今、大変なことが起きているんです
お久しぶりです。覚えていますか?
実に1カ月以上更新に間があったわけです。もしかして2カ月近いかな。
長い間未更新ですみません。サボってました。
今回は、初登場のキャラクターが出てきます。といっても直接会うわけではないのですが。ここから先しばらくは重要になってくるキャラの登場です。乞うご期待を。
話を忘れてしまったという方は、ちょっと前の話からお読みください。
ポチの頭の中↓
こいつ今ハンターとか言ったよね。え、まじ頭くるくるぱーじゃね? どう見たってそんなのできそうにないよね。もしかして自分のことカッコいいとか思ってんのかな。ハンターに向いてるって思ってんのかな。そのヘナチョコこんにゃくみたいな体で何がハンターだっつうの。長年運動してなさそうなのが体見りゃ一発でわかるよ。女の子の前で活躍してるとこみせたいのかな? やべー、大草原不可避。こんなやつがハンターになれるぐらいなら俺だってとうの昔からハンターやってるよ。どうせ鹿か何か見つけて逃げ出すぜ。まあいいや、適当にハンターのじじいを紹介しようっと。30分で泣いて帰ってくるぜ。「すみません、転職します!」ってな。想像するだけで面白いぜ。いやー、転生してよかったなぁ。最高のジョーク聞けたぜ。はーはっはっは。はーはっはっは。はー(略)
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ポチは1人で何か愉快なことを想像して、上機嫌だった。最近は来客もなく、暇で暇で寝てばかりいたポチにとって下田の決定は、なかなか刺激的だったらしい。
「了解しました、お客様。ハンターですね、ハンター。ちょうどこの近くの山でハンターをしているリョウ爺さんというご老人がいらっしゃいます。確か年齢は今年で76歳とご高齢ですが、今でも体は若者のようによく動き、大きな獣も易々と狩る大ベテランです。私からリョウ爺さんに連絡を入れておくので、お客様は早速お爺さんの元へ向かってください」
「ありがとうこざいます。わざわざご丁寧に。これで無事職を得られそうです」
本当に「無事」なのかはさておき、下田はポチから手渡された地図に従ってそのお爺さんがいるという山に向かうことにした。
2人は、施設の外に出た。影は長く伸び、太陽はかなり傾いていた。その太陽を背にした先に例の爺さんの山があるようだ。直線距離ではそこまで遠くないそうだが、途中で谷や川があるせいで回り道をする必要があるという。
「これは今日中には着かないかもしれませんね」
じゅげむがため息をついてこう言った。
「えーどうして? そんな遠くにあるようには思えないよ。タクシーか何かで行けばすぐ着けるでしょ」
「……それができれば良かったのですが。実は、そうはいかないようになってしまいまして」
「え? どういうこと!?」
「今、大変なことが起きているんです。この国中の車がことごとく無くなってしまったんです! 自転車も乗用車もバスもタクシーも電車もみんなです。そのせいで移動の際は、徒歩しか手段がないのです!」
下田は大いに驚いた。じゅげむは何を言っているんだ。車がなくなっただって? 下田はじゅげむに説明を求めた。
「というのも、この国の王が国内の車を片っ端から全部没収してしまいまして……」
「えーー! どういうことだよ。なんてことやってんだ、ここの王様は! 何がしたいんだよ。みんな困るだろ。訳わかんねえー! 詳しく教えてよ」
じゅげむは、話を始めた。この国ではおかしなことが起きているそうだ。
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ここは、草原の国クサボーボーの北西部。北の隣国は森林の国キメッチャアルだ。ちょうど国境付近である。
クサボーボー国のゲームボスであるグラスは、国の王も兼ねている。というより、この世界の各領主はゲームボスである。ゲームの腕を磨く傍ら政治を執り仕切っている。
グラスの場合、ゲームを極めようと熱中していたころ、そのままの勢いで前ゲームボスを倒し、気づいたら今の座についていた、という経歴を持つ。彼にとって政治というのは、特に意味を持たない、どうでもいい事柄だった。
当初、そんなグラスが新ゲームボスになったら国が荒れると思われていたが、意外にも彼は国にとって害悪とはならなかった。彼は興味の湧かない政治について一切口出ししなかった。その一方で幸いにも、行政を実質的に担う官僚たちが優秀であった。グラスには、いつもどおり引きこもってゲームをしてもらえばそれでよかった。
しかし、ここ最近グラスのガチャ運が悪い。そのせいか彼の機嫌が良くない。いつもイライラしていて、他人に八つ当たりをする。
グラスは何がなんでも当てたいキャラのために課金を繰り返した。が、一向に当たらず、課金総額は国の財政を圧迫していた。
「国王陛下! これ以上国のお金は使わせません。今月だけで今年1年の予算の8割分の歳出です」
「仕方ないだろ! 排出率80%のキャラなのに、なぜか当たらないんだ。あとちょっとだけだ、もうすぐ当てるから! うわーーーーーーーー!」
「もうやめてください、絶対ダメです! 諦めてください。どうせ☆2くらいのザコキャラじゃないですか!」
大臣はグラスの腕を掴んで訴えた。このままでは財政が破綻して国が滅びる! 責任感ある大臣は必死だった。しかしグラスもまたガチャに必死だった。
グラスは、大臣が制止するのを振り切って、大臣を蹴倒して床に這いつくばせ、頭を踏み付け押さえつけ、ぐりぐりとしばらく押さえつけた後、今度は大臣を蹴り転がして仰向けにして、胸部めがけて渾身のかかと落としを二度食らわせ、大臣の胸ぐらを掴み、床に叩きつけ、大臣の背中に乗っかって、髪の毛を引っ張り、最後に顔面を10発以上拳で殴った。
大臣は痛そうだった。苦しそうだった。哀れだった。前歯が抜けていた。あと肋もやられていた。
グラスは何事もなかったかのようにそそくさと、護衛もつけず邸の外に出た。大臣のせいで気持ちがムカムカする。さっき大臣に腕を掴まれた時の感触が嫌に残る。気分転換でもしようと散歩に出掛けたのだ。
普段グラスは散歩などしない。邸の中でゲームをしている。引きこもりのグラスが外に出るのは実に8年ぶりのことなので、彼の目は外の明るさにすぐ順応できなかった。
「眩しい! ピンピカピンを見てるみたいだ!」
(注)ピンピカピンは光の神である。詳しくは第1話を参照に。
眩しさに目がくらんでグラスはうまく歩けない。彼は視界が不明瞭なまま、ふらふらと公道へ出た。その時だった、彼に悲劇が襲ったのは。
ドォォォォーーン!!!!
一瞬の出来事だった。グラスが公道を走る車と衝突した。彼は宙を舞い、数メートル先に吹き飛ばされて、そこでぐったりと倒れた。来ていた服に血が滲んだ。呼吸はあるものの意識は不明の状態だ。
すぐに彼は病院に運び込まれた。そこで正確かつ迅速な治療が行われ、グラスは一命を取り留めた。次の日の夕方には意識も戻った。
国の要職を担う大臣や官僚たちが、グラスが入院している部屋に見舞いにやってきた。大臣は自分のせいでグラスを交通事故に巻き込んだと思って、部屋の後ろのほうでひっそりと彼を覗き見ている。その時グラスが大臣を呼んだ。
「おい、ゼニゴケ! こっちに来い」
(注)ゼニゴケは大臣の名前である。
大臣は、グラスが横たわっているベッドの前に来た。大臣は怒られるのではないか、とビクビクしている。グラスが口を開いた。
「ゼニゴケ、死ね。殺してやる。死刑だ、死刑だ、死刑だ。もう大大大嫌いだもんねーーー!」
衝撃の発言だった。この瞬間、大臣の死刑が確定した。大臣は、まっすぐグラスの方を向いて何も発さない。ただ自若泰然としていた。この後グラスは続けて言った。
「ただ殺される前にお前に一仕事してもらいたい」
「…………」
「国中の全ての車を壊せ。全ての交通機関をこの国から撤去しろ。俺の目の前からことごとく消し去れぇぇぇぇぇぇーーーーーーー!」
「!!!!」
「そうすればお前の家族までは殺さない」
「……恐れながら申し上げますが王よ、国内全ての車の没収とは一体何をお考えなのですか! そんなことは、まったくもって正気の沙汰ではございません!」
「なんだと、お前は俺に刃向かうのか。わからないのか! 俺が感じた激痛、苦しみ、怒り、ほしいキャラが当たらない悲しみと喪失感が! だろうな、わからないだろうな、お前にはな! どうせ今日も意味の分からん公務とやらで充実した日々を送っているんだろ。ふざけるな! ここには俺みたいな恵まれないやつもいるんだよ。いつまでたってもガチャを外しまくる可哀想な俺。どうせ運営から嫌われてんだ。グラス様がいるとゲームバランスが崩れるってな。しかもここにきて追い討ちをかけるかのような交通事故。神はどこまで俺に無慈悲なんだ。最低だ。俺は見たよ。自分の体が飛ばされて落ちていくのを、その後記憶はないけど。(中略)だから俺は決心したんだ。もうこの世界から車という車を全て消し去ってやるとな。二度と俺の目に映ることはない」
グラスは愚痴を延々と吐き出した。作者ですら書きつつ(こいつ何言ってんだろ)と感じる始末である。
とにかくこの後、多少のやり取りがあって、この国からあらゆる交通機関が姿を消すことが正式に決まった。グラスの催促もあり、作業は急ピッチで進められた。2週間ほどで国全域で作業がほぼ完了した。
こうしてクサボーボー国から車が姿を消した。
いかがでしたでしょうか?
しばらくはこのクサボーボー国が舞台となります(予定)ので、次回以降もお楽しみに!




