16話 冒険者は勇者
視点:紗羅
「今日は冒険者登録をしてもらいまーす!まあ身分証明書だと思ってくださーい」
そう、この国の宰相のテサイさん言われて城外の人気のない場所に連れてこられて、冒険者登録というものをやり始めた。
突然のことで混乱したが、まあ必要なものらしい。これから街に降りることもあるかもなので、その時に便利なのだと。
「ここに名前を記入してくださーい。それで終わりでーす」
...はやない?
そうして全員分の発行が1時間程度で終わり、説明が始まる。
「これから冒険者としてみなさんは実力をつけてもらいます。光正さんだけは顔が知られてしまっているので出来ませんが、切磋琢磨していきましょー!」
あまりにも突然過ぎて、みな困惑していた。っと言うか冒険者なんてあったんだーとさえ思っていた。
「なあ紗羅!冒険者だってよ!これってあれじゃね?ギルドってやつじゃね?」
約1名興奮が収まらない輩がいるが、何故わざわざ冒険者としてやるのだろうか?という問いに、テサイさんは長々と説明しだした。まとめるとこうだ。
・勇者を公表してしまった以上、これ以上勇者は増やせない。なので冒険者から勇者の連れを選ぶことにする。
・勇者の連れにふさわしい活躍をしてもらい、誰もが認める勇者パーティとなる。
・そしてそのパーティで魔王討伐に向かってもらう。
ということだ。結構いい案だと思った。さすが宰相。
「しかし冒険者での1つの団体の最大人数は5人です。これはこれ以上増やすと数の暴力として、正確な実力が測れないからです。なので変更できないものとして扱ってください。そしてその5人で大きな成果を何とかあげてください。ただし不正は絶対に行わないでくださいね」
そうして説明は終わった。
その後、光正の一声で、すぐに5人組を作ることになった。まあ普通に仲良し組で集まるのが大半だ。
「えっと?私たちは私に拓人、白神に清水よね?」
人数の関係でここだけ4人組だ。ただ人数と聞くと、どうしても守のことを思い出してしまう。ただいつまでも引きずってられないと、思考を切り替える。
「そうだなぁ、光正さんが無理だからなぁ。まあ話したことないやつと組むよりいいかなぁ」
清水は相変わらず緊急時以外は頼れないスローペースだ。
「後はじゃあもう解散でーす。騎士団で教えられることは教えたので後は冒険者たちに揉み解されてくださーい」
そう言われて、まさかと思ったが、これで騎士団の訓練は終わりらしい。これからは冒険者として実践あるのみだそうだ。
「くれぐれも、復帰不可能な大怪我だけはしないでくださいね〜。逃げは恥じゃないですよ〜」
そう言われて、最後に訓練は終わった。
「ねえ拓人。これからどうする?白神と清水も」
とりあえずこれからについて考えることにした。
あの人の言い方だと、これからこのお城にはしばらく帰ることができないと言われたような感じだ。
「まずは…宿を見つけよう。その次に情報を集めなければならない。僕たちはまだ何も知らないからね。そして人脈を築き、信頼を得て、勇者に選ばれるんだ。幸いにも所持金で金貨をいっぱいもらったから、これを使い切る前に冒険者として収入を安定させよう」
さすが白神。もう結構計画立ててるんだなぁ。
「でもよぉ、そんな簡単に有名人になれるか?」
拓人の言うことももっともだ。芸能事務所にいても花咲かない芸能人の方が多いのが現実だ。
「結構いけるんじゃないかな?なんてったって僕たちは“異質”な集団だ。注目は自然と集まるんじゃないかな?」
確かにそう考えるとそうかもしれない。注目を浴びるだけの特徴があれば、それだけ有名になる。
「というわけで、まずは休もう。宿は…まあそこそこのとこでいいか」
そう言われて、宿に向かったのだった。
…宿が見つからなくて夕方まで右往左往してたのは秘密である