5.訪れる別れ《1》
「ひゃっはー!オラオラ、食らいやがれ!」
「トウヤ!動きはオレが止める!アマタツはトウヤに属性強化を、トウヤは広範囲攻撃をしてくれ!」
今日はゴブリン狩りをしていた
あれから数年たった
オレ達のステータスに変化は無いが、スキルや魔法を覚えた
「いくぜ!【シャドウバインド】!」
この技は、相手自身の影から縄のようなものが出て縛る、という魔法である
「いくよトウヤ【属性強化“雷”】」
属性強化はそのままで、雷は全動作の高速化といったところだ
トウヤの体を紫電が纏う
「凍りつけ!【エターナルフロスト】!」
トウヤが地面に刀を突き刺すと、そこからゴブリンを含め辺り一面氷漬けになった
もちろんオレとアマタツは避難済みである
「今日もお疲れ~」
ゴブリン狩りの後、ギルドで報酬をもらい、家に戻ってきた
では、そろそろ説明していこうと思う
何故魔法が使えたり、ギルドが出てきたり、家があったりと、いろいろ疑問に思うであろうがきちんと理由がある
あれは数年前、この世界にきたばっかりのことである
数年前……………
「さてと、まずはあの世界最強(笑)であのステータスだから、オレ達は実力を隠さないと化け物扱いは確実だな」
とりあえず実力を偽るのは絶対に必要だと思う
このままじゃいろんな意味で危ないのだ
「それも必要だけど、力の扱い方も必要じゃないか?」
「トウヤの言うことはもっともだけど、それはすぐに出来ないだろ?」
「じゃあどうすんだよ」
それについては問題ない!既に策は練ってある
「何か考えでもあるの?」
珍しくアマタツが聞いてきたな
だが、安心するがいい、オレに抜かりはない
「大丈夫だ」
というわけで、とりあえずあの人を呼ぶか
「聞きたいこと聞いたしもう帰って良いよ」
こういう事はサリエルに聞けば問題ない
もう今なら力の扱いなんて赤子の手を捻ると同義
ふははは!見える、オレにも力の流れが見えるぞ!
『……………』
「まだいたの?もう帰っていいから」
『う、うう、うわぁぁぁぁぁん!』
サリエルは泣きながらテレパスを切った
テレパスと言うのはオレが勝手につけた名前だ
念話でもよかったんだがな
力については、こんな感じ
次にギルドについてだが、これも大して凄い話ではない
サリエルとのテレパスがあった次の日に、アマタツがこんな事を言い出したのだ
「やっぱり異世界にきたのなら、ギルドに入るべきじゃない?」
「「はぁ?」」
いきなり何言ってんだコイツ、と思った
アマタツはさらにこう言ってきた
「せっかく異世界に来たんだよ?魔法もあるし、モンスターも存在する、ならばギルドもあるはずでしょ?」
「まぁそうだと思うけど」
トウヤはあまり乗り気ではないようだ
オレも当然乗り気ではない
そんなところに入ると、いつオレ達の実力がバレるか分からないからだ
「大丈夫だって、簡単な依頼ばっかり受けてれば良いじゃないか」
やはりオレ達もそういうのに憧れていたのだろう
いつもならそんな理由で納得するはずがないのに、この時ばかりは憧れの方が勝っていた
まぁ結果として、今だにバレていないのだが
ちなみにこの世界のギルドにランクは無いらしい
好きに生きて、好きに死ね、ということだ
最後は家についてだが、これはいたって普通で、依頼を受けて金を貯めて買った
ただそれだけのことだ
それまでは宿屋に泊まってたが、家買ったほうが金かからなくね?という考えになり買ったのだ
というわけで今に至る
「ふぅ……久々に疲れたぜ」
「何言ってんだ、たかがゴブリンだろ?」
「説明って、疲れるんだぜ?」
「?」
次の日…………
今日は特に用事も依頼もない
というわけで2人に何をするか聞いてみよう
「探検とかどうだ?」
この一言が後にあんなことになるなんて、この時は誰も分からなかった
「でかいな、この城」
探検をしている途中に馬鹿でかい城を見つけた
怪しさ満載だが、好奇心のほうが勝り、オレ達は中を散策し始めた
「この扉、怪しくないか?」
「あぁ、怪しいな」
「うん、怪しいね」
というわけでご開帳ー!
扉を開けると、中に一人の男がいた
「また、人間どもがやってきたのか、懲りない奴らだな」
「「「…………」」」
なんだコイツ…………いかにも雑魚そうなセリフを言っているが
「ふっ………あまりの恐怖に言葉も出ぬか」
「「「………だれ?」」」
「な!?我が誰だかわからんだと!我は魔王ゼニアスだぞ!」
なに!?魔王だと?……スキャンしておこう
このスキャンはステータスを見る魔法のことだ
魔王ゼニアス[Lv275]
HP 3400/3400
MP 2960/2960
SP 3170/3170
………おい、世界最強(笑)はどうした
こんなに簡単にあいつより強い奴を見つけたぞ
まあいいか、そんなことより勝手に人?の家に入ったのはまずかったな
「悪い、あんたの家だとは思わなくてな、てっきり空き家かと思ったんだが」
「お?おおぅ、そうか、分かれば良いのだ」
コイツ…………バカだ
オレ達はそう思わずにはいられなかった
魔王は他にもいます
世界最強(笑)……