」

 命島学校の校舎裏。フェンス越しに広報部の4人の中に帯刀(たてわき)が混ざっていた。腕組をして恨めしそうに佳史を見ている。

「学校に怪しい人影がいるって通報があったとか言えばいいんですよ。僕らは忘れ物を取りに来ましたとか何とかいうからさ」

「それでシールドの奴らが納得すると思うか?島の警備システムは全部あいつらの手の内だ」

 帯刀がじっとりとした目つきを向ける。

「それは……帯刀駐在員の腕の見せ所かな?」

 佳史の言葉にため息を吐く。

「よく言うぜ。まあ、少しでも事件のヒントがあるなら……。本当は上から色々言われてるんだけどな……」

「すみません……ご迷惑おかけして」

 真見の言葉に帯刀が笑顔を見せる。

「お嬢ちゃんが謝ることじゃねえ。謝るのは佳史。お前だろ」

「ごめんなさいっ」

 佳史が両手を合わせて軽い謝罪を述べる。少しも悪いと思っていなさそうな態度に帯刀の眉間に皺が浮かび上がった。

「心が籠ってねえ」

「ごちゃごちゃ言ってないでさ。とっとと済ませない?」

 瑠璃のきっぱりとした声がふたりの子供ぽっいやり取りを遮る。いつも混乱した場面を収めるのは瑠璃だった。真見は再び尊敬の眼差しを向ける。

「はい」

 佳史と帯刀が声を揃えて返事をした。その様子を見ていた良がその場で足踏みしながら正門を指さす。

「早く行こーよ!夜の学校なんて早々入れないんだからさ!」

「お前はいつも楽しそうでいいな……」

 帯刀が呟く。真見は場の雰囲気を和ませる良の姿に目を細めた。

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