14話 遺跡の支配者
「それにしてもなんで魔王軍は俺に接触してきたんだ?」
もう迷っているということに慣れてしまった守は全く関係ないことを考え出す。
魔王軍の何とか様には隠さずに自分が魔王を倒そうとしている勇者だったということを話している。それなのに怒るでもなく迎え入れるとはどういうことだろうか?
「まさか俺を拷問して情報を引き出そうとしている?」
そんな事しなくても全部話すのに…なんて思いつつ歩を進める。
「いやもしくは自分を生け贄に…?」
あー怖い怖い、と思いつつ歩いていたからだろうか?
いつの間にか目の前にはそれはそれは巨大な扉があった。
「なんだこれ?」
とりあえず周囲を見渡してみるが、この扉以外何も無かった。
「おかしいな…」
そう、何も無いのだ。それまで通ってきた道も、自分が今立っているであろう地面も、陽の光を遮っている天井も、全てがなくたっていた。
「とりあえず…逃げるか」
身の危険を感じたので、すぐさま扉とは真反対方向に歩を進める…が、
「ついて来やがる…」
扉と自分が一定以上離れないようだった。
ここに来てやっと守は危機感を覚える。
「これは入るしかないか…」
自分の体が浮いたような錯覚を覚えながら、扉へと歩を進めるのだった。
死滅の迷宮。1度入ったものは生きて帰れないと言われる所以。その一端を、守は感じることになるのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…!!」
そして扉の中に入っていった守は、その身を伝うような”死”に驚く。自分が死んでいたからおそらく耐えられたのだろうが、死を体験したことないものでは耐えられないだろう。
(なんだこれ…休まらねぇ)
しかしそれ以外には今までと同じような道が続くだけであり、扉に入る直前のような不可解な空間になることもなかった。
(しかも戻れなくなっちゃってるし…)
自分が通ったはずの扉は振り返った時には消えていた。
(しっかしここは分かれ道もなければ生き物すらいなさそうだなぁ)
そう思いながらしばらく歩いていると、目の前にでっかい空間を見つけた。
(どこだここ)
なんて疑問に思った瞬間…
「ほう…客人が来るのは久々じゃのう…」
と言いながら目の前に骸骨人…どころではなくその最上位種族である、骸骨魔者であった。
「誰だお前!」
その者が自分に友好的ではないと瞬時にわかった守はとりあえず相手について聞くことにした。
「ほう、ワシのことがわからんのか。これだから若者は…」
「なんだとぉ!」
なんだこいつ。突然嫌なおじいちゃんみたいになるじゃん。
「ワシは聖魔導の最も優れた存在が1人であった元“第1魔導者”アルルベイシャンじゃ!!」
だから誰だよ!
「もう質問はないな!ならば...今からお前を殺す!」
「...!!」
そう言われた直後、先程とは比べ物にならないほどの殺気を感じた。それは自分の身が動かなくなるほど。
「死ね!死滅終焉黒渦!」
そして現れたのは、生きるもの全てを死へと追いやる巨大な渦ができていた。
「ワシは人間であった頃は魔力量はそこまでであったのじゃ。ただこの生きるものを殺す魔法を極めた結果、ワシは強くなったのじゃ」
そうして渦が無くなった。
「スマンの、若い者よ。この先に行かせる気は無いからのう…ただもう少しお話はしたかったのう…」
しかし話すぎれば殺すことに躊躇いを感じるかもしれない。だから一撃で葬ったのだ。
...ただし、守は…
「...今なにかしたのか?」
既に死んだ身なのだ。なので全てを死に追いやる魔法も、彼にとっては目眩しでしか無かった。
「なぜ生きておるのじゃ!」
ここへ来てアルルベイシャンは焦りを覚える。今のは自分自身の最強魔法なのだ。それを余裕の表情で受けられたので訳が分からないと混乱する。
「なるほど...お主は己の精神力のみで生き残ったのか…ならこれでどうじゃ!粉砕重射!!」
今度は物質的に破壊を選択した。ただこのような魔法をアルルベイシャンは使ったことは無いのだ。それはつまり...
「...うっわびびった!」
その弾は守から大きく逸れていた。
そして守もここで気づく。
(こいつ俺のこと殺しに来てるなぁ )
明らかに殺意のある攻撃に平和の選択肢はないと悟った。そしてゲームのテンプレを思い出す。
(魔法使いで骸骨人なら近接の殴り込みに弱いはず!!)
そう決断して、すぐさま近づこうとするが...
「アホめ!かかったな!」
そして地面から特大の岩が突き出す。それをもろに守はくらってしまう。
「ぐわあああああ!!痛ってぇぇぇぇ!!」
当たり前のように吹っ飛ばされた守はのたうち回ることになった。
(不用意に近づいちゃあ行けないのか…)
なんてことを考えていると...
「ここなら当たる!粉砕重射!!」
(やべ!)
そして必殺の弾丸が守に向かっていくのだっった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ここか...」
ようやく遺跡に着いたオセルトは、迷わず入っていく。
「間に合えよ...アイツに殺される前に...!」