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『賢き人との対話』より  作者: 富永正男
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7、星を崇める人たちについての対話

賢い人よ、星を崇める人たちについて教えてください。


彼らは哀れにも真の世界についての知識から遠ざけられた木の民の裔である。


星を崇める人たちは、一つ一つの星が神々であると説いています。


何とおぞましいことを言うものぞ。太陽と月でさえ悪しき亡骸であるというのに、星がどうして神々であろうか。

偽りの世界はすべて悪しき亡骸である。(きよ)いものはいづくにも存在せぬのである。


星を崇める人たちは、星に祈りを捧げることで願いが叶えられる、また、星の動きを観て占いが出来るとも説いています。


星に祈りを捧げる者は、僭称者に祈りを捧げる者である。

縦し願いが叶うとても、決してそれは神々から祝福されることはないであろう。

また、星を観て何が分かるというのか、彼らがこの偽りの世界から悪しき出来事を予め防いだことがあったか。

彼らの言うことが真実であれば、何と我ら御使いは空しい存在であろうか。


それでは、星を崇める人たちの言うように、供物を聖火にくべて、その煙を以て星に捧げることは無意味ということでしょうか。


然り。いかな悪しき亡骸とは言え、星のかかる天は高く、とても煙は届くまい。

届いたところで何の意味もない。星はただの光る岩の類に過ぎないのだから。


どうして星を崇める人たちは、そのようなことを説くようになったのでしょうか。


かつて救世王の裔が北からの侵入者と争うようになった時、東の果ての民に助けを求めたことがあった。

その民たちが星を崇めており、星に祈りを捧げ侵入者を追い払ったことで、この大平原にも広まったのである。

その時に、神官たちの中から神殿を裏切った者たちがあった。

東の果ての民たちは、かつての魔王の一人であった偽預言者によって、星を崇めることを学び、神々から離れること久しかった。

東の果ての民たちが故地へ帰還すると、裏切り者の神官たちが星を崇める人たちと呼ばれ、人々を迷信に誘うようになったのである。


三種の民を統べた者がかつていた地の民ですか。


否。東の果ての民は東の地の更に遠い果ての民である。


そのような遠方の民に、どうして大平原の王は助けを求めたのでしょうか。


彼らは海の民であり、海から北の地を攻めることができたからである。

彼らの一部は大平原まで遠征して来たが、大部分は北の地で侵入者の都を攻めたのであった。


御使いは彼らを教化することはなかったのですか。


我ら御使いは幾度も東の果てまで行った。そして、偽預言者を討ち、悪しき王をその座から民をして追わしめた。

しかし、彼らは我らをも星の使いとして「流星」と呼び崇めてきた。

彼らと敵対することは好ましくなかったため、彼らの迷妄を利用しこそすれ、覚ますことはできなかったのである。


そのために、大平原でも迷信が広まってしまったということですね。


然り。しかし、あえて半ば否と言おう。


それはどうしてですか。


高御座山の神官たちが信仰薄き人たちであったためである。

彼らが神々への、そして、大いなる御方への信仰に生きる人たちであれば、彼らの中から裏切り者が出ることはなかったであろう。

そして、裏切り者たちの虚偽を指弾し、人々を神々への信仰、そして、真の世界への信仰に引き戻すことができた筈である。

しかし、彼らは富だけを信じ、富だけを求める者となっており、裏切り者の前には無力であった。


では、高御座山神殿の聖域内に聖火殿があるのはそのためですか。


然り。彼らは富の前に妥協を選択したのだ。そして、星々が神々そのものであるなどという邪義を黙認したのだ。

神子の復活を妨げる者達には相応の報いがあるであろう。これまでも、そして、これからも。


星を崇める人たちやその信者は神子のかけらを届けることはできないということですか。


然り。過てる信仰は神子のかけらを再び偽りの世界に引き戻すことになる。


星を崇める人たちは、死ねば影になるということですね。


然り。彼らは必ず影になる定めにある。

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