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01 人間の代わり
この世界では、何百年も戦争が続いていた。
あまりにも長い間、戦いが起こりすぎて、この世界の大地が血で染まっていなかった日はなかった。
戦いが起こってから、状況が落ち着くまでに、世界中で多くの人が死ぬ事になった。
それで少しは人間は学んだのだろう。
人間同士が争って、戦争で血を流すのは馬鹿げている。
そんな意見で世界の国々はまとまった。
だから、人間は死ななくなった。
その代わり、人形が戦うようになった。
大戦末期。とある異界から来た一人の人形師が、戦闘人形を発明した。
そのノウハウが、世界中に広まったため、人間は人形を身代わりにしたのだ。
だから、人間が死ななくなった代わりに、多くの人形が死ぬようになった。
人形は物だ。
生きていない。
魂も存在しない。
痛みも感じない。
けれど、涙は流す。笑い声をあげる。
人形には感情があった。