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ぼくらの島  作者: ねむるこ
少女の閃き
13/72

13.自己紹介とテクノロジー(1)

(浮気調査のためとはいえ、この島に来て良かったのかも。船から落ちて悪いスタートだなと思ってたけど)

 真見は葛西に向かって大きく頷いた。

「はい。緊張しますけど……頑張ります!」

「うん。良い返事ね!大丈夫、どこから来たかと好きな食べ物の話でもしたらいいよ」

「そうですね」

 葛西との会話で緊張がほぐれ、心なしか廊下を歩く足が軽い。

「レクリエーションルーム」と表示され部屋のドアが自動で開く。子供達の声が耳に入り真見の心臓が高鳴る。

「はいはい、皆さん静かに!」

 葛西の背中に隠れるように真見も入室する。13名と雖も生徒の視線が痛い。小学部の子供達は興味津々な様子で真見を眺めている。子供達が座る椅子の後ろには4名ほどの教師が控えていた。

(どうしよう……。緊張してきた)

 真見が視線を彷徨わせていると、此方に向かって手をひらひらと振る人物に気が付いた。

(あ……。相模君)

 視線の先には呑気に手を振る相模良の姿があった。島の子供なのだからここにいて当然なのだが、真見は驚いた表情を浮かべる。弱々しく手を振りかえした。

「ヨシの知り合い?」

「えー?かのじょ?」

「誰、誰?」

 小学部の生徒達が真見と良を交互に見て騒ぎ始めた。真見はその様子を見て胃が痛くなる。

(そういう勘違いはやめてー!面倒な人間関係に発展したりするんだから……)

 真見が恐る恐る周りの生徒の様子を伺うと、三つの視線を察知する。

 ひとつは良の隣に座る、ポニーテールの少女。釣り目のせいか怒っているように見える。もうひとつは少し離れた場所に座る男子生徒だ。女子生徒とは違い、品定めをするような視線だった。

 そしてもうひとつは小学部の男子生徒から。その瞳は前者のふたつのものとは違い、眩しく輝いていた。長い前髪から覗く目に真見は震えあがる。手を下ろし、ゆっくりと良から視線を外した。

(早速面倒なことになっちゃったよ……)

「今日はセル社から支給された『セル・ディビジョン』の説明と、転入生の紹介をしたいと思います。それじゃあ神野さん、宜しくね」

 真見は葛西に促されて口を開いた。

「はい……。あの、えっと……東京から来ました。神野真見です。よろしくお願いしますっ」

 早口の自己紹介の後で葛西がフォローを入れてくれる。

「神野さんはお父様の仕事の都合で命島に引っ越してきました。中学1年生です。中等部の二人は仲良くしてね。何か好きなこととか、得意なこと。趣味はある?」

「好きなことは……読書です。ファンタジー小説が……好きです」

 真見がぼそぼそと答える。

(当たり障りのない趣味と言ったら読書……。五感に鋭いです!小さな音とか小さな変化に気が付きますなんて言ったら変な人だもんね……)

「俺も本を読むの好きー」

「私も」

 小学部の子供達が場の雰囲気を盛り上げてくれ、真見はほっと胸を撫で下ろす。

「先生も本が大好き。後で興味がある人は神野さんと本の話をしてね。それじゃあ、これからディバイスの説明をするから……神野さんは空いてる席に座ってもらってもいいかな?」

「……はい」

 真見は席を見つけて息を呑んだ。

(あそこって……。冷たい視線を送ってくる女の子の隣だよね?)

 見ると少女はまだ真見のことをじっとりした目つきで睨んでいる。

(うわあ……早速、敵視されてるよ……)

 真見は小動物のように体を縮めると、椅子に座った。

「ねえ。あんたって、(りょう)の何?」

 感情の読めない、淡々とした物言いに真見は肩を揺らした。少女は良と同様、薄ら日に焼けている。真っすぐな茶色がかった髪色を頭のてっぺんで一つにまとめていた。

 服装はこの学校指定の体操服らしく、左胸に『天笠(あまがさ)』と書かれている。引き締まった体は何かスポーツを極めていそうな雰囲気を醸し出していた。

(気の強そうな子だな……。気の弱い私とは大違い)

「えと……。知り合いというか……その、あの……」

「はっきりして」

 凛とした少女の言葉に真見は思わず姿勢を正す。

「……命の恩人です」

「……」

 少女は暫くの間真見を観察していたがすぐに視線を正面に向けてしまう。終始表情が無いので真見は困惑した。

(え?どういうこと?私、転入早々嫌われたの?)

 真見が少女の言動に動揺していると葛西が手を叩いた。

「それでは皆さん、『セル・ディビジョン』は持ってきましたか?今から活用方法を説明しますよ。島の生活に役立つ物だからしっかりと聞いてくださいね」

(とりあえず今はお父さんから貰ったウェアラブル端末を理解しないと!)

 少女に続いて真見も正面を向く。

「皆さん、今朝支給した『セル・ディビジョン』ちゃんと持ってきてますか?」

「持ってきたー!」

 小学部の子供達が元気な声を上げる。

「『セル・ディビジョン』とはただのウェアラブル端末ではありませんよ。取り付けるだけで「未知の世界」を見ることができるのです」

(未知の世界?)

 真見は葛西の言葉に瞬きを繰り返した。

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