18.新時代(3)
「少子高齢社会の勢いは止まらず、都市部では深刻な労働不足が問題となっています。それに伴う労働環境の悪化が目立つようになってきました。不安定な収入、重い税負担が重なり未来に希望を見いだせなくなった人達の自殺者数が社会問題となっています。特に最近は若者が多いです」
葛西が壁に触れると人口推移のグラフや自殺者数推移のグラフが表示される。日常的にニュース番組で報道されていることだ。
「外国人労働者の受け入れも間に合わず、政府はかねてより計画していた『スーパーアイランド計画』を本格的に試行することになりました。かつてスマートシティ、スーパーシティ計画というものがありましたが、もはやその規模の開発では事足りず。政府は列島全体を開発する施策を打ち出したのです」
(命島が開発に選ばれたから「アイランド」っていう名称になったのかと思ったら日本列島全体の意味でアイランドだったんだ……)
真見は一人で納得する。葛西が再び正面の壁に手を触れると画面が切り替わった。近未来都市のイラストと共にスマートシティとスーパーシティ計画の解説が浮かび上がる。
「テクノロジーの力で労働力不足や社会問題の解決を試みたのです。もう思考する時間はなく、半ば強制的に実行に移さざるを得なくなりました。それほどまでに私達の現状は……厳しいのです。神野さんが『不安時代』と表現した通り」
葛西が真見に視線を移す。
「スーパーアイランド計画の注目すべき点は。セル社という企業と政府が連携して行っている計画であること。セル社における日本法人のトップがこの島の出身であるということです」
映像に現れたのは一人の若い男性。真見は息を呑んだ。生真面目そうな風貌とシンプルな服装、賢そうな瞳は成り上がりの若い経営者とは程遠い印象を受けた。
(この人がセル社の?しかも命島の出身者……)
「田切理さん。彼が先陣を切って日本の未来を作っています。島の復興だけでなく日本列島の復興も担うという期待のエース。政府含め、各国のメディアにも注目されている人物です。彼の元に日本の優秀な人材が集い、新技術を提供しています」
(凄い。こんな人、日本にいるんだ……。自分が生まれ育った島を大切に思っているだけじゃない。日本の未来まで見据えてる……)
映像の中で田切が雄弁に語る。
『命島で行われた実証実験の全ては日本を蘇らせるでしょう。いや、日本だけじゃない。世界にも十分に通用する。僕は命島が日本を、世界を変えると予測しています』
強い光を湛えた田切の瞳が映像越しに真見を射抜いた。
(私、凄い所にいるんだ)
「この島の子供達は本当にラッキーだと私は思います。一足先の未来を体験することでより良い未来を創り上げることができる……。私は敢えて今の時代を『新時代』と表現します」
(新時代……)
真見の瞳に光が宿る。




