7話 裏の事情
視点:白神
「火事だーーーーーー!!!!!!!」
(…は?なんでここで火事?)
ここは王城なのだ。そんな火事が起きるような場所ではないはず。それにいざというときに備えての魔法使いやらが控えていると聞いた。それなのに…
「おい白神!逃げるぞ!」
と言う友人の清水の声を聞いて、只事ではないと悟る。
(とりあえず避難しなければ…)
「わかった!すぐいく!」
とにかくこういう時はすぐに城外に避難しなければ自分も火事に巻き込まれてしまう。
「…なあ洸太…あれ見ろよ…」
そう言われて窓から外を見ると…
「な…」
城外の草花が燃え、そこの建物も一緒に燃えている。場所は確か…
「おい、あそこって守の部屋じゃねぇか。しかもあそこらへんって城外へ行く通路だよな…」
マジかよ。っていうかこんなことしてこの国の尊厳守られるのか?国民からいろいろ言われるぞ。この国の民知らんけど。
「マジかよ。他のところから出られるか?」
「無理だ。城は防犯とか言ってあそこ以外の出入り口はないらしい」
「隠し通路とかないんか?」
城だったら隠し通路の一つや二つあると思うのだが…
「わからねぇ。とにかくここから出る手段がなくなったというわけだ」
「最悪…窓から飛び降りなければならんな…」
魔法を練習していると言っても、かじった程度ではもう既に燃え広がった炎を消火することは無理だ。
「マジかよ!ここ結構高いぞ」
「しょうがないだろ。まあこれはこれしか方法がなくなったらの話だ」
(光正さんならどうするのかな…)
光正という男こういう時は他のなによりも人命優先で動く男だ。なのでこの場合…
「なあ、拓人を呼んできてくれないか?」
「いいけど…なんでだ?」
「説明している暇はない」
そのいつもより切羽詰まった様子に何かを感じ取って、清水は拓人を探しに行く。
(あいつなら…)
…数分後
「今火事が起きてるってのになんで逃げねぇんだよ」
「なあ拓人、お前のパワーで火事の発生源とこの城までの通路をぶっ壊してくれないか?」
拓人は肉体でオラオラ系なので、おそらくは通路を壊せるだろうと思ったのだ。
「いやなんでだよ、さっさと逃げようぜ」
「逃げるってどこに逃げるんだ!」
「…確かに」
「わかったなら早く!」
「急かすなって」
そして拓人は火事の発生源に繋がる通路にたどり着き…
(インパクトの瞬間に全力を込めて…!)
教わったことはしっかり生かすと意気込み…
「オラァァァァアアア」
ドーーーーーーーン!
(あっやべ)
…そして拓人はやり過ぎてしまった
(ヤベェ思った以上に壊れちまった…まあいいか)
そして白神の元へいくのだった。
「なあ白神…後で怒られたりしないか?」
「大丈夫だろ。こっちは生き残るので必死なんだから」
まあこれでこっち側に火が来ることがなくなった。だが…
(なぜ突然火事が起こり、しかも誰も消火をしようとしないんだ?)
そう。それが問題なのだ。
ここ王城は、火事だけでなく、あらゆる不祥事に備えて、完璧な対策をしているはずだ。なのでこの程度の火事ならすぐに消火されてもおかしくない。それなのに現実は火は消えずに燃え続ける。
(そういや俺たち以外の奴らはどこだ?光正さんは…なんか呼ばれてたな…)
勇者という待遇は、城の中でも上位に位置するので、勿論使用人がいる。だがその使用人がどこにも見当たらないのだ。
(それよりも先ず他のみんなと合流しないと)
そう考え、拓人に聞いてみる。
「なあ拓人、他の奴らがどこにいるかわかるか?」
「さあ?紗羅の場所なら分かるけど他の奴らは知らんなぁ」
「じゃあとりあえずみんなが居そうなところに行こう」
「了解」
そしてまず食堂に来たが…
「…ここに全員いんじゃん」
そこにはクラスメイト全員の姿があった。
「光正さんがいない…」
ただしそこに光正の姿だけがなかった。
「なあ洸太、光正さんどこにいるかわかるか?」
清水に聞かれたが、わかるはずがなかった。
「呼び出されてから一向に見た事ないな…」
「ってかそれよりも火事の原因ってなんだよ。消火すらされなかったじゃねぇか」
「たしかに…」
というかここにクラスメイトしかいないのも問題なのだ。なぜここに王城の人間がいないのか。
「皆さん大丈夫ですか!?」
そう思っていると、王城の人間…騎士団長のロテリオスさんがやってきた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…今回も失敗か。まあ次に期待するとしよう」
「言い訳は頼みましたよ?」
「わかりました」
裏の事情は誰も知るべからず。知られてはならないのだ。