20スタートォーー!!
春休みなど、長期休みってなぜかすぐ終わりますよね~
約1時間半後、私はふらふらしながら宿泊する宿に向かって王都の道を歩いていた。
契約をしに私と同年代の子供が国中から集まるため、どこを見ても人でいっぱいだ。
う゛――人酔いしそう――。
なにせ、ここまで人であふれているところには来たことがないし。クワソン家の街はここまで混んでなかったし。
「メアリー、宿はまだ……?」
私は限界が来そうになってメアリーにそう問いかける。
「!?――お嬢様……私に乗ってください。背負って宿まで運びます。」
私はそれに甘え、メアリーにおぶってもらうと、メアリーは
「お嬢様。しっかりつかまっていてくださいませ」
といい、え?――と私が疑問に思うのと同時、メアリーは駆け出した。
ものすごい速さで。
「うわああああぁぁぁぁぁぁ―――」
そして気づいた時には一軒の宿の前にいた。
「………え?」
目を大きく見開き、その状況を理解しようとしていると、
「えへへ。私、足には自信があるのです」
と微笑みながら言ってきた。息切れもせずに。
「………」
「ああ!それより、早く宿で休みましょう」
そして私がちょっと、いやかなり引いていることに気づかない様子で宿の鍵を借り、スウィートルームだと思われる部屋のキングサイズのベッドに私を横たわらせた。
私は気分がすぐれなかったなめ、すぐさま眠りについた。
で、目が覚めると日が暮れ始めている時だった。
……かなり寝たな。
私はベッドから起き上がり、メアリーに声をかけに行くことにした。
「あ!お嬢様!大丈夫ですか?しばらくお目覚めにならなかったので、そろそろ起こそうかと考えていました」
「メアリーおはよ。ご飯って…」
「そろそろ宿の方が持ってきてくださる時間ですね!」
「そっか、ありがと」
そう言って私はあくびをする。
そうして目をこすっていると、
「お嬢様が寝ている間に明日の持ち物の準備をしましたので、ご確認ください」
「それってどこにある?」
そこに――と指で指されたところには小さなバックが1つ置いておいた。
「……⁉――」
驚いて、こんな小さなバックで大丈夫か聞くと、これは精霊の力を応用し、かなりの収納性があるバックなのだとか。
バックを開けて中を覗いてみると、前世のアニメで見たことがあるような広い空間が広がっていて、その中に水やテント、食料などがたくさん入っていた。
メアリーはかなり前に自分も行ったとき、こんなものがあったらいいな~と考えていた物をたくさん入れておいてくれたらしい。
「これらがあれば、2~3日の生活には困らないと思いますよ!」
「メアリー~!ありがとー!!」
私がメアリーに抱き着く。メアリーは嬉しそうな顔を浮かべ、優しく頭をなで、
「お嬢様。絶対に無事に帰って来てくださいよ。ぐすん」
と言い、涙を流し始めた。
そして、美味しいご飯を食べ、明日の準備をし、ぐっすり寝て翌日――精霊との契約をする日になった。
「お嬢様。洞窟までは歩いて行くこととなっております。ご準備はよろしいでしょうか」
「ええ!いざ!」
運動着に着替え、長い朱色の髪を高い位置に1つに結び、気合は十分だ。
私は肩にバックをかけ、ベルトに剣を差し宿を出る。
「「「「「行ってらっしゃませ!お嬢様!」」」」」
そうついてきてくれた使用人たちが見送りの言葉をかける。
「行ってくるわ。ありがとう」
そう使用人たちに言い、私は付き添いのメアリーと一緒に洞窟へ向かった。
「わあ!ここが洞窟……すごい大きいわね……」
「はい。王都の大半の面積を占めていますから」
あの宿から徒歩15分、私たちは洞窟の入り口の前までたどり着いた。
洞窟は想像していた大きさよりも何倍も大きかった。
「では、お嬢様。私はここまででございます。事前に言われていた番号順に並んでください」
子供が大勢並んでいる列のそばまで来て、メアリーはそう言った。
「メアリー、ありがとう!待っててね!」
私はメアリーにそう返し、長蛇の列に並び始めた。
「愛しい愛しいお嬢様、ご武運を」
そんなメアリーの呟きが去り際に聞こえた――気がする。
「9251さん」
「はい!」
私は受付の人に番号を呼ばれ前に出る。
「えーと、お名前をお願いします」
「リューナ・クワソンと申します」
「よし、では洞窟の前でスタートの合図がかかるまで待機しておいてください」
「ありがとうございます!」
やっと私はようやく長い列から抜けることができた。
ここまで来るのに軽く1時間は超えてるだろうな……長かった……
そうして洞窟の前に移動すると、子供のたくさんの――うるさいくらいの声でいっぱいだった。
「俺、精霊神上位精霊と契約したいな~そうすれば、人生イージーモードじゃん!」
「おーほっほほ!ワタクシにふさわしい精霊はいるかしら」
「あの……」
「頑張ろうな!」
「うん!」
うるさああい。話し声ばかりで耳がおかしくなりそう……
「あの…!」
あれ、もしかして話しかけられてる?
「はい!」
私が元気よく返事をし、声がしたと思われる方向を向く。
「こ…こんにちは。私、アイルと言います!」
この緑髪の少女――アイルが話しかけてきたらしい。
「ごめんなさい、気が付かなくて……私はリューナ・クワソンともうします。以後お見知りおきを」
最近学んだカーテシーをする。
「!あのクワソン家のご令嬢でしたの!綺麗な赤い髪の方がいて、話しかけたいと思って!」
アイルは私を見た時、興味を持ったらしい。
そして、試練が始まるまで、私たちは楽しくしゃべっていた。
時間を忘れて話に夢中になっていると、パンパンーーと手を叩く音が聞こえ、周りは静寂につつまれる。すると黒髪のイケオジが前へ出る。
「それでは、洞窟へ入ってもらう前に、ルール説明を簡単に、
1つ、人に危害を加えないこと
2つ、何かあったら入り口まで戻ってくること
この2つさえ守ってもらえればよい!
では、いくぞ!
スタートォーー!!」
その瞬間、一斉に子供たちが走り出す。
私は早歩きをし洞窟に入るちょっと前、アイルとはぐれてしまった。
…一緒に行けたら行こうって話してたのにぃ――!
周りを見渡してみるがアイルらしき人はいなかったため諦めて、私は剣に手をかけ、魔物からの襲撃に備えつつ進む。そんな時、1つの疑問が浮かぶ。
――アイルってどこの家なんだろう……もしかして、庶民の人だったのかな?どっちにしてもどこに家があるか言ってなかったし、後で会えなきゃ手紙送ったりできないじゃん!ああああ最悪。
でも、今はそれを考えている暇はないと気持ちを切り替えた。
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