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ぼくらの島  作者: ねむるこ
少女の閃き
12/72

12.スーパーアイランド命島(3)

「ここまでは大丈夫かな?それじゃあ次には島での暮らしについて説明しますね」

 葛西が軽く島の映像に触れると島は消えてしまう。葛西が正面の壁に触れると映像が映し出された。

「島ではあらゆるサービスを難解な手続きなしで済ませることができます。お店でもキャッシュレスが普通。顔、虹彩認証で済ませることができます。それは島民登録の際あらゆる生体認証を登録しているからです」

 葛西の解説と同時に簡単なイラストが現れる。身体のあちこちから矢印が伸び、あらゆる身体の部位から情報を得ていることが分かった。

「行政手続きは全てセル社本部で済みます。最新の医療サービス、商業施設もセル社のビル周辺に集まっています。ドローン宅配サービスも展開しているので家にいながら買い物をすることもできます。勿論、元から島にあったお店や病院も利用することができます。全て支払いシステムは整っていますからね」

 動画では蜂の姿をしたドローンが手に買い物袋を持って住民を訪問する様子が映し出される。

「……かわいい」

 真見がほっこりしているのを見て葛西は満足げな表情を浮かべる。

「かわいいわよね。私なんて毎度夕ご飯を運んでもらってるの」

「へえ、そうなんですね」

(今度うちも頼んでみよう)

 真見は島での新しい暮らしに胸躍らせた。もっと見たことのないもの見てみたいという好奇心が湧いてくる。

 

「他に何か知りたいことはある?なんでもいいわよ」

「それじゃあ……ひとつ質問させてください。ここって島、ですよね。食べ物の供給とかどうなっているのかなと思って」

「流石は神野さん。着眼点がいいわね」

 緊張した面持ちで真見は質問した。

(本当は台風になって食べ物無くなっちゃったら怖いと思ったんだよね……)

「安心して。この島は本島に近いし、神奈川県寄りだから船の本数も多いの。

 船も荷物だけの場合は無人なのよ。夜間も運航してるわ。近いうちに食料も物資も全て島で賄える技術が整う予定なの。本島よりも遥かに快適にすごせるかもね」

(すごい。私が考えているよりもずっとこの島は……進んでるんだ)

 目まぐるしい速さで島の開発が進んでいるのを聞いて真見は頭の中がチカチカした。想像以上に未来は真見に近づいているらしい。油断すると未来に振り払われて、置いてきぼりにされそうで不安になる。それと同じぐらいに見たことのないものを目の当たりにする楽しみもあった。

(これが未来に進んでいくってことなのかな?)

「それじゃあ、島の説明はこれぐらいにして。これの説明に入りましょうかね」

 葛西は自身の左腕に取り付けられた『セル・ディビジョン』を指さした。

「もう他の生徒達には教室に集まってもらってるの。そこで神野さんの紹介もするから」

「……はい」

 真見は思わず顔を俯かせた。

(どうしよう。何も考えてこなかった……自己紹介)

 人の視線を感じながら発言することが憂鬱だった。友達と一対一で話す分には何の問題もないのだが。ちょっとした恐怖心を感じるのだ。

 冷たい視線を浴びるほど苦痛なことはない。そのせいで声が上ずったり、言葉が止まったりしてしまう。嫌いな自分の事を紹介するのも嫌だった。

(本当に最悪な性格。もっとちゃんとしなくちゃ)

 いつも心の中で自分自身に活を入れるのだが上手くいった試しがない。結局自分が弱いせいなのだと自己嫌悪に陥ってしまう。

「大丈夫。私がしっかりフォローするから。上手くやろうとしなくていいのよ。それに少人数だから安心して」

 葛西が真見の背をぽんっと叩く。強張っていた真見の表情が緩んでいった。

(そっか……。先生は私の性質を理解してるんだ)

 『個人診断』が生かされていることを思い知る。真見は大きく安堵した。

 今まで大人、とりわけ教師にどれだけ根性論を説かれたことか。

五感が敏感であることや真見が恐怖を感じることを話しても、「それは気の持ちようだ」だとか、「甘えだ。皆やってるんだからやりなさい」と怒られるのだ。

 真見はその度に「自分の苦しみは誰にもわかってもらえない」と失望してきた。

(ここでは私の性質のことを理解してくれる人がいる……!)

 真見の心に光が差したような気がした。

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