スキルを使いたい冒険者
初投稿です。
オニキシアス子爵家の三男として生まれたキースは、物心ついた時から将来は楽に騎士か冒険者になるものと思っていた。
10歳になるまでは。
大体10歳になったらステータスの魔法を使えるようになる。
その時どんなスキルを持っているか分かることになる。
10歳になったキースはステータス画面のスキル欄に【スキル】としか書いてないのを見て愕然とした。
後はつまり空白だ。
スキル無しつまり能無しと馬鹿にされる未来しか見えなかった。
だがキースは悲観していなかった。
父上や兄上とのスキルを使った稽古でもそれなりに戦えた自負があるからだ。
本当なら剣術lv.1があれば言うこと無かったけど無ければそれなりに技術で戦えば良いのだ。
だから今まで以上に稽古を頑張ることを決心した。
スキルなどに頼らないように。
もちろん騎士も冒険者も諦める気などさらさら無い。
それから2年が経った。
キースは国立ダータン学園に通うために稽古を続けていた。
兄上は2人とも学園に在学中だ。
今もってスキルは何一つ覚えて無い。
だが父上に剣術lv.1スキル並みの実力はあるとお墨付きをもらっている。
学園に通う3年後までさらに腕を磨かなくてはならない。
相変わらずスキルを覚えないので父上には他の学校に行くよう言われたがあくまで1番自分を高めてくれるために学園には意地でも入りたい。
スキルが無くても圧倒的な力を見せつけて合格する。
入るのが目標どころか成績上位になるつもりだ。
いい加減スキルのひとつぐらい覚えても良いと思うのだがその気配すらない。
周りの同世代は3つ4つスキルを覚えている中でキースは未だに覚えてないのは肩身が狭い。
貴族の子弟の集まりでは侮蔑や哀れみの声が聞こえてくる。
10歳から言われ慣れているから柳に風とダメージは無い。
むしろその声を糧に、稽古の量を増やす。
やった分は身になると信じて。
父上が王都に仕事に行っていて、兄上2人も学園生活。キースの他は母と妹、使用人だけで過ごしていた。
そういう時に限って面倒事はやってくる。
奴らが街の方に現れたら衛兵が始末するのだが
運の悪い事にオニキシアス邸の庭に侵入してきた。
最初に気づいたのはキースだ。
悪意のある気配だったので庭に入ってきた時点で気づいていた。
2階から飛び降りた彼は、狼らしき6つの目の前に立ちはだかった。
キースに実戦経験は無い。
父上、兄上を相手に道場で鍛えた剣が全てだ。
魔物相手にどう戦ったらいいのか?
気がついたら半包囲で3匹に囲まれて逃げ道がなくなった。
闇に目を凝らすと囲んでるのはダークウルフだった。
夜行性で仲間と連携をとる性質で、単体だと大した事ないが群れると少々面倒くさい。
なので正面から敵に突っ込んで行った。
まっすぐと言っても脇を通り抜けてすれ違いざまにダークウルフの首を飛ばした。
その動きはわずか12歳の子供とは思えないほど鋭かった。
一体目を瞬殺、止まることなく邪魔される前に素早く次の行動に移る。
体勢を崩している方に跳ぶ!
袈裟懸けで剣を振る。
これも一撃で倒した。
しかしその間に残りの1匹は真横に回り込み突っ込んで来た。
その行動は予想の範囲だったのだが、速さは計算違い。何とかギリギリでかわすと、完全に無防備な隙を晒す最後のダークウルフを一刀の元に切れ伏した。
<Lv.2>になりました。
抑揚のない女性の声でレベルアップを頭の中に伝えられた。
「やった。ステータスが上がった。これで今までできなかった動きができる」
レベルが上がってすぐステータス画面を見る。今までパラメータ不足で不可能だったいくつかの攻撃パターンが行使できそうだ。
スキル無しとしてはレベルアップしたステータスは命綱だ。
もっとも弱い相手に限るがダークウルフは討伐レベルは個体ならF、群だとEとなる。
3匹しかいなかったためFとEのあいだにだろうか?
これがこれから数え切れないほど魔物を倒した最初の戦いとなった
3年後に備えてレベル上げは必須だと感じた。
読んでいただいてありがとうございます。