64話
模試やらなんやらがすごくて投稿出来ませんでした、、、
周りを見るが、港以外の出入口はやはり無いし、壁は登れそうにない。飛んでいけたとしてもおそらく通報などをされてしまいそうだ。
「このまま港行くんじゃダメなの?」
「いやいやこんな危険な森からやってきた人間なんて一瞬で通報からの牢屋行きになるぞ」
そう、一応ここは黄昏の森で危険な場所なのだ。特に依頼などを受けずに立ち入ることはほぼ禁止されている。よって普通に港へ行けば逮捕されるだろう。
「いやー、来たはいいけど困ったね。ここに馬車が通っているならまだ何とかなったかもしれないけど、よりにもよって海路しかないから潜入とかもできないし…」
泳いだところでどうするのかという話だ。海から泳いでやってきたなんて非現実的だ。普通に怪しまれそうだ。
ならばどうするか...
「うーん、あとは騒ぎを起こして混乱に乗じて入り込む、とか?」
例えば突然地震やら津波が来れば冷静ではいられないだろう。その混乱に乗じて入り込めば怪しまれずに入国できるというわけだ。遠くから見た感じ身分証さえあれば何とかなりそうだ。そしてその身分証は冒険者カードが...
「さすがレクス!それなら適任が...」
「ちょっと待った!フィーアって身分証とか持ってる?」
「え、なにそれ」
これは困った。身分証がなければ入国したとてだ。いやまぁそんな使う場面もないと思うが、面倒事に巻き込まれた際自分の身分を証明するものがなければ大変だ。
「なんかないのか?こう...カード的なのとか」
とりあえずそれっぽいものを出させるしかない。フィーアが過去に何をしていたかは知らないが、もしも人間社会にいたとしたらそういうものも持っているはずだ。人間社会にいたらだが。
「うーん、こういうのとか?」
そして差し出されたのはサビサビで何が書いてあるか分からない鉄製の物体だった。
「...なにこれ」
「700...いや800年前くらいかな、私が人間社会に潜ってみた時に貰ったやつ。たしか...ギルドカードって言うんだっけ?」
ギルドカード、という言葉に覚えは無い。ただサビサビの鉄に物体にしか見えないが、これがもし人間の街で貰ったものならばきっと使えるだろう。たぶん。
「よし、まぁやってみるか。もしかしたらあっさり入れるかもしれないし」
「おーけー。じゃあ早速やろう!”オクターン”、よろしくね」
そう呼ばれて出てきたのはいつしかのタコだった。
(なるほど)
要はオクターンに暴れさせればいいというわけだ。それに人間社会では”海獣”として恐れられている存在ならば混乱必至だろう。
「よしいけ!ただし見せるのはいつも通り足だけね!」
「!」
オクターンは声を発することが出来る訳では無いが、言葉は伝わるようだ。指示されたその小さなタコは海に浸るにつれだんだんと大きくなる。やがて10メートル程にまで巨大化したあと、颯爽と海に中へ潜っていった。
......十数分後。
「お、来たかな?」
少し遠目から見てみると、タコ足が次々と船を襲っている。ただしかなり手加減されており、一隻も沈んではいなかった。まぁ側面が凹んだりするのはしょうがない。諦めてもらおう。
「いいね!私たちも行こう。今なら港はかなり混乱しているはずだからね」
ふと来てみれば港の上では海獣の情報を知ったものが次々に伝え、港は大混乱に陥っていた。逃げ惑うもの、泣く子供、どこかの宗教なのか、祈りを捧げるものなど様々であり、作戦は大成功であった。そうとなれば早い方がいいだろう。整備されているギリギリまで近づき、人の目をかいくぐって一気に入り込む。幸い港側面まであの高い壁がある訳ではなく、意外とするりと入れた。ただ警備の目はあったのでやはりオクターンに混乱させる作戦は成功だ。
「よっしゃ、あとは...」
1度入れば簡単だ。
「ひぇぇぇ〜」
目立たない...かつ不自然ではない程度に悲鳴をあげつつ逃げ惑う。フィーアからはなんだこいつという視線を向けられたが、変に冷静なのもおかしいだろう。つまり周りと同じように叫びつつ、かつ目立ちすぎぬようにそそくさと逃げるのが正解だ。
横でフィーアがなんだこいつという視線を向けている気がするが気にしないでおく。
「よし、まぁこれで何とかなったかな」
そしてある程度街の中心地まで走り切り、特に問題もなく(?)入国することが出来た。いやまぁちょっと裏技というか犯罪というかな気がするが、まぁよしとしよう。
「オクターンのことはどうするんだ?」
「ああ、オクターンなら私の命令に従うからいまは大人しくさせてるよ。また後でこの国を出る時についでに回収していくけどね」
そう言われて気がついた。外に出る時はどうするのだろうか。この国の出入口は港しかなく、そしてそれは海に出るためだ。そしてそうなれば船員もついてくることになる。そんな時に悪魔界へ行けば行方不明だのなんだのと色々めんどくさいことになりそうだ。
「どうやってこの国を出るんだ?」
「転移門を繋ぐだけだよ。どうやらこの国は全体に特殊な結界が張られててね、この結界内だとレベルの高い魔法は使えないっぽいんだよね」
使えないんかい。
「いや、そこは何とかするよ。だからまぁあとは肉と食料と...うん、そんくらいかな」
何とかできるらしい。
それにしてもなんで観光気分で旅をしたらこんなことになってしまったのだろう。なんて考えてても仕方が無いので、いまは大人しくフィーアに従って、街の混乱が落ち着いた時を見計らって肉やらの買い出しに出るのだった。