表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/102

12話 パレード

時は遡る…


視点:光正


「勇者様、どうぞこちらへ」


そう使用人に言われて入った部屋にはソフィア王女がいた。


「お久しぶりでございます。勇者光正様。実は頼みがあるのです」


そう言って取り出したのは、おそらくこの国周辺の地図だった。


「勇者様の情報がどこかに漏れてしまいまして、ここから北の地オースティン帝国、その真南のジャリス皇国、そして東のヒノシン陽国から情報を出せとうるさいのです」


そして返答させるまもなくまくし立てる。


「ですので、勇者様のためのパレードにあなただけで出席させて頂きたいのです」

「なぜ自分だけなのですか?」


当然の疑問だ。自分たちクラスメイトは全員が勇者として扱われている。それなのに自分だけが勇者のパレードに参加などまるで他の奴らが勇者じゃないと言われているようなのだ。


「なぜなら、勇者の情報漏洩を必要最低限にとどめるためです。勇者が複数人いると知られれば、他国から勇者を分けてくれと言われるのは目に見えて分かります」

「なるほど。つまり僕たちのことを守るためと?」

「そういうことです」


勇者の情報を出さずしてクラスメイト全員を守ることは出来ないので、少しの情報と引替えにクラスメイトを守るという決断をしたのだと光正は思った。


「パレードは7日後です。このことを皆さんに説明しておくように」


そう言われて突然の呼び出しは終わった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「…ということで僕が代表としてパレードに出てくるよ」


光正は言われたことを言われた通りに話した。


「さすが光正さんっす!みんなの代表として頑張ってください!」

「…まあちょっとずるいなぁとは思いますけどね」

「まあそう言うなよ清水。これもみんなを守るためさ」


光正の人望が厚いのか、反対意見は全く出ずに話はまとまった。


「ただ僕がいない間に火事が起こっていたそうじゃないか。怪我人はいないか?」

「大丈夫です。みんな無事です」

「そうか、よかった〜」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


…パレード当日


「「「「勇者様の御成でございます!!!!」」」」


近衞騎士が声をそろえてそう言うと、城門がゆっくりと開き、中から巨大な台車が現れた。


「「「「「「ワー!!!!!!」」」」」」


これには国民も大盛り上がり。まあ自分の国を救ってくれる勇者様のご登場なのだ。盛り上がらない方が不自然だろう。


「僕の名は光正!勇者光正である!」

「「「「「「ワー!!!!!!」」」」」」


またもや大歓声。これは光正の人望とカリスマがなせる技なのか。

そして台車がゆっくりと動き出す。後の光正がやることといえば…


「勇者様ー!こっち向いてー!」

「こっち!こっちよー!」


という要望に応えて笑顔で手を振っているだけでいいのだ。

そして光正は気づいてしまった。


「あの路地裏の人ずっと僕を見てくる…」


そして直感を信じて、自分の身を隠すようにしてみると…


「チッ」


と言って去っていった。


(あれが女王様が言ってた他国からの刺客か…)


女王は、勇者様のお披露目なので他国は必ず探りを入れてくる、ですので気づいたらすぐに身を隠すように、と言った。


(この国を守るためにはこうするしかないんだ)


と思い、その刺客への罪悪感を紛らす。



そうしてパレードは終わった。


「なあ光正!パレードどうだった?楽しかったか?」

「まあ楽しかったよ」

「さすが光正さん!いつも輝いてます!」


城へ戻った瞬間クラスメイトから質問のマシンガンが飛んでくる。ただ光正にとっては、それが至福の時間なのだ。それは、勇者として振る舞うよりも。


(この時間がずっと続くといいな…)


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


視点:紗羅


(いいなぁ、パレード楽しそうだなぁ)


最近になって自分のことを見てくる粘っこい視線が無くなって、やっとストレスから解放された紗羅は、純粋にパレードに参加できた光正のことを羨ましく思っていた。


「なあ沙羅、パレードって俺たちは出られないのか?」

「勇者がいっぱいいると分かったら他国は1人ぐらい分けてくれ、とか言い出すことが予想されるらしいわ」

「なるほど」


そうしていたら突然もう死んでしまったクラスメイトの1人、石松守のことを思い出して、少し寂しく感じる。犯人探しなど分からなすぎてとっくの昔にやめており、今は自分自身の力と向き合っているのだ。


「ねえ拓人?あんたの力って対象の”力”がなんとなくわかるんでしょ?」

「どうした突然。まあそうだけど」

「なら私のことを視てくれない?」


閃いたのは拓人の力は人によって見え方が違うということを利用して、自分がどういうものかを見分けようとしたものだ。拓人の力は、例えば騎士団長だとウネウネが見えたが、光正だと光って見えたからだ。


「いいぜ。…えーとなんかすごい沸騰したお湯みたい」

「何よそれ…」

「俺に聞くなや」

(いやいや自分の力でしょうが)


それにしても分からない。クラスメイトのほとんどが自分の力をわかっているのに自分だけわからないのが納得いかないのだ。


(結局人を色で判断できるだけなのかしらね?)


まあ分からないものは分からない。そう割り切るしかないのだ



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ