17話 圧倒的強者
「...あっぶね〜」
いつの間にか目の前の爺さんが剣を取りだしたかと思えば、瞬く間に自分へと振り下ろしていた。しかし守はなんとなーくの直感で大きく横に飛んでいたため、何とか避けられたのだ。
「ほう...やるのう...」
そう言いつつ、次なる攻撃をしようと構えるアルルベイシャン。
対して守は、先程の回避は奇跡の中の奇跡と知っていたため、次はどうしようかと考える。
(なんだよ突然魔法使いから剣士になりやがって!どういうことだよ!)
なんてことを思いつつ、まあ動いたら全力横っ跳びでいいか、という結論に至った。武道を習っていたことすらない守からしたら至難の業だが、それをしないと生き残れないので仕方がないのだ。ただ時間稼ぎも一緒にするが。
「お前なんで突然剣士になりやがったんだ!魔法使いじゃねぇのか!」
「...フッ勝つために手段を選ぶのか?それにこの剣は今は亡き我が友から習った剣なのだ。簡単に見切れると思うでないぞ!」
そう言ってまた神速の技を繰り出す。しかし守は横っ跳びで回避し...
「グッ...痛ってぇ」
回避しきれずに脇腹を斬られてしまっていた。その隙を逃すアルルベイシャンではない。
「がああああ!!!」
瞬時に守の左腕を切断してのけた。
「さあ、終わりじゃよ。若き者よ」
そう言って最後の技を繰り出す。
「この技はわしが唯一覚えている技じゃ。冥土の土産にするがいい...桜剣流...花心乱舞!!」
そうして放たれた技はまるで舞い流れているかのように一直線に守の首を狙う。対して守は反応することすら出来なかった。そして...
ガキィン!!
という鋼がぶつかる音が鳴った。
「何とか間に合ったか...」
「...今何が?」
颯爽と駆けつけたのは、守を探しに来ていたオセルトだった。
「なんじゃ!」
アルルベイシャンは突然の登場に少し困惑していた。
「さあアルルベイシャンだったか?貴様を...ぶっ飛ばす!」
「がはっ」
本気になったアルルベイシャンをいとも容易く吹き飛ばすオセルト。しかしそれでも反撃する。
「厄介じゃのう…混沌束縛!」
そして突如オセルトの周りから禍々しい鎖が飛び出し...全て切り伏せられた。
「貴様もなまったものよ。これでは私が本気を出すまでもない」
「誰かは知らぬが言ってくれるのう…ではこれでどうじゃ?死限穴...」
そうして魔法が放たれ、オセルトに捌かれて...という状態に陥った。その頃守は全くついていけない戦いにおいてけぼりにされていた。
「いやまじであの爺さんもオセルトさんもやばいっしょ。ってかあの爺さん自分とやり合ってる時より強そうだし…自分とは本気じゃなかったとか?しかもお互い全くの互角に見えるしなぁ」
いや、実際は本気だったのだが、守は全く気づいていなかった。
しかし、どんな拮抗もいつかは崩れるのだ。
「これで終わりだ!超閃!」
一瞬の隙をつき、オセルトがアルルベイシャンの胸を穿った。
「カハッ」
この瞬間、勝利がどちらのものであるかがハッキリとしたのだ。
「フ、フフフてわしが死んだら…貴様らも死ぬぞ…」
「...どういうことだ?」
「教えてやる義理は...ない...ただし傷をつければ…わしは貴様らを…地獄へ招待する…」
そう言ってアルルベイシャンは事切れた。
「なんかカッコイイ言葉残して死んでってなぁ」
死と隣り合わせの状況で死に慣れてしまった守は思わずつぶやく。
「マ〜モ〜ル〜?なんでこんなとこにいるんだ〜?」
「ギクッ」
「俺は城に来いと言ったよなぁ?なんで見るからに城じゃないとこにいんだ〜?」
やっべぇ好奇心で入りましたとか言ったら殺されそう...
「...まあそれは後でいい今は帰るぞ」
「りょ、了解...」
あ〜怖かった...
そうして帰ることになったのだが…
「ん?なにか物音が...」
アルルベイシャンは1度狂い、禁忌を犯した。そしてそれを己の手で封印した。しかし本人が死んだ今、誰がその封印を管理するのだろうか?強大な力を封印するにはそれ相応の管理がいる。しかし管理人がたった今死んだ。その結果...
「...やーと外に出られたー!それにしても肉体があるにはやっぱ便利だな〜。あの爺には感謝にないとね〜」
この世に出してはいけない存在を出すことになった。