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ぼくらの島  作者: ねむるこ
少女の閃き
31/72

31.新作ゲームリリース

「もう、護衛……しなくても大丈夫だと思うんですが……」

 社宅の前まで付いてきてくれた3人に真見が申し訳なさそうに断りを入れた。真見を突き落としたであろう犯人は死んでしまったのだ。護衛を続行する理由がない。

「どうせぼくらも通る道なんだから問題ないよ。それに皆で帰った方が楽しいでしょ」

(う……。フォローが上手い)

 佳史が爽やかな笑顔で真見を言いくるめる。

「ありがとう。それじゃあまた……」

 真見が3人に手を振りかけた時。左腕が振動する。それは3人も同じだった。セル・ディビジョンを見下ろす。

「新作ゲームリリース……?」

 良が首を傾げた。

「今夜セル社のCEO、田切理が会見を行うだってさ」

「リアルとバーチャルの融合した次世代型ゲーム……」

 信じられない言葉の羅列に真見は息を呑んだ。そして毎日ぐったりとした様子で帰ってくる父を思い浮かべる。

(このゲームの開発があったからあんなに疲れてたんだ)

「じゃあね真見」

「また明日―」

「……うん。バイバイ」

 真見は3人に向かって小さく手を振った。

 真見は帰宅すると一人で冷凍食品を温めて食事を取る。風呂を済ませ、その後でタブレットの動画サイトを立ち上げた。真文の頑張りを見届けるためでもある。机の上からパタパタとサンが飛びついて来た。

 肩の上で顔を動かし、一緒にタブレット画面を覗き込む。真見はその様子をみて小さく笑った。


『皆さん、本日はお時間頂きありがとうございます。この動画配信は全国で配信されています』


 画面に登場したのは授業で見たあの若者……田切理(たぎりおさむ)だった。動画の再生回数はみるみる数字を増やしていく。それほどセル社のゲームは注目を浴びていた。


『現在、命島では数々の実証実験が行われていますが……そのうちの1つがこちら!』


 田切が手を伸ばした先に地球上に存在しない、不思議な動物が姿を現す。骨格は狼なのだが鹿のような角が生えている。田切が頭を撫でると気持ちよさそうに目を細めた。


『命島全体をフィールドにしたゲーム。『Myマイ ISLANDアイランド』をリリースします!』


 その言葉の後に流れたプロモーション映像を見て真見は息を呑んだ。


(すごい!本当に存在しているものみたい……)


『ゲームの舞台はなんと、私達の生きる現実!目の前に広がる景色。戦ったり、未知の生き物に触れたり、アイテム探しの冒険にでることができます』


 女性のアナウンスと共に実際のプレイ画面が表示される。


『コントローラーは貴方の身体。腕に取り付けられたセル・ディビジョンによって現実に投影されたバーチャル世界に干渉することができます。現実世界での動きがバーチャル世界にも対応します』


 真見は自身の左腕に取り付けられたセル。セル・ディビジョンを見下ろす。プロモーション映像ではバーチャル世界の餌を空想上の生き物手渡す姿が映し出された。

(そっか。セル・ディビジョンはMy ISLANDのために開発されたんだ)


『バトルモードではクリーチャーを仲間たちと協力して倒すことができます』


 再び映像が切り替わり見るも恐ろしい巨大な生き物が奇声を上げる。それを三人のプレイヤーが持っている多種多様な武器で倒す映像が映し出された。


『ゲームで手に入れた宝やクリーチャーを倒した報酬は実際に島で使用できるサービスと交換できます。後々換金できるようにしたいと思っています』


 田切が登場すると笑顔を浮かべながら説明を続ける。


『このゲームの注目すべき技術は、超リアル体験。感触や衝撃がまるで実体験のように感じられるところです。まだ試作段階ではありますが世界初の技術でしょう』


「超リアル体験……。すごい!」

 真見はセル・ディビジョンに触れる。今まで身に付けていたものがそんな凄いものだとは思わなかった。


『今までにないゲーム体験、いや技術を体験することになるでしょう。島民以外の皆さまには少しずつ情報を明らかにしていきたいと思います。『My ISLAND』は島に訪れた観光客向けのアミューズメントとしても企画中です。島民の皆さまに置かれましては全世界で初めての体験者になってもらいます。

正式な稼働日は明日の正午頃……それでは皆さん。未来に行ってらっしゃい』


 田切の一礼と共に動画の配信が終わった。真見はあくびをしながら伸びをする。

(お父さん、まだみたいだけど。眠っちゃおう)

 真見は肩からサンを下ろすとベッドに潜り込んだ。

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