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『賢き人との対話』より  作者: 富永正男
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9、末日についての対話

賢い人よ、大いなる御方はどうして神子のかけらを一度に呼び戻されないのでしょうか。


大いなる御方は何事にも干渉することを嫌われるからである。


しかし、あなたの仰るとおりであれば、いつまで経っても神子は復活なさらないでしょう。


そうかも知れぬが、神子は自らを犠牲にして、この偽りの世界を浄め滅ぼすこととされたのである。その御心を大いなる御方は尊ばれるのである。


では、大いなる御方が何かをなさるということはないのですね。


否。真実を申せば、大いなる御方は年限を定めていらっしゃると聞く。


その年限というのは、何時なのでしょうか。


それは分からぬ。知っていても教えられぬであろう。ただ、今生きておる者がその日に会うことは万が一にも有り得ぬと言えども、この偽りの世界が八千歳を迎えることはあるまい。


では、もう千年もないということですか。


然り。その日は我ら御使いには余りに近く、六種の民を皆救うことは最早叶うまいと思う。


最後の日には何が起きるのでしょうか。


まず、神々が我ら御使いをして偽りの世界に怒りを示されるであろう。すなわち、山は火を噴き、地は揺らいで絹のように容易く裂け、川は溢れ、海は大波を以て襲い掛かり、地は火と水によって覆われるであろう。六種の民も万物も善悪貴賤の別無く生命を奪われ、その魂は永遠に消え失せるであろう。

然して、遂に大いなる御方が神々とともに偽りの世界に降臨され、神子のかけらを残らず呼び戻されるであろう。清められたものも穢れたままのものも等しく滅ぼされ、偽りの世界は無に帰し、初めから存在せざるものとされるであろう。その時には、大いなる御方も、神子も、神々も、我ら御使いも、決してこの偽りの世界を想い起すことはないであろう。

その時、我ら御使いはようやくその重い務めを終えて、真実の世界に還ることができる。我らはその日を待ちわびているとも言えるのである。


最後の日の兆しについて教えてください。


正しき者が悪しくなる時である。


正しき者が悪しくなるとはどういうことでしょうか。


正しき者が憐れみと正義を失うことである。その時、二度と万物が清くなる希望は絶たれ、神子の復活が大いなる御方による呼び戻しによるほかなくなるからである。


どうすれば最後の日を避けることができるでしょうか。


正しき者が憐れみと正義とを失うことが無ければ、可能であるかも知れぬ。

まずは大いなる御方と神々を正しく信じ、我ら御使いとともに魂を清く保つことが第一である。そして、神殿に巣くう生ける影や学者の類を遠ざけよ。星を崇める者や占い師などは尚更である。

偽りの世界を軽んじ、真実の世界での永遠の生だけを希望とすれば、最後の日も遠ざかるかも知れぬ。


一方で、この千五百年ほどで魔物は大分減りました。救世王の武勲によってか、魔王を称する者も出てきておりませんが、それでも最後の日は近いのでしょうか。


然り。最後の日は近い。無論、悪しき想いは神子によって長の年月を経て浄められつつある。これに惑う者もいまだ少なからず、日々に彷徨う影も増えつつあるとは言え、最早かつての如くに魔が地に蔓延ることはあるまい。

そうであっても、真実の世界に戻らぬ神子のかけらは幾千万と言わず、六種の民に委ねて、その還りを待つには時間が掛かり過ぎる。少なくとも、大いなる御方や神々はそのようにお考えである。ゆえに、最後の日は近いと言うのである。


神々は時間を超越されていると伺っておりますが、いかがでしょうか。


然り。神々は空間も時間も超越された御方である。我ら御使いさえそうである。しかし、大いなる御方の御子を想われる大御心は実に切なるものがあり、人々言うところの一日千秋の思いで復活を待ち給うていますのである。


本当にこの世界は神々にとっては塵も同じということですね。


然り。何度でも言うが、偽りの世界は本来在るべからざるものである。塵よりも無意味である。ゆえに、あなた方も真実の世界を願うのであれば、偽りの世界を神々と同じように塵のように見なければならぬ。

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