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10話 情報

(ああ、いい人生だったなぁ)


振り下ろされる鉄球のような拳を前にして、自分は死ぬのだろうと思った。当たり前だ。

…ただし彼、いや彼女が人間ならばの話だが。


ドスッ!

(ぐあ!痛ってぇ!)


その拳は地面を陥没させるほどの威力があり、それをもろに食らった守は人間なら1発で木っ端微塵だろう。

だが、今は骸骨人(スケルトン)なのだ。だから痛い程度ですんでいるのだ。


(俺は…死んでない?)


そういち早く気づいたのは本人の守だ。本能的に今程度の攻撃では自分は死なないと悟ったのだ。

そしてそれは自信に変わる。


(俺ワンチャン勝てるんじゃね?)


敵の攻撃で死なないということは、ゲームで言うチート状態なのだ。そうと分かれば、耐久して少しづつ相手を削っていく方針に即切り替わる。


「グオ?」


そして死ななかったことは向こうにとっても想定外だったようで、警戒するうように距離をとった。


「ハーハッハッハ!その程度の攻撃で俺を倒せるなど思い上がりにも程があるぞ!」


とりあえず自分にはまだ余裕があるとみせて、時間稼ぎをする。


(さて、死なないとわかったからいくらでも考える時間はあるな…攻撃はかなり痛いけど)


相手は圧倒的なスピードとパワーを持っている。そして自分はそれをどうにかして掻い潜らなければならない。


(…無理じゃね?)


いくら死なないとはいえ、攻撃は普通に痛いから出来れば当たりたくない。でも自分はあいつのスピードもパワーも上回れない。不死のチートでも、相手に攻撃出来なきゃ意味ないのだ。

そうこうしていると、痺れを切らしたのかもう一度突っ込んできた。ただしっかりとみていたので、今度は余裕を持って回避できた…はずだったが。


「うぐ!」


しっかりと避けた先に蹴りを入れられた。


(こいつ戦い慣れてやがる!)


今ので気づいたが、相手の動きを予測し、的確に攻撃をする。その知能はまさに人間レベルであり、本能で生きる動物ではなく、知性を持つ動物なのだ。ということは…


「おいてめぇ!さっさと本当に姿見せろ!そのグロい姿は偽物だろ!」


こいつはグオオオオオオ!しか言っておらず、さらに、直進的な行動しか見えないようだったが、実際このような計算された動きができる時点で、こいつに知能があるとみて間違いないのだ。ただそうなら最初からそうしておけばよかったのにしなかった。

それはつまり、最初に感じた"仮の姿"の感覚はあっていて、今のこいつは偽物だと思えたのだ。

そしてその答えは…


「よく気づいたな、貴様は魔力探知がままならないと聞いたんだが…」


正解であった。

そしてそのグロいから体から細マッチョなカッコいい姿へと変えた。


「俺の名はオセルト。セルフィカルト様の忠実なる"影"だ」


影ってことは隠密系の人だろうか?そういう人って肌を隠すイメージがあるんだが…


「ご丁寧にどーも。俺は守だ。あとはそのセルフィカルト様に聞いとけ」


というかなんでそんなすごそうな人がここにいるんだ?それに俺との戦いは終わったのか?出来れば続けてくないんだが…


「ふむ、戦い足りぬというのか?」

「んなわけねーだろ!」


こいつ表情読むの上手そうに見えて全然出来てないじゃん。真逆のこと言いやがった。


「貴様に一つ質問がある。お前は女か?それとも男なのか?」

「はあ?何を言って…」


…って俺今の姿俺じゃねぇ!


「あっははぁ私ったらドジ~てへぺろ☆」

「下手な芝居ならよそでやりたまえ」


ですよね…

こうなったら全部話すしかないのか?ってか向こうには確か嘘は見破られるんだよなぁ。正直に話すしかないのか…


「俺は1度死んでいる。そこから骸骨人(スケルトン)になって色々あったらこうなったんだ」


自分でもよく分からないところは端折ったがいいだろうか?


「なるほど、だから俺の攻撃に全て耐えきって見せたのだな」


…これは理解してくれたのか?


「で、その色々というのを話してもらおうか」


やっぱだめかー。

そして自分の身に起こったことを自分が理解できたところまで話すことになるのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「なるほどな、だからセルフィカルト様は俺に押付けたのか」

「ひでえ言い方だな」


ここまでに自分の過去まで全てを話した結果、こいつは意外と話の通じるやつだとわかった。

「ひとつ言っておくが不死種族(アンデット)だからといって無敵ではないぞ。聖なる攻撃は全て効くし、魔力の通った攻撃や、精神への直接攻撃は普通に死ぬぞ」


無敵じゃなかったのか!?

…よくよく考えればそうか。死なない種族があったらきっと今頃そいつが天下を取ってるだろうしな。


「そうなのか、ありがとうな、オセ…ロ?」

「…オセルトだ」


ダメだ名前が覚えらんねぇ。


「そうか、ありがとうな、オセルト」


なんでこんな覚えにくい名前なんだよ…


「貴様は…マモルと言ったか。貴様はこの土地についてどこまで知っている?」

「ここは…」


王城で図書館通いして情報をせこせこ集めていたが、いざ言ってみろと言われるとなかなか口に出ないものである。


「…森の中?」

「…そんなもの誰にでもわかるだろ」


ですよね…


「じゃあこうしよう。俺よりも先に魔王城に着け。そうしたら教えてやる」


無理ゲーじゃん。道が分っかんねーもん。


「ちなみに魔王城は向こう側にある。さあ頑張れ。俺は5分後に出発するぞ」


そして始まった突然のレース。オセルトさんの遊び心だと思いたいが、もし負けたらの話はしなかった。よく分からない賭けだが、とりあえずやるからには全力でやると心に誓った。



「貴様には情報の大切さを存分に味わってもらうとしよう」


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