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『賢き人との対話』より  作者: 富永正男
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4,悪についての対話

賢い人よ、悪はどうしてこの世に存在するのでしょうか。


もとより悪しき者の亡骸である偽りの世界に悪の存在せぬ謂れはないであろう。


では、どうして真の世界に悪しき者が生まれたのでしょうか。


僭称者は神々から分かれてしまったことで、悪しき者となった。


神々はそれぞれ別々の存在ではないのですか。


半ば然り、半ば否。神々は確かに大いなる御方の力と徳をそれぞれに担い給う方々である。

しかし、神々は決してその御心が異なることはない。すなわち、神々は多にして一なる存在である。

ゆえに、我らは常に神々と称えるのである。

そのような神々の中で唯一柱「我は我なり」と自我を分離した者が僭称者である。


自我を分離したことで悪しき者となるという理由が分かりません。私たちは皆互いに別々の存在であるのが当たり前なのではないでしょうか。


神ならざる者については然り。しかし、神については否、断じて否。

多にして一なる神々から自我を分離することは、大いなる御方から分離し、己の判断で行為することであり、権限からの逸脱であるのだ。

神々は常に大いなる御方のために働くために存在するのであって、己のために存在するのではない。

かの悪しき者は己のために存在する者となってしまったのであり、これこそが悪しき者となる始めであったが、それだけが悪しき者と称される所以ではない。

すなわち、僭称者は大いなる御方の御業を妬んで自らの世界を創造しようとし、それを自分でも実現できると高ぶりの心を起したことで、悪しき者に堕したのである。


何故、自分の世界を創造しようとすることが悪であるのでしょうか。


おお、何たる瀆神の言であることか。偽りの世界といえども神々の眼差しが届かぬ隈があると思うな。

かの瀆神で知られた空の器でさえもそのような事はついぞ口にはせなんだものを。

世界の創造は大いなる御方ただ御一方に許された御業であり、自分の世界を創造しようとするは自らを大いなる御方に並ぶ者であると称するに等しい。

僭称者は正しく僭称者である。


しかし、大いなる御方に並ぶ者になることがどうして悪なのでしょうか。


おお、無知なる者の如何に恐ろしいことか。

真に大いなる御方に並ぶ者になるのであれば確かに悪ではないかも知れぬ。

しかし、大いなる御方に並ぶことはできぬのである。そのように称することができるだけである。無論、そのような者は悪しき者のみであったが。

大いなる御方に及ばぬ者がその御業に倣えば不完全な業をなすことしか出来ぬ。汝愚かなる者よ、この不完全こそが悪である。


不完全が悪とはどういうことでしょうか。


僭称者が御使いを創造せんとすれば姦計を弄する悪魔を生み出し、力ある者を創造せんとすればその制御するを知らぬ者を生み出し、大地を創造せんとすれば裸の岩山や荒野を生み出すのである。すなわち、その世界は無秩序であり混乱に満ち、そこに住まう者は邪悪で無知で乱暴である。

僭称者の悪しき想いを知った大いなる御方は、自ら創造された世界とともに、そのような不完全な世界が存在することを望まれなかったため、悪しき者が何か一つでも創造する前に、神々に命じてこれを討たせ給うたのである。


しかし、結局この世界が生まれてしまいました。


それが大いなる御方にとっての一大痛恨事であったのだ。大いなる御方は自らを分ち給い、神子を生み出し給うた。そして、神子は自らこの不完全なる世界を浄め滅ぼすべく、その身を分かち死なれたのである。

そうだ。神子は大いなる御方を讃えるために死なれたのである。しかし、今この瞬間にも蘇り給いつつある。必ず神子は復活し給う。神子は大いなる御方と同じ御方にましますが故に。その時、偽りの世界の末日の期、世界から不完全、すなわち悪が取り除かれるであろう。

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