6.訪れる別れ《2》
「それで、お主達はここに来たのか」
あれから約3時間かけてゼニアスに、何故ここに来たのかを説明した
予想以上のアホさ加減に、もう何も言う気になれない
「まぁ、悪かったな、勝手に入ったりして」
「気にするな、我も早とちりだった」
バカなのだが、良い奴そうだ
「しかし、人間どもは酷いと思わないか?村や街が襲われたと言えば、すぐに我ら魔族を疑う、でも実際は盗賊だったりするのだ」
「まぁそういう事もあるな」
「そうだろう?実際のところ魔族は基本的に自分達から襲わない、全ては人間の先入観が原因なのだ」
コイツの気持ち分かるぞ、これは人間社会の特徴だな
人間は基本的に先入観がものを言う
例えば、女が“男は中身が重要”と言ったところで、ブサイクと付き合えるかと聞くと、ほぼ100%拒否するだろう
この事でオレ達は意気投合、すっかり仲良くなった
「魔王様!勇者が現れました!」
「なに!?………分かった、すぐに行く」
なにやら面倒な事になってきたようだ
じゃあオレ達はこれでお暇………とはいかないよな
いくら魔族だからと言っても、こいつは友達、だから手伝ってやるか
「オレ達もやってやるよ」
「いや、これは我らの問題だ、我らだけでやる」
……そう言うならオレ達が出る幕じゃないな
まぁオレ達からしたら弱いけど、魔王だ
相当な事じゃないと死なないだろう
「分かった、だけど無理はするなよ」
「問題ない、いざとなったら城の自爆スイッチを使えばいい」
自爆スイッチとは物騒だな
なら押される前に退散しようと思った時、後ろから声が響いた
「見つけたぞ魔王ゼニアス!大人しく死ぬがいい!」
あちゃー勇者が来てしまったな
なら仕方ない…………始末するまでだ
オレはトウヤとアマタツの方へ向き、頷きあう
「お前の相手はオレ達「ポチッ」」
オレの言葉は最後まで続かなかった
変わりにこの場に不釣り合いな音が鳴った
だ、誰だ押した奴は、アマタツか!?まさかのトウヤか!?
ボタンがあるほうへ目を向けると、そこには膝をガタガタ震わせているゼニアスがいた
「「「お前か一ー!!」」」
まさか、こんなに早く押すとは思わなかった
くそ!早く脱出しないと
オレは転移魔法を発動させようとした時には、もう遅かった
『もうまもなくこの城は爆発します……3……2……1……』
「トウヤ!アマタツ!早くオレのところに!」
『0』
そして城は爆発した
オレ達は皆吹き飛ばされた、しかもバラバラに
(トウヤ、アマタツ、死ぬなよ……)
そして視界がブラックアウトする
──ドカァァァァン!
轟音とともに、オレは地面に叩きつけられた
ステータスが異常なほど高いから助かったが、普通なら死んでいた
「ぐ!?ガハッ………」
それでも無傷とはいかなかった
口に溜まった血を吐き捨て、よろよろと起き上がる
「はぁ、はぁ、ここはどこだ?」
周りは真っ暗ではないが薄暗い
木や草などの植物は全て枯れ果てている
なにやらヤバそうな土地だ
とりあえず情報を集めることにした
「【スキャン】」
このスキャンは生物に向ければステータスを見れて、その他のもの、例えば地形なら、その場所の名前はもちろん、付近の国の名前や距離までわかる
とにかく便利なのだが、特別凄い魔法ではない
練習すれば誰だって使えるようになる
「なんだこの反応、これ……ステータスヤバすぎだろ」
そこには驚きの結果があった
邪神ハデス[Lv824]
HP 875600000/875600000
MP 724000000/724000000
SP 518300000/518300000
ここの地域を対象にしたから、この近くにいることは明白だ
(倒しておくべきか、無視すべきか)
オレがここに落ちてきたことは、もう知られてるはず、ならば、いっそ倒してしまおう
一旦トウヤとアマタツ探しは中断だな
「これか………」
外見は普通の小屋だが、床をよく見ると板を取り外し可能で、地下への階段がでてきた
地下にはドームがあり、その真ん中に一人の少女がいた
「待っていたわ勇者、私は邪神ハデス、さぁ戦いましょう」
「…………いや、オレ勇者じゃねえし」
「「…………」」
いきなり勇者なんて言われてもな
オレは転生者で元地球人
そこは譲れない
「ま、まって勇者じゃないの!?本当に?」
「あぁ、さっきもそう言っただろ」
「そんな、ありえない……能力的にそれ以外ありえないはず………」
なにやらブツブツと言っている
コレはちゃんと分からせてやらないとな
邪神の中でもこいつは異常です