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第二話 非情な現実と俺の力

 お互いのステータスを確認したあと、俺たちはステータスの情報をアドルフさんに報告するよう王様に言われた。

 もちろん俺は気が進まないので、目立たないようにひっそりと静かにしている。

 あわよくば俺のことはスルーしてくれと願っていた。


 しかし、現実は非情だ。

 光輝を始めとして天道さん、智恵美さんの順番で呼ばれた。もちろん最後は俺だ。

 ちなみに王様たちに自己紹介などはしていないので呼ばれ方は「左の勇者様!」とかそんな感じだ。


 俺はアドルフさんの許まで足を進める。

 頭の中が真っ白だ。気分が悪くて吐き気がする。

 そんな俺を光輝は心配そうに見つめていた。


 「それでは最後の勇者様。ステータスをお見せください」


 「……はい」


 俺はアドルフさんに自分のステータスが書かれた青いディスプレイを震える指と共に見せた。


 「……なるほど。ありがとうございます」


 アドルフさんは俺のステータスを確認すると、ただ一言そう言った。

 そして俺たちに背を向け、王様の腰掛けている玉座へ足を進める。

 俺たち四人のステータスを報告しに行くのだろう。


 ただの旅人である俺にとっては胃の痛くなるような話だ。

 正直なところ勘弁してもらいたい。


 そんな俺の気持ちを知らないアドルフさんは王様の耳元まで行き、小声で結果を報告した。


 天道さんや智恵美さん、それに光輝のステータスを知ったであろうときの反応は笑顔であった。


 しかし、俺のステータスを知った際に俺へ向けて、失望を多く含んだ視線を俺に向けた。


 まったく、勘弁してくれよ。

 俺にそんな目を視線を向けられてもどうしようもない。


 王様はアドルフさんになにやら耳打ちをしていた。

 そのあと、王様は再び笑顔に戻った。

 おそらく俺の今後の扱いとかその辺りだろう。


 「勇者様たちはいきなり別の世界に連れて来られて、さぞ疲れたであろう。部屋を用意してあるので、今夜はゆっくり休むと良い」


 王様は四人のメイドを呼びつけると、一人ずつに俺らの世話を任せた。

 ちなみに俺のメイドさんはクールビューティーという言葉が似合う凛々しい人だった。

 雪のように白い髪と透き通るような青い瞳がその印象をより強くしていた。


 俺たちは各々のメイドに自分の部屋に案内されて、自然と解散した。


 「こちらがマコト様のお部屋となります」


 木製の開き戸を開けると、そこは縦横六メートルほどの広さがある部屋であった。

 一人で住むには十分過ぎる広さである。

 机や椅子、ベッドなど生活に必要な物もすでに揃っている。とても快適そうだ。


 「ありがとうございます。気に入りました」


 「チッ……それは良かったですね。お役目が終わったので私はこれにて失礼致します……」


 え、ええ……俺、今舌打ちされたぞ……異世界のメイド怖すぎんよ。


 一刻も速くこの場を離れたいのか、クールビューティーなメイドさんは足早にどこかへ行ってしまった。


 「お腹でも痛かったのか……? まあ、一人の方が俺も落ち着けるし良いか」


 俺は一人で納得すると、備え付けられているベッドに腰掛けて今後の方針を考えることにした。


 「とりあえず、ステータスをもう一度確認しておくか」



 名前:鈴木 誠


 性別:男


 年齢:十八歳


 職業:旅人


 筋力:C


 守備:E


 魔力:D


 俊敏:A


 スキル:雷操作



 最初は職業と微妙かもしれないステータスに不安を感じていたが、光輝が出鱈目(でたらめ)だっただけで俺のステータスは普通なのだと天導さんと智恵美さんのステータスを見てわかった。


 「それでも俺が一番弱いことには変わりないんだけどな……」


 俺以外の三人は勇者スキルというものを所持していた。それは恐らく勇者にしか扱えないものだ。勇者スキルにどのような効果があるのかはわからないが、役に立つことは間違いない。

 俺にはそれが無い。


 再び沈む気持ちを抑え、俺は気になっていたことを確認する。


 「雷操作……か」


 玉座の間では職業にばかり意識がいってしまい見落としていたが、俺にも戦う力はあるのだ。

 職業が旅人でも異世界から召喚されたことには変わりない。


 「どんな力なんだ……?」


 いや、どんな力かは雷操作という字を見ればわかる。力の使い方がわからないのだ。


 悩みながら青いディスプレイに書かれている雷操作という字を見つめていると、唐突に画面が切り替わった。



 雷操作:自身の魔力を電気に変換したり、周囲の電気を操ることができる。



 「んおッ!!」


 これは驚いた。どうやら文字に意識を集中すれば、それの詳細が見れるらしい。


 俺のスキルは電気を操れるようだ。しかし、俺はとんでもないことに気付いてしまった。


 「智恵美さんと被ってるよこれ……」


 智恵美さんは火と水、土と風に聖。そして雷の六属性の魔法を使えるはずだ。


 そう。智恵美さんは雷魔法が使えるのだ。

 電気という点ではまったく同じスキルと言えるだろう。


 しかも智恵美さんはそれに加えて、雷魔法以外の五属性の魔法も使えるときた。

 完全に俺の上位互換だ。


 「いや、待てよ?」


 さっきも述べた通り、智恵美さんは合計で六属性の魔法が使える。

 しかし、それら全てを満遍なく使いこなせるようになるには、それ相応の時間が掛かるはずだ。


 智恵美さんが雷魔法だけを重点的に練習するという可能性もあるが、それは限りなく低い可能性のはずだ。

 せっかく手に入れた魔法。全部使ってみたいと思うのが人間だろう。


 それに、智恵美さんはこういう状況に憧れていた節がある。

 俺もそうなので何となくわかった。


 以上の理由から智恵美さんは始めに全ての魔法を一通り練習するだろう。

 そこからメインに使う魔法を絞っていく可能性もあるが、おそらくかなり先の話だ。


 なら俺がすべきことは一つだ。


 「智恵美さんの使う雷魔法よりも上の領域へ到達する……!」


 そうと決まれば練習だ。

 俺は早速、電気を出してみることにした。

 少し怖いがやらなければ先へ進めない。


 「確か……こういうのって、イメージが大事なんだっけ?」


 俺はスタンガンをイメージしてみた。


 まず、左右の人差し指の先を五センチほど離して向かい合わせる。

 スタンガンの放電部をイメージした形だ。


 そして最後に魔力を指先に集中させ、スタンガンの放電をイメージし放出する。

 魔力を使うのは感覚的に出来た。おそらく召喚の影響だろう。

 召喚前の自分にはなかった奇妙な感覚がある。きっとそれが魔力だ。


 魔力を放出させると自分の指先からバチッっと弾けるような音を立てながら高電圧の電流が放出された。

 電流は左右の指を循環しているので、周りに被害はない。


 「スゲェ……!これが俺の魔王に対抗する力か……でもちょっと弱くね?」


 ちなみに俺が自分の電気で感電しないのは、おそらく魔力が使用者を内側から守っているからだ。

 人間の脳と同じで無意識にリミッターを掛けているのだろう。


 「とりあえず、もっと練習しないとな。電気を弾丸みたいに飛ばすこともできるはずだ」


 しかし、そういったものを使うにはこの部屋では狭すぎる。

 ここまで来る途中に窓から城の中庭が見えた。そこに行こう。


 「誰もいないな……」


 俺は今、城の中庭にいる。

 広さは小学校の校庭くらいだろうか。かなりの広さだ。


 「ここなら思う存分、力が使えそうだ」


 俺は早速、近くにあった太い木に向かって電撃を飛ばしてみることにした。


 「威力は……さっきのスタンガンの放電くらいでいいだろう」


 始めは慣らしだ。弱い威力の方がコントロールも容易い。

 俺は木から三メートルほど離れてから、木に人差し指を向けた。


 放電の工程は部屋でやったことと何も変わらない。魔力を指先に集中させるだけだ。

 違うのは人差し指を対にしていないという点だけである。


 指先に集まった魔力が電気を生成する。

 それを球状に形成していき、バチバチと弾けるような音がし始めたところで前方に放つ。

 これを一分ほど掛けて行った。


 球状の雷はゆっくりと木に飛んでいく。

 飛んでいると言うよりは浮遊していると言う方が合っているかもしれない。


 十数秒の時間を掛けて、球状の雷は木に当たった。

 衝撃を与えられたことで電気が霧散する。


 「……問題は威力だ……どれどれ」


 俺は電気が当たった箇所を見るために、木へと近づいた。


 「うーん。……微妙だな」


 木の表面が少し焦げているだけだった。

 直撃すれば痛ッ! となるかもしれないが、殺傷能力があるかと問われれば首を傾げてしまうだろう。

 これでは虫しか殺せない。


 それから俺は来る日も来る日も、雷操作の修行に明け暮れた。

 こんにちは! 前回に引き続き、最後まで読んでくださってありがとうございます。次はもっともっと面白い作品にできるように、努力を重ねていきたいと思う所存です。

 誤字・脱字等、気になった点あればお手数ですが、ご指摘いただければ幸いです。


 それでは次回もよろしくおねがいします!

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