4話 絶望
そうして3分は終わった…
視点:拓人
「はいはい皆さんよく逃げられました〜」
ふわーやっと終わった〜。この人たちやっぱりバケモンだなぁ。ギリギリまで全く気づかなかった〜。
「これで今日の実践訓練は終了です。誰か居ない人いませんか?この訓練をすると1人や2人迷子になる人がいるんですよ」
…まさか誰か迷子になったりでもしたのか?
「ねえ拓人君。守君はどこ?」
そういやどこだ?
「さあ?」
「あんたも知らないのね…まあとりあえず部隊長さんに言っておきましょう」
「了解、言ってくる」
まさかあいつマジで迷子になりやがったのか?あいつ方向感覚はいい方だと思うけどなぁ。まあほぼほぼ森だし仕方ないか。
「すみませーん部隊長。守が居ないです」
「…そうか、了解した。今から捜索部隊を出すから君はゆっくり休んでおくといい。明日からも通常の訓練を行うからな」
「分かりましたー」
あいつ迷子かよ…なんかGPSでも持たせときゃ…って無理か。それにしてもあいつどこ行ったんだろ。
「どうだったの?」
「多分迷子だと思う。捜索してくれるから今日は休めってさ」
「ふーん」
まあでも、なーんか嫌な予感がするんだよなぁ…実はどこかの盗賊に襲われたりして…って違う違う!縁起でもない…
ただそれでも、嫌な予感は拭えないんだよなぁ…
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視点:紗羅
(はあ…迷子って…もう少しマシな嘘つきなさいよあの部隊長。おそらくは守自身に何かがあったわね…)
この一ヶ月間で、沙羅は自分の力の事はなんとなくわかっていた。
(私の力は他人の裏事情の腹黒さがわかるから、見た時から真っ黒なあの部隊長が何かした。幽閉か、もしくは殺じ…)
その考えが頭をよぎり、必死に振り払う。
というか沙羅の能力はもう少し違うのだが…
(殺人なんて、縁起でもない。でも…)
そう、守に何をされるかまではわからないのだ。
ましてや部隊長が何を目的に守を行方不明にしたのかさえも分からないのだ。
そう考えると、心が不安に押しつぶされてくる。
(守に何かされる前に、探し出すしかないわね…拓人君も巻き込もうかしら?)
ただ1人、冷静に推測し、
ただ1人、ウソを見抜いたものだけが、静かに行動を始める…
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はーはっは!やはり弱いものから落とすのは楽でいいな」
「…まあいいでしょう。もう後2、3人殺して欲しかったのですが?」
「無茶言うなよ王女様。他の奴らはなかなか手強いですぜ?殺るならもう少し準備した方がいい」
「まあそうでしょうね…特にあの紗羅と白神。あの2人から嫌な予感がします。あの2人は要注意人物として、徹底的に監視しなさい」
「了解しました」
表の顔と裏の顔。それは使い分けることが大切である。
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…ここは?
そう思った瞬間、全てが戻ってきた。
(あぁ…俺は…死んだのか…)
殺された?
(最後に聞いたあの2人)
恨めしい?
(なんでだ)
なんでキミが?
(違う)
ほう?
(あの2人は恨めしい)
そうか。
(殺したいほどには)
なら殺せ。
(…違う)
何が?
(俺は)
キミは…
(なんで生きている?)
…やはり面白い
……っはあ!…はぁ…はぁ…はぁ?
(なんで俺は生きている?)
ただそれを口に出そうとしても出てこない。それどころか…
(何も…見えない…感じない…聞こえない…)
どこを見ても暗闇で、耳をすましても何も聞こえず、助けを呼ぼうにも声が出ない。
ただ一つだけあるとすれば…
(…体は動く)
体を動かすことだけは出来るということ。
(とりあえず…移動するか…何も見えないけど)
そうして移動して…コケた…多分。
(痛くない…ただ重力は感じる。どうなっている?というかなぜ俺はこんなにも冷静なんだ?)
とりあえず目が見えないと何も見えない。
(感じろ)
本に書いてあったことは覚えてる。魔力の流れを辿れば、目が見えなくとも色や質感がわかるということ。
(ってわかんねーよ!)
何も練習してないし、やろうと思ったことすらないし…
(でもやんないと何もできないからなぁ)
…今守がやろうとしていることは、『魔力探知』という小ワザみたいなものだ。簡単に言えば、物質を通っている魔力の情報を読み取り、その情報をもとに色や形など、様々なことが分かるということだ。
(…なんとなくわかる気がする。なんかもうちょいで…)
そしてたっぷり一時間後、ついに…
(おお!)
守は『魔力探知』を習得した。
(おお、見える!わかるぞ!…でもなんも聞こえんし感じねぇ…)
…結局『魔力探知』でわかるのは視覚情報だけなので、何も聞こえないし、感じないのだ。ただそれでも、視覚が復活するだけかなりマシなのだ。
(ここは…森の中か。でもなんで相変わらずしゃべれないんだ?)
そうして自分の姿を見た時…
守は1人絶望した
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