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04 フィルリオン・ガルディオン・ディスト
王子の事は、フィル様と私は呼んでいる。
公式の場ではフィルリオン様だが。
日常で過ごしている時、私が「マスター」と呼ぶと「フィルと呼べと言っただろう」と言う。
視線の先で、王子は果物やの店主に声をかけて、果実を絞ったジュースを購入している。
きちんと小銭を払って。計算も間違っていないはず。
その手つきはなれたものだ。
彼は、よく市民にまぎれて行動しているので、そういった普通の人間の行動で困る事はない。
常識知らずのお坊ちゃん、というわけではないのだ。
一般市民にまぎれて行動するその癖を、悪癖だという人もいるが、私にとっては好ましい性質だと思っている。
「ササもいるか?」
「私は機械ですよ。マスター」
「だから、俺はフィルだって。知ってる。言ってみただけだろ」