3話 実践訓練
そんなこんなで一か月が経った…
何してたかって?訓練と図書館での情報収集。ゲームでもそうだけどどうしてもわからない時は攻略情報を見るのが定石だ。まあ特に何もわからなかったけど。
「結構訓練にも慣れたよな〜。守は相変わらず厳しそうだけど」
「当たり前じゃん。なんだよ1000メートルを10周って。やばすぎだろ」
「…私より遅いのは男としてどうかと思うわよ」
この一か月では、走り込みや剣の素振り、それに座学だ。もうくっそ大変。
「いやいや白神とかその辺には勝ってるからいいだろ」
「いやいや白神とかは運動苦手グループだから仕方ないじゃん」
「俺も運動苦手グループがいいよ〜」
「守はまあまあ動けるから無理だな」
いやいや高校生にもなって50メートル約8秒は遅くね?
「運動苦手グループは50メートル9秒台の集まりだぞ」
そんな〜
「それよりも明日実践訓練だってよ!ゴブリン?とかと殺り合うのかな?」
「そんな過激なわけないじゃないの。多分外で何かやるんじゃないかしら?」
「ええ〜もうちょい図書館にいたかったなぁ」
「引きこもると太るわよ」
「うっせえ」
まあそれにしてもここの生活にも慣れてきたなぁ。メシ美味いし。
「まあさっさと寝て明日に備えようぜ」
「そうね」
そうして俺らは就寝についた。
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というわけでやってきました!近くのサイノ村!
「それにしても静かだなぁ」
「副団長によればここは廃村で今は誰も住んでいないらしいわよ?」
なんで廃村で実践やるんだ…人いた方が怪我した時にすぐ対応できるじゃん…
「そういや今日は副団長なんだな」
「ああ、ロテリオス騎士団長は今日は国の騎士団の訓練でいないらしいぞ」
「なるほど」
「ってかそろそろ…」
「よーし!みんな!今日は近衛騎士団隠密部隊を相手にした対盗賊訓練だ!油断はするなよ!」
光正はリーダーシップあるなぁ。もうあいつ勇者でいいんじゃね?
「相手は策を練り罠を仕掛ける知能がある!僕らも作戦を考えよう!」
「「「「「おー!!!」」」」」
…あいつが勇者だな。
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「…なるほど、もうこの時期でございますか」
「はい。勇者様方も気合を入れております」
「そんなことはどうでもいいですね。作戦の調子は大丈夫ですか?」
「すべては計画通りに進んでいるかと」
「それなら、少しばかり観戦しに行っても良さげですね」
「了解いたしました」
そうして従者は部屋から出る。
「…我々に欲しいのは真なる勇者のみ。他はいらないですよね」
そうして部屋の主は静かに嗤った。
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あ〜やっと訓練もラストだ〜!
ちなみに今までやってきたのは、この部隊との戦闘訓練が主だった。場所は近くの森やら村の中やらいっぱいあったが、この人たち10人もいないのに一回も勝てなかったんだよなぁ。特に部隊長のハンスっていう人がやばい。
「勇者の皆様もやりますね。では最後にかくれんぼをしましょう。我々が本気で隠れ、攻撃するので、3分耐え切ったら勇者様方の勝ちです。その際、出来るだけまとまらず、バラバラになるようお願いします」
ええ…無理ゲーじゃん…この人たち全員隠れるのうまいもん…
「分かりました!みんな最後だが油断せずに行くぞ!」
なんで今からやるのがかくれんぼなん?
そしてなんでやる気満々なんだこいつ。
そうして、最後の“かくれんぼ”が始まった。
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「1人だとやっぱり心細いな…」
バラバラになれと言われたから分かれたが、やっぱり心細い。思わず独り言が漏れてしまうぐらいには寂しいのだ。
「3分間か…短いようで長いな…」
近くに誰もいないように感じるが、本当は誰かがいるんだろう。きっと油断したら負けだな。
………
……
…
もう2分経ったが何にも感じない。本当に狙われているのか?まさかの迷子だったり?そんなわけないと思いつつ、しばらく彷徨っていた。
…ガサッ
「ん?」
今何かがそこにいたような…動物か?と思った。
思ってしまった。
今完全に自分の意識がその音にいってしまった。
そして…
「隙は見せない方がいいですよ」
…という声が聞こえた気がした。
「あがっ!」
なんだ…?刺された…?
「おや?ギリギリで避けましたか」
何が…起こった…?
ふと自分の手を見ると、真っ赤に染まっていた。
「…!?」
「すぐに楽にしますからね」
「ぐっ!はあ…はあ…」
なんで…胸から…血が…?
「さようなら」
「がはっ!」
「…おやおや、少しやりすぎましたか」
「任務ご苦労様ハンス部隊長」
「はっ!ソフィア王女様」
「今日はこいつだけでいいでしょう。意外にも手強いのが多いですしね」
「了解いたしました」
「一応遭難しているということにしておくから口裏合わせよろしくおねがいしますね?」
「分かりました」
「あと、死体の焼却処分、忘れないでね?腐ると面倒だから」
……ソフィア…王女に…ハンス…部隊長…これは…夢…か…
…そこで俺の記憶は途切れた。