15.恐怖の化身
「アマタツはどうする?」
う~ん、まぁその内帰ってくるだろから、放っておけばいいんじゃないかと思う
「まずは帰ろう」
「そうだな」
とにかく今は休みたい
魔力を結構使ったから疲れてるんだよな
「【テレポート】」
オレ達(アマタツ以外)は我が家に帰ってきた
まずはベッドに直行だ
「クーも休んでくれていいぞ、この家にあるものは何でも使ってくれていい」
最後にこう言ってから、オレの意識は薄れていった
その頃のアマタツ…………
「はっ!つい感情に任せてしまった…………まぁゆっくり帰るか」
彼は現在、森の中にいた
その時彼の背後に忍び寄る男がいた
1人でいる彼をカモだとでも思ったのだろうか
そしてアマタツに襲いかかろうとした時、アマタツが急に振り向いた
「や ら な い か ?」
その後、行商人が森の中から満面の笑みを浮かべながら出てきたアマタツを目撃している
その時の事を行商人は後にこう語る
「あれは人間の形をした何かだ!笑顔だったが、私にはあれが悪魔の笑みにしか見えなかった……」
それ以来、この森に男が入ることは厳禁とされた
通称“穴掘りの森”の誕生である
「うわぁぁぁ!…………何だ今の夢は……」
何か物凄く怖い夢を見たような気がする
アマタツが男と………ぐっ!頭が!
──うわぁぁぁ
何だ!?……今のはトウヤの声か!
また敵襲かと思い、慌ててトウヤの部屋に行く
そこには汗だくで呼吸の荒いトウヤが布団から転げ落ちていた
「………何やってんだ?」
「わからねえ、だが、何か物凄く怖い夢を見たような………ぐっ!思い出せない!」
まさかトウヤも夢を見ていたとは
その時、アマタツが帰ってきた
「ただいまー」
その声を聞いた瞬間、全身から冷や汗が止まらなくなり、身体が震えだした
(何だこれは!身体の震えが止まらない………オレは恐怖しているのか?)
横を見ると、トウヤも同じ様なことになっていた
「お兄ちゃん大丈夫!?」
「何かあったの!?」
最悪のタイミングでクーとシアが来てしまった
「2人は下がってろ、オレとトウヤでどうにかする!」
最初、オレの言葉の意味が理解出来なかったみたいだ
だが、すぐこの悪寒に気づいたみたいだ
(どうする!?奴はもうそこまで来ているはずだ…………)
恐怖が考えることを邪魔する
──皆どこにいるのー?
「トウヤはクーとシアを連れて逃げろ!ここはオレが足止めをする!」
「それは!…………いや、分かった……」
「2人を頼んだぜ」
そう言うと、オレは奴の足止めをするために準備をしようとしたが、時すでに遅し
奴はもうドアの前まで来ていたのだ
そしてドアが開く………
「もうー皆返事してよ」
「うわぁぁぁぁ!【インフェルノフレイム】!」
「ぎゃぁぁぁぁ!【ミリアドソード】!」
黒い炎と無数の斬撃がアマタツに襲い掛かる
オレ達は油断しすぎてたんだ
アマタツケントという人間がどういうものか忘れていた
(絶対にヤられるわけにはいかねえ!)
何があっても、これだけは忘れるな
“奴を背後に立たせるな”
「トウヤ!死ぬ気で守るぞ!」
「おう!」
「悪かったよ、いい加減機嫌直せよ」
「ごめんってさっきから言ってるだろ?」
何とかアマタツを止めることが出来た
というか既に事後だったようだ
見知らぬ男性よ、あなたの犠牲は無駄ではありません、あなたに助けて貰ったらこの命、大事にします
何はともあれ助かって良かった………
まぁ今はアマタツのご機嫌取りをするよりもやることがあるんだけどな
「皆ちょっと聞いてくれ、これからの事なんだが……」
オレはこれからやりたい事を話した
具体的に言うと、まずはあの男3人組が言ってた覚醒者について
次に、オレの攻撃魔法について
最後に、今後の予定についてなどだ
「まずは覚醒者についてだが、サリエルに聞いてみよう」
という訳でサリエルを呼び出す
『何よこんな時間に……私は今睡眠中よ……』
「サリエル、単刀直入に言う………覚醒者とは何だ?」
『………そう、知ったのね、あなた達が覚醒者であることに』
まさか自分達がそんな厨二な存在だとは思わなかったがな
『覚醒者とは稀に現れるもので、あなた達が言うステータス?が異常に高い者の事よ』
「ふ~ん…………で?」
『で?って何よ』
え!?まさかそれだけ?
『覚醒者については以上、私は帰るわね、あなたが送ってきた3人組のせいで残業しなくちゃいけなかったのよ!?』
既にサリエルの話など聞いていなかった
必要な事だけ聞けたらもう用済みだ
そんなことより次だ次!
「次はオレの攻撃魔法についてなんだが……」
「ソウの魔法がどうかしたのか?」
そうなんだよトウヤ、攻撃系が2つしかないんだよ
今回の襲撃で気づいた、オレの魔法は魔力を食いすぎる
ブラックホールは連発出来ない、1回使えば魔力が満タンに溜まるまで1分程かかる
インフェルノフレイムは連発出来るが、それも3回まで
要するに燃費が悪い
敵が100や1000単位、または広範囲なら最適なのだが、それ以外だと威力が強く効果範囲が広いので使えないのだ
「それで僕達はどうすればいいの?」
「オレの魔法の開発を手伝ってくれ」
三つ集まれば文殊の知恵ってな
今はクーとシアもいるから5人だけどね
「最後の今後についてだが……」
これが今一番重要だ
今回の事で、オレ達が狙われている可能性が出てきた
今回はたまたま相手が弱かったから良かったが、チート持ちの連中が全員弱いとは限らない
「変装とかした方が良いと思うんだ」
普通の日常生活はそのままでいいが、目立つ危険性がある場合、変装などが出来る方が良いはずだ
人間は外見が変わるだけで、迷う生物だからな
「以上で終わりだ、明日から始めようと思う」
「分かった」
「了解」
よし、じゃあ家を直して晩御飯を作るか
え?どうして家を直さなくちゃいけないのだって?
だってさっき思いっきり炎に斬撃を飛ばしてたじゃん
ちなみに家の修理は2時間かかりました
やっと戦闘パートから日常パートに戻ってこれました
彼らは次に何をするのでしょうか