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07 戦場
大きな戦では、王子自らが戦場に向かって、兵士を激励する事がある。
この国では戦争は珍しくない。
だから、王子が戦場に向かう頻度は高かった。
そういう時、私は王子の傍に立って、護衛の任を果たす。
けれど、王子の身分を考えると、近づくわけにはいかない時もある。
大事な話だから人形は同席させたくない。
などという時は、傍にはいられないのだ。
王子は私を同席させようとしてくれるけれど、私がそれを断るのがいつもの流れ。
王子の足でまといにはなりたくなかった。
その時もそうだった。
けれど、王子の傍を離れて、内密の話をする二人を静かに待つ。
部屋の外で待つこと数分。
銃声の音がして、私は焦った。
「フィル様!」
部屋の中に入って、すぐに王子の前に出たから、二発目は当たらなかった。守れた。
「ササ!」
代わりに私の顔にひびが入ってしまったけれど、些末な事だ。