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2度目の丘陵エリア



 久々の丘陵エリアだが、さてどちらに進もうかと朔也(さくや)は思案に暮れる。ここはフィールド型となっているので、進もうと思えばどの方向にも進行が可能なのだ。

 それでも一応、舗装はされていないが街道っぽいルートは存在するようだ。少し離れた場所にそれを確認して、チームでそちらへと近付いて行く。


 周囲は雑草が生い茂って、酷い所になると朔也の腰くらいの高さの草木が生い茂っている。そんな場所を進むのも手間なので、土がむき出しの街道を進むのが楽には違いない。

 そんなわけで、コックさんと箱入り娘に命じての先頭はいつものこの2体である。青トンボは、勝手に相棒と決めたコックさんの上空をホバリング中。


 人魂のソウルもこの巨体のパペット兵の影に隠れるように進行を共にしている。どうやら日差しの強いこのエリア、死霊モンスターの彼は苦手なようだ。

 これは失敗したかなと、歩きながらMP回復ポーションを口にする朔也はちょっと反省。ユニットの特性をしっかり把握しないと、彼らも活躍出来ないしこっちも困る。


 他の候補としては、赤髪ゴブかオーク槍兵だろうか。リザードマン兵も入手したが、彼らはやはり水際などの地形で使うべきなのかも。

 汎用(はんよう)性のあるユニットもあるが、局地戦に使える奴らも増えて来た。その結果、チーム編成に頭を悩ます機会も多くなってしまった。


 悪い事ではないのだろうが、正直解けないパズルを課題に出されているみたいで(うと)ましい。そんな事を考えていると、片方のルートからゴブリンの集団がやって来た。

 4匹と数は多いが、奴らは頭の回転は総じてあまり良くない。興奮して勢い良く駆け寄って来ようとしているが、この丘陵エリアは見晴らしが凄く良い。


 100メートル以上全力疾走したら、戦い所の騒ぎでは無いだろうに。朔也はそう思いながら、『射撃』スキルを使用して『連射式ボウガン』で敵を射る。

 それに釣られて、遠距離攻撃持ちの容赦のない追撃が。コックさんのナイフ投擲(魔法)も、先頭のゴブに命中して良い具合にダメージを与えている。


 青トンボのエアカッターも、威力は充分でそれを受けた左側のゴブはその場にダウン。ソウルは味方の優勢を確認して、今回は手出しを控えている模様。

 どうやら、本格的に日中の行動は苦手のようだ。MPは薬で回復したので、ここは他のメンバーと交替させた方が良い気がして来た朔也である。


「おっと、ボウガンでゴブを1匹倒せちゃった……あんまりいらないけど、カード化も成功かぁ。幸先は良いかな、まずは1枚目っと」


 残った生き残りも、朔也が手を出すまでもなく獅子娘さんが討伐してしまった。エンは腕は揃ったけど、膝の具合はまだ良くないようで機動力は相変わらずである。

 つまりは召喚ユニット次第では、朔也の止めを刺す機会はある程度調整は出来そう。とは言え、ノーム爺さんの情報によると、召喚ユニットは長く行動を共にした方が忠誠度は上がりやすいとの事。


 つまりは気に入ったユニットは、使い続けるのがチーム編成のコツなのは間違いない。その辺も考えながらとなると、本当にパズル要素が頭を混乱させる。

 未来のベストなチーム編成を見据えつつ、現状の戦闘を上手くこなして行かないと駄目なわけだ。そのややこしさに頭を抱えながら、朔也は取り敢えず次の層のゲートを目指す。


 取り敢えず、ゴブが走って来た方向へとチームを移動させる事10分余り。その間に、狼の群れと巨大テントウムシ1匹との戦闘を挟みつつ。

 カード化は果たせなかったけど、まずまず戦闘は順調に進んで行く。ちなみに人魂ソウルは送還して、代わりに現在は赤髪ゴブをチームに招いている。


 コイツは器用貧乏でヤンチャではあるが、何となく憎めなくて朔也のお気に入りである。醜悪な顔も、見慣れると額から突き出た小角など可愛く感じられる。

 コストも5MPと安上がりだし、これが10も掛かっていたら躊躇(ためら)うかもだけど。コイツが遠隔攻撃に徹してくれたら、チームの安定度も上がる気がする。


 とは言え残念ながら、割と勝手し放題の忠誠度の低い代表の赤髪ゴブではある。そんな連中を従えて、次に遭遇したのは3匹のオーク兵の集団だった。

 コイツ等は小高い丘の茂みに潜んでいて、こちらを不意打ちしようと企んでいた。それをカー君が見事に発見してくれて、お姫がそこに魔玉でのちょっかい掛け。


 何とも流れるようなコンビネーションに、オークは怒り心頭で茂みを飛び出して来る。そこに遠隔部隊の追撃と、近付いた獅子娘さんのブレスが炸裂。

 朔也とエンも前に出て、何とか追撃は間に合ったようで良かった。お陰で朔也もキルマーク&この層で2度目のカード化に成功する事が出来た。


 オークの雑魚兵も、特に欲しくは無いけど取り敢えずは収穫である。これで回収した魔石(微小)も10個を超えたし、そろそろ次の層へのゲートも発見に至りたい所。

 そう思って休憩ついでに近くの小丘へと登ってみたら、近くに巨大な岩が転がっているエリアを発見。慌てて身を低くしたのは、そこにモンスターの群れもいたから。


 集落って程では無いけど、ゴブリンとオークの混成軍が合計で10匹くらいいる。粗末なテントや荷馬車、それから簡単な柵を(しつら)えて気分は小砦って感じである。

 とは言え、連中の武器や装備品は相変わらず粗末で、さすがダンジョン1層目の敵って感じ。油断する訳ではないが、ここはゴリ押しで何とかなりそう。


 作戦としては丘の上に陣取って、コックさんと箱入り娘で盾役を(にな)って貰う。坂を上って来る向こうが不利なのは間違いなく、やって来るまでは遠隔攻撃をお見舞いしてやれば良い。

 この作戦に、お姫も良いねと賛成の素振り……それから、カー君を伴って戦闘開始の合図の魔玉爆撃を行いに飛んで行ってしまった。


 こちらも戦闘準備、盾役の2体を並べてこちらも砦並みには守りが堅くなった気はする。今まであまり活躍出来なかったパペット達だが、やはりいると頼りになるのは確かである。

 コックさんの体格もそうだが、箱入り娘の身体が全部隠れる盾も同じく堅固に見える。朔也も一応、強敵が相手の場合は盾装備を行う予定。


 お姫に挑発された連中は、怒り心頭でこちらを発見して突進して来た。目論見(もくろみ)通りの敵の行動に、遠隔部隊は張り切って攻撃を仕掛け始める。

 丘を駆け上る立場の連中は、その怒り程には速度は出ない。当然の如くに良い(まと)になって、結局はこちらの盾役の前に辿り着けたのは半分以下の3体だった。


 朔也のボウガンでもオークを1匹倒せたし、青トンボのエアカッターも容赦のないレベル。赤髪ゴブもそこそこ活躍してくれて、最後にはコックさんも攻撃に参加する。

 そんな訳で、ゴブリンとオークの群れは全て倒す事が出来た。相手の数に対して、意外と楽勝だったのはやはり作戦が良かったからだろう。


 魔石も大量に確保出来たし、ついでにゴブリンの追加のカード化にも成功した。後は敵の拠点にしていた場所を確認して、何か値打ちの物が無いか調べるだけ。

 それからゲートの場所も探したいが、何だかこの巨岩エリア付近に隠れていそうな気配。この“丘陵エリア”はまだ2度目の探索で、データが少ないので手間取るのは致し方が無い。


 そんな事を考えつつ、チームで慎重に丘を下って半壊した荷馬車やテント内を漁る。勝者の権利とは言え、何となく後ろめたい気持ちになるのは否めない。

 それでも気持ちを切り替えて、ここはダンジョン内だと思い直す朔也である。そして半壊した荷馬車を確認すると、襲撃で馬車ごと盗まれたと思われる品々が。


 その中には、大人が両手で抱える程の木箱が幾つか乱雑に転がっていた。中身は素材類が圧倒的に多くて、かびた乾燥肉の臭いが充満している。

 それに混じって、布系素材や武器の入った箱は何とかお金になりそう。武器は投げ槍が10本余りに、木製の弓と矢弾セットが幾つか。


 探索に使えるアイテムとしては、鑑定の書が4枚に魔石(小)が5個。それからポーション瓶とMP回復ポーション、そして解毒ポーションが2本ずつ。

 ついでに強化の巻物(劣化・攻撃)と、帰還の巻物を1冊ずつゲット。


「意外と色々回収出来たね、おっと……こっちのテントからは、銀貨も出て来たよ、お姫さん。充分儲かったから、そろそろ次の層に行きたいんだよね。

 ゲートがどっかその辺に無いかな、お姫さん?」


 その言葉に、チビ妖精はカー君を伴って周囲の偵察に出掛けてくれた。それから数分も経たずに、戻って来てアッチにあったよと報告してくれた。

 本当に優秀な相棒である、そして朔也の近場にある筈との予測もバッチリ。獣人の拠点漁りを続けていた朔也は、それを取り止めてそちらへと移動する。


 そして巨石の間に、探し求めていたゲートを発見。これでようやく2層へと向かえる、1層は実に30分以上も彷徨(さまよ)っていたのだ。

 本当に、フィールド型のエリアには苦労させられる。




 小休憩を挟んで、いよいよ第2層の探索を始める一行である。そしてやっぱり、その2層もフィールド型のエリアで周囲は丘陵地帯が広がっていた。

 小高い丘が連なるこのエリアは、一応は街道が丘を縫って続いているので進む方向には困らない。とは言え、それを信じて進んでも良いのかはまた別の話。


 探すべき次の層のゲートが、その方向に必ずあるとは限らないのだ。この丘陵エリアは、ゲートの場所探しに慣れていなくて厄介である。

 まだ密林エリアの方が、樹々が多くて進みにくいけど慣れている分ゲートを見付けやすい。この層はさっさと通り抜けたいなと思いつつ、朔也はチームに出発を伝える。


「さあっ、こっちに向かって進もうか、みんな」


 それに従って、進み始める召喚ユニット達……カー君は一足先に、空の偵察に出掛けてくれている。そんないつもの配列に、安心感が漂って来るのは否めない。

 そんな安心感に水を差すように、この層では敵の襲撃が多かった。朔也はその対策に大忙しで、気付けばこの層だけで魔石(微小)を20個以上ゲットしていた。


 それからカードも【まだら狼】【まだらテントウ】【丘ゴブリン弓兵】と、3枚も追加で回収出来てしまった。嬉しい誤算だけど、どれもF級で戦力には微妙な奴らばかり。

 それでも、それだけ止めを刺せたって事でもあるし、成果としては上々だろう。特にゴブリン集団との戦いは、危うく前後から挟まれそうになって大変だった。


 体格の良いオーク兵が混ざって無くて、本当に良かった。こちらも増援を召喚するまでもなく、8匹もいた連中を討伐する事に成功した次第である。

 朔也自身も、果敢に赤髪ゴブと共に敵の集団に斬り入って、敵の弓兵を倒す事が出来た。お陰で赤髪ゴブは傷を負ってしまって、ここはユニット交換の時期かも。


 やはりE級ランクの赤髪ゴブだと、同格に近い敵との乱戦では無傷では済まないみたいだ。コスト的には大助かりだけど、あまり無茶はさせられない。

 それは朔也もそうだけど、先ほどは先行して突っ込んだ赤髪ゴブが良い目晦(めくら)ましになってくれた。本人は囮役のつもりはなかっただろうけど、結果的に敵のヘイトを一身に受けてくれた格好に。


 そんな感じで、戦闘報酬は多かったけど今回に至っては他での回収品はナシの結果に。それより先に、お姫とカー君の偵察部隊が怪しい石の柱の建つ場所を発見してくれたのだ。

 戦闘後に立ち寄ってみると、見事にそこに3層へのゲートを発見。





 ――意外と敵の密度の高い丘陵エリア、次の層も無事に済めば良いけれど。








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