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2-①

 リシャールに連れられ、ロザリーは学園の奥深く、ノワールクラスの生徒のみが立ち入れるノワール館の敷地に足を踏み入れる。


 そこはブロンクラスの生徒たちの過ごす校舎と何もかもが違う場所だった。


 まず教室の広さからして違う。部屋はブロンクラスの教室よりもずっと広々としているのに、机の数は各教室に十台ほどしかない。限られた生徒しか入ることができないからだろう。


 そしてあちこちに休憩室が用意されている。休憩室と言ってもブロンクラスの校舎にあるような、簡単な造りのものではない。大きなテーブルに高級そうなソファがあり、部屋中に絵画やら花瓶やらが飾られている贅沢な場所だ。


 ほかにも一流のシェフが従事する食堂に広々としたパーティーホール、舞台観賞用の小劇場など、ノワール館にはブロン館にはないものであふれていた。


 あまりに煌びやかなその光景に、ロザリーはただ呆然とするしかない。


「気に入ったかい? 今日から君もこのノワールクラスの生徒だよ」


 リシャール王子は楽しげな様子で語りかける。ロザリーはただこくこくとうなずくしかできなかった。 


 リシャールに連れられて校舎を回りながら、ロザリーはおそるおそる尋ねる。


「あの、あまり校内に人がいませんけれど……皆さんどうしているんですか?」


「あれ? 知らなったかい? ノワールクラスの生徒は家の事情で学校に出てこられないことも多いから、休みが多めに設定されているんだ。今日はその休暇日」


「ああ、そうだったんですね」


「ああ。私も公務で学校に来られないことがよくあるんだが、そういうときは休暇日に代わりに登校すればいいから便利だよ」


 ロザリーはなるほど、と感心した。ノワールクラスにはいろいろとノワールクラス独自のルールがあるらしい。



「次は寮に行こうか。しかし女子寮に私が直接案内するわけにはいかないな。クロエ」


 王子は一人の女性を呼ぶと、ロザリーを寮の部屋まで案内するように言いつけた。ロザリーとそれほど年が変わらないように見える彼女は、王宮の侍女らしい。ロザリーの案内のために連れてきてくれたのだそうだ。


「すまない。ロザリー。私はこれから生徒会室に行かなくてはならない。何か困ったことがあればいつでもクロエを通して言ってくれ」


「はい。ありがとうございます。殿下」


「リシャールでいいよ。その敬語もやめてくれて構わない。同い年なんだから」


 ロザリーがぺこりと頭を下げると、リシャール王子は爽やかな笑みを浮かべて言った。


「ええと、それは……」


「嫌かい?」


「恐れ多いというか」


「まぁいい。少しずつ慣れてくれ。では、また明日。会えるのを楽しみにしているよ」


 リシャールはそう言うと、背を向けて去って行った。ロザリーは頬を赤く染めてその後ろ姿を見送る。


 自分は本当に王子に気に入られ、ノワールクラスの生徒になったのだ。


「では行きましょう。ロザリー様」


 クロエがロザリーに向かってにこやかに言った。ロザリーはええ、とうなずくと彼女に連れられ寮に入っていった。


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