物語だからです。もっと言えば、ハイファンタジーだからです。以上
第2話投稿です!
確か前回後書きで次から課金ライフ始まります、みたいなこと書いてましたが、どうやらそう簡単にはいかなさそうです。
主人公、下田陸くんの理解度に合わせて、この第2話お読みください。仕方ありません。彼は高校では落ちこぼれだったんですから。
「うう……体が痛い。ズキズキする……」
下田は意識を取り戻した。あの不思議な出来事の後から記憶が全くない。気がついたらこの小さな部屋で倒れていた。
実は先程の不思議な人物(光の神ピンピカピン)の手によって下田は本当に転生したのだった。この課金ワールドに。しかも生前の記憶を持って。ただし当の本人はこのことを全く知らず、なぜ生きているのかもよくわかっていなかった。
下田はふらふらしながら立ち上がった。まだ体を動かすのに慣れていないようだ。手がついているのに、その手はまるで他人のもののようで、自分のものとは思えない。
下田は部屋の中を見渡した。非常に奇妙な部屋だ。中から見た様子は物置小屋くらいの大きさだ。中には自分以外何もない。空っぽだ。真っ白の壁、床、天井に大きな黄色の星模様がいくつも描かれていた。
「な、なんなんだ、この部屋。なんだか子どもの部屋みたいで…………てか、ここドアある? どこにも見つかんないんだけど」
この謎の部屋にはドアらしきものはなかった。下田は自分が閉じ込められていると確信した。
「え!! どうやって出るの?」
下田はどうすればいいのかわからず、ただがむしゃらに壁をドンドン叩いた。すると、壁がバキッと割れて崩れて、部屋が崩壊した。下田はなす術なく部屋の下敷きになった。
が、さっき死んだ時とは違う。下田は生きていた。意識もあるし、体も動かせるし、かすり傷一つすらなかった。
それもそのはず。部屋の素材となっていたのは、おそらく厚さ3センチくらいの発泡スチロールだった。
「あーびびった!! また建物崩れてきたよ! さっきそれで死んだばっかりだから、マジでトラウマだよ!」
下田にあのときの恐怖の記憶が蘇った。びくびくしている。しかし、すぐに自分が怪我もなく無事であることに気がつき、安心して頭上の発泡スチロールを取り払った。
崩れた部屋の周りには外の風景が広がっていた。どこまでも続く青空、その下にはブナやケヤキやカシの木々が立ち並んでいた。ぱっと見たところ、この部屋は森(?)らしき中にぽつんとあるようだった。
「違いますよ、あなたが死んだのは今から16年前ですよ」
不意に下田の後ろから声がした。下田はびっくりして後ろを振り返った。すると、そこには小柄な金髪の少女が立っていた。
「だ、誰だ! お前は何者なんだ!」
「誰って言われましても私です、としか答えようがありませんね。私です、私ですよ」
「いや、答えになってないし! 名前もわからないし、どういう者なのかもわからないよ!」
「あ、名前ですか! 名前ならありますよ。私の名前は、寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の(中略)長久命の長助です。あなたの案内人です」
下田の頭には?が100個くらい浮かんだ。下田は意識が戻ってから(さらに言えば死んだときくらいから)わけのわからないことばかり続いて困惑していた。下田は少女(以下じゅげむ)に説明を求めた。
「あのさ、じゅげむさん。俺なんかさっきから全然状況が理解できなくて困ってるんだけど、教えてくれない?」
「え、そんなの説明するのめんどくさいんですけど。自分でなんとか理解してください」
「いや、それはないだろ! 俺はともかくこの小説をお読みになってる読者の方がよく話を理解できないよ。これじゃ読者離れが進むだろ!」
「ああ! それは困りましたね。ではいいでしょう。説明しますよ。それはこの話が物語だからです。もっと言えばハイファンタジーだからです。以上」
出た。パワーワード「これは物語です」「ファンタジーです」たとえ前後のつながりが不自然であろうと、突飛押しもなく出てきた概念であってもこれさえあれば、説明ができてしまう。説明しにくいことであってもこれで片付けられる。
「あのね、これじゃ何もわからないから。ふーん、そんなもんなんだ、って言って軽く受け止めてくれる人でない限りよく理解できないと思うよ」
「そんなこと言われましてもね、こっちにだって事情があるんですよ。作者の頭がアイディアに乏しいので、何か困ったらこの言葉を使え、と言われてまして」
「何やってんだよ! あのくそ作者」
「でもそのくそ作者がいなかったら私たちいないわけですよ。それにね、この言い訳がなかったらこの話は1話目から成り立ちませんよ」
「と言うと?」
「普通に考えて肉麻呂みたいな高校生存在するはずがないじゃないですか。あの人の衝撃波が原因であなたが死ぬとかまともに説明のしようがないですよ。それとかあなたが実際に転生したとかも」
「え、ちょっと待って! 俺って転生したの! マジの話なの!?」
「何を言っていらっしゃるのでしょうか。あなたはこの課金ワールドに転生なさいましたよ」
じゅげむは呆れた顔で話した。ここまで状況を把握するのに時間がかかるとそれは本当にめんどくさい。じゅげむは仕方がないので珍しく一から話すことにした。
課金ワールドに転生した下田は、さっきの破壊された部屋に16年間眠っていたこと。じゅげむは光の神から下田の案内人を任された経緯(下田の転生後の新人生をサポートするため)などすべて教えた。
下田は説明を聞いておおよそ理解はできたが、実感がまだ湧いてこなかった。16年間眠っていた自覚も勿論ないわけだ。
「なんで俺はこんなにも長い間眠っていたんだよ!」
下田はじゅげむに尋ねた。じゅげむがこれに答えて言う。
「そうですねえ、眠っていたというより育ったと言う方が妥当ですね。あなたはあの部屋の中で赤ん坊からこの年になるまでいました。意識がないまま成長していたんです。本来転生すると赤ん坊からやり直しなんですよね。普通に子育てすることもできたんですけど、それだと面倒を見るのが私なんですね。誰がそんな手のかかることするかよ、バーカ。というわけで、光の神に頼んでそれ以外の方法を考えてもらいました。それがさっきのあの部屋です」
下田にはますます実感の湧かない話だった。俺はこの世界に赤ちゃんとして生まれ変わり、このままさっきの部屋で育ち続けていた…………?
「なんと言いましょうか、卵のようなものです、あの部屋は。それもちょっと高性能な。あの部屋にあなたをぶち込んでおいて、放っておけばいつか孵化する、みたいな。これもこの話が架空の物語だからですね」
下田は、じゅげむの自分を馬鹿にするような言い方を不満に思ったが、ここは文句を言わないでおこうと思った。なんとなく怒らせると厄介そうだったからだ。
「ともかくあなたは転生したんです。この世界はあなたの課金ライフのためだけに光の神が創りました。ですからあなたが課金ライフを始めないとこの物語が先に進まないんです。いいですか、課金したください。そして真の課金勢、課金王になってください」
下田はまた困惑した。課金王になれって言われても、それがなんのことだかわからないし、何をすればいいのかもよくわかっていない。いや、そもそも課金ワールドって何? まずそこから?がつく。
あっけらかんとした下田の顔を見て、じゅげむが下田に数枚の紙を手渡した。そこには「課金ワールド概要全集 by光の神ピンピカピン」と大きく書かれてあった。
「本来の予定ならあなたが目覚めた時に、これを渡して読んでもらうはずだったんです。これには、この世界のすべてについて載っていますから。でもあなたの理解はくそすぎてそれに至るまでの話を延々としなければなりませんでした。そのせいで間もなく第2話おしまいです。おかしいでしょう! この無駄な回がなかったらもうちょっと早く物語が進んでました。反省してください」
じゅげむに結構怒られた。しかし、下田からしてみれば、そんなことで怒られてもどうしようもない。知らないものは知らないんだから。じゅげむは早く物語を進めたいらしいが、大事なことを抜かして進めるのは良くない。そう思ったが、下田は余計な口出しをせずに適当に謝った。なんとなく厄介そうだったからだ。
「すみません。理解が追いつかなくて」
いかがだったでしょうか?
話としてはほとんど進みませんでしたが、なんとなく物語の方向性が見えてきたと思います。
次話もぜひお楽しみに!




