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第一話 俺だけ勇者じゃないって、それ本気で言ってる?

 初めまして! この度は無数に存在するネット小説の中から私の小説に興味を持ってくださり、ありがとうございます。

 初めての投稿なので至らない点はあるかと思いますが、そのようなことがあれば、お手数ですがご指摘いただければ幸いです。

 というか前書きの最大入力文字数って二万字までいけるんですね。これに一番驚いたかもしれません。

 俺の名前は鈴木 誠(すずき まこと)。どこにでもいる普通の高校三年生だ。

 普通ではないところといえば、友達が少ないという一点だけだろうか。


 この十八年間で出来た友人と呼べる存在は一人だけ。

 幸か不幸かそのおかげで人間関係というもので悩んだことは一度もない。


 「おーい、帰るよー」


 丁度良いタイミングで俺に話しかけてきたこのイケメンこそが、俺の唯一の友人である勇峰 光輝(いさみね こうき)だ。


 「んあ……もうそんな時間か」


 気が付けば、もう夕暮れ時だ。雲から赤々と煌く夕日が顔を出している。乾いた空気と寒さは俺たちに冬だということを執拗に教えてくる。


 教室に残っている人間は俺を含めた四人だけだ。


 一人目は俺の友人の光輝。身長は俺と同じくらいだ。もう十年と少しの付き合いになる。腐れ縁って奴だ。


 こいつはとにかく人が良い。お人好しなのだ。その上、イケメンである。モテないはずがない。友達も多いし、正直なところなぜ俺と一緒にいるのかわからない。

 ちなみに光輝の将来の夢は教師らしい。


 二人目は教室の隅の机で読書をしている知識 智恵美(ちしき ちえみ)


 あの人は授業中以外は常に読書をしている。今だってそうだ。きっと放課後になったことにも気付いていないだろう。

 そんな彼女はこの三年間、常にテストは満点。成績も一位を維持し続けているというかなりの猛者だ。

 長い前髪と今時珍しい瓶底眼鏡が特徴だ。


 三人目は教室の黒板を掃除している天導 聖(てんどう ひじり)


 彼女はクラスのアイドル的な存在だ。それは俺達のクラスだけに止まらず、他の学年や他校にまでその名声は轟いている。


 もちろん絶世の美少女というのも理由だが、何より性格が良い。光輝にも負けないほどのお人好しなのだ。


 そんな彼女だが、今は日直の仕事である黒板の掃除をしている。黒板の上の方も綺麗にしようと懸命に手を伸ばしている姿は微笑ましい。


 「……誠、なんか気持ち悪いね」


 「……酷くない? 俺なんもしてないぞ!」


 おっと。天導さんを微笑ましいという気持ちが外に出てしまっていたみたいだ。しかし、唐突に人が良いというキャラ設定を変えようとしてくる光輝に俺は度肝を抜かれる。

 だが、大丈夫だ。こんな態度は俺にしかとらないはず。


 「まぁ、いいや。帰ろうよ」


 光輝は仕切り直しとばかりに、俺に再び帰宅を促した。


 「そうだな。俺、帰ったら残ってる課題しねぇといけんねぇんだったわ」


 「誠、昨日もそれ言ってなかった?」


 「ほら、俺って夏に事故に遭ったじゃん? その分の課題とかが残ってんだよ」


 俺は今年の夏休み明けに学校の始業式へ行く途中で落雷事故にあった。すぐに退院したが、その間の授業は出られないし課題はできないしで最悪だった。

 

 高校生一年生、二年生と成績の悪かった俺にとっては、まさに崖っぷちだ。一年生、二年生で留年しなかったことが奇跡である。さすがの俺も留年だけはしたくない。


 「あー、ご愁傷様……誠って成績悪いもんね。そろそろ留年かかってるんじゃない?」


 「うるせえなぁ。俺だって三年からは頑張っとんじゃい!」


 「僕としては小学生の頃から頑張ってほしかったよ……」


 そう言って光輝が教室の引き戸に手を掛けた瞬間、教室の床を全て覆うような巨大な紫色の魔方陣が俺達四人の足元に姿を現した。


 俺は慌てて周りの状況を確認した。


 天導さんは驚いた拍子に黒板を手から離してしまったのか、チョークの粉で髪が白くなっていた。制服のブレザーにもチョークの粉が付着している。


 智恵美さんもさすがにこの異常事態に気付いたのか、椅子から転げ落ちていた。


 「光輝ッ! なんかヤバい! 今すぐ出るぞ!」


 「え……あっ!」


 光輝は引き戸から手を離してしまっていた。


 次の瞬間、足元の魔方陣が強い光を放った。それと同時に俺の意識は途絶えた。


 「ん~……ここはどこだ……?」


 どれだけ意識を失っていたのかわからないが、俺が最初に目覚めたらしい。俺を皮切りにあの場に俺といた三人も目を覚まし始めた。


 「最高神エルドラド様の使わした勇者たちよッ! よくぞ召喚に応じてくれた! 我々は貴方たちを歓迎しよう!」


 玉座に腰掛けた王様っぽい偉そうな人が大仰そうな声でそう叫んだ。

 周りの大臣や騎士っぽい人たちも歓声をあげて喜んでいる。


 当の俺は状況が飲み込めず、困惑していた。他の三人の顔を見る限り、きっと誰もこの状況を飲み込めていない。


 一つわかるのは、この場所が日本ではないだろうということだけだ。


 玉座まで真っ直ぐに敷かれている金色の縁の赤い絨毯。

 天井に吊り下げられている高価そうな眩しいほどのシャンデリア。

 そして、よく磨かれた鏡のように綺麗な大理石の地面。


 俺の知る限り、少なくとも日本にこんな建物はなかったはずだ。

 それに、どちらかと言えば西洋の建物のような雰囲気だ。

 俺の憶測が正しければ、きっとここは城の中だろう。海外へ行った時にこのような内装の建物を見たことがある。


 「あ、あの! ここ……ここはどこなんでしょうかッ!?」


 俺達の中で最初に言葉を発したのは、以外にも智恵美さんだった。


 「おっと、そうであった。勇者たちは異界の者、この世界のことを説明することが先であったな。……アドルフ」


 「ハッ!」


 王様っぽい人が誰かの名を呼んだ。

 すると、仕事の出来そうな渋いおじさんが王様らしき人の近くに歩み寄った。


 「お初にお目に掛かります。私の名はアドルフ。勇者様たちの教育係を任されております故、今後ともよろしくお願い致します」


 そして始まったのは、この世界に関する簡単な説明だった。話の内容はこうだ。


 この世界は最高神エルドラドが治めるアルカディオという世界であり、その最高神エルドラドは大昔にこの世界を東西南北そして中心の五つの領土に分断した。


 東が俺達のいる人間もとい人族の領土で、西はエルフ族の領土。

 南がドワーフ族の領土で、北は獣人族の領土。

 それから、中心にある巨大な大地が魔族の領土である。その大きさは魔族以外の四種族の領土を足してようやく同等くらいであるらしい。


 ここからがメインなのだが、今から三十年ほど前に突如として憤怒の魔王という存在が人族の領土に侵攻してきた。

 それから今に至るまで十数回の侵攻を受けたらしい。つい一週間前にも人族の領地へ進軍をしてきたようだ。

 未だに人族が滅んでいないのは憤怒の魔王とやらが大したことないのか、はたまた人族が強いのか、よくわからなかった。


 魔王の影響なのかはわからないが、最近は魔物や魔族の活動が活発になり、各地で猛威を振るっているらしい。

 ちなみに魔物と魔族の区別は知能が人間と同等以上であることだ。知能が低い者は魔物と区別される。


 これらを倒しながら侵攻してくる魔王を討伐するために俺らは呼ばれたという訳だ。

 それと、憤怒の魔王の侵攻はニ年に一度のペースで行われるらしい。


 憤怒の魔王がもたらす被害は甚大で、このままでは人族は滅びてしまうと判断したこの国の偉い人は、古の秘術を使って俺たち勇者を召喚することにした。


 なお、異世界から勇者を召喚することはできても、帰すことはできないと言われた。

 理由としては帰還の魔方陣を魔王に奪われてしまっているからだそうだ。

 

 それを聞いたときの天導さんと光輝の顔は蒼白していた。

 光輝の両親はとても優しい人たちだった。この十年間かなり世話になったから知っている。

 その人たちに会えないとなると、込み上げて来るものがあるのだろう。

 天導さんの反応を見るからに、天導さんの両親も良い人たちだったに違いない。


 長くなってしまったが、要は魔王を倒せということだ。

 しかし、日本に帰る理由が留年したくないというだけの俺は正直やりたくない。

 そんな俺の気持ちに呼応するように光輝が異を唱えた。


 「僕たちはまだ高校生……十代の子供です! 正直、魔王どころか魔族や魔物だって倒せるかどうか……」


 今更だが、日本語が通じていることに驚きだ。

 アドルフさんたちの口の動きからして、日本語を話している様子はない。

 あ、と喋りながら、い、と喋ることはできないのだ。

 きっと最高神の加護とかそこら辺だろう。そうでなければこの人たちは腹話術の鬼才か何かだ。


 「そうです! 私たちに戦う力なんてありません!」


 天導さんが光輝の意見に賛同している。

 俺が光輝の代わりに異を唱えても天導さんは賛同してくれただろうか。言わなかったことが少し悔やまれる。

 ていうか、俺ってこの世界に来てから「ん~……ここはどこだ……?」しか言ってねぇじゃん。


 「ご心配ありません。召喚の際、勇者様たちには戦う力が与えられております」


 アドルフさんが俺たちの疑問に答えた。

 アドルフさんの話が本当ならば、俺たちは魔王に対抗しうる力を手に入れているはずだ。


 「なん……だって……」


 俺は驚きと喜びがごちゃ混ぜになったような感情を抱いた。

 智恵美さんなんてそれを聞いてから飛び跳ねそうなくらい嬉しそうだ。きっとこういうシチュエーションに憧れていたんだろう。俺もである。


 「ステータスオープンと念じて下さい。声に出しても構いませんよ」


 俺はその言葉を聞くと、即座に心の中でステータスオープンと唱えた。

 すると、俺の目の前に青い半透明のディスプレイのような物が現れた。



 名前:鈴木 誠


 性別:男


 年齢:十八歳


 職業:旅人


 筋力:C


 守備:E


 魔力:C


 俊敏:A


 スキル:雷操作



 あれ? 俺って勇者じゃない感じなの?


 それを悟った瞬間に俺の全身を嫌な汗がつたった。

 「勇者じゃないから戦わなくて良いんだ! わーい!」と喜べるほど俺は楽観的ではない。


 「なあ、光輝。そっちはどんな感じだった?」


 俺の心にある嫌な予感を払拭(ふっしょく)すべく、俺は光輝に助けを求めることにした。光輝も俺と同じ旅人なら何も問題はないのだ。


 「ああ、今見せるよ……これで見えるかな」


 光輝は俺に自分のステータスを見せるために、三秒にも満たない僅かな時間だけ目を閉じた。

 すると、俺の目にも光輝のステータスがわかるようになった。

 


 名前:勇峰 光輝


 性別:男


 年齢:十八歳


 職業:勇者


 筋力:A


 守備:A


 魔力:A


 俊敏:А


 スキル:聖剣召喚・光魔法


 勇者スキル:先見之明(パーフェクトエイム)


 あ、詰んだ。こいつめっちゃ強い。俺めっちゃ弱い。

 てか勇者スキルってなんだよ。俺にそんな項目は無いぞ。


 嫌な予感が的中し、俺の体から嫌な汗が噴き出す。


 「誠はどんな感じだった?」


 光輝に悪気はない。だが、その言葉によって俺の焦りは更に加速する。

 

 ちなみに、先ほど光輝が行った自分のステータスを他人に見せる行為は俺もできる。

 理由は自分のステータスを見れるようになった瞬間、脳内にステータスに関係する色々な情報が流れ込んできたからだ。

 その情報の一つがこの他格閲覧(パートナーステータス)

 欠点は相手の承認がないと発動できないという点だ。


 「あ、ああ。見せるのは良いんだけどよ……笑わないよな?」


 「あったりまえだろ! 僕たち友達じゃないか!」


 クッ! なんて良い奴なんだ。やはり俺にはもったいないくらいの友人である。


 ……そう思っていた。


 「大丈夫だって! 何かあっても僕が守るよ!」


 もう一度繰り返すが、光輝に悪気はない。俺のステータスを見た光輝は俺を精一杯フォローしようとしてくれている。

 だが、悲しいことにそれが俺を酷く傷つける。


 いや、まだだ! まだ二人いる。話しかけるのは避けたいが、今はそんなことを言っている場合ではない。

 俺は意を決して、天導さんと智恵美さんに話しかけた。


 「あ、あのー。ちょっと二人のステータスを見せてほしいんだけど大丈夫かな? もちろん俺のも見せるよ」


 自分一人だけが勇者じゃないという劣等感を拭い去るために、他人の不幸を願う俺は本当に最低だ。


 「僕にも見せてくれない?」


 俺の覚悟も知らず突然、横から光輝が会話に参加してきた。とはいえ、ぶっちゃけ心強い。てか、こいつ凄いな。何の違和感もなく会話に入ってきやがった。


 「ほんと!? 私達も今、声を掛けようと思ってたの!」


 天導さんが嬉しそうに光輝へ笑いかける。智恵美さんも天導さんに同意するようにコクコクと頭を縦に振っている。俺は? ねぇ俺には何もないの?


 そんなこんなで見せてもらった天道さんと智恵美さんのステータスがこうだ。



 名前:天道 聖


 性別:女


 年齢:十七歳


 職業:勇者


 筋力:D


 守備:B


 魔力:A


 俊敏:C


 スキル:治癒魔法・光魔法


 勇者スキル:無病息災(メディカルチェック)



 名前:知識 智恵美


 性別:女


 年齢:十七歳


 職業:勇者


 筋力:F


 守備:C


 魔力:S


 俊敏:C


 スキル:火魔法・水魔法・風魔法・土魔法・雷魔法・光魔法


 勇者スキル:明鏡止水(シンキングタイム)



 ああ、終わった。俺の異世界生活は始まる前に終わってしまった。


 ちなみに俺のステータスを見た二人も光輝と同じような言葉を俺に投げ掛けた。

 ゆえに、俺は心に深い傷を負うこととなった。

 わかったことは、俺は勇者ではないということだ。要するに厄介者である。


 俺は異世界でのこれからに深い絶望と焦りを感じることとなるのであった。

 こんにちは! この度は無数に存在するネット小説の中から私の小説に興味を持ってくださったうえに、初投稿の第1話を最後まで読んでくださり、感謝の極みです。

 前書きと述べることは同じになってしまうのですが、至らない点や気になった点がありましたら、ご指摘いただければ幸いです。

 初投稿ということを言い訳にせず、日々精進できればと思っています。

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