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電撃お題チャレンジ作品集

悪の権化! 魔王さま!

作者: 空ノ

2000字未満の超短編です。

5分もあれば読めます!

「ふははははぁ、今からこの村を洪水で流してやるゾ」

「はい、魔王さま」

 球体に天使のような羽の生えた謎の生物『クー』をはべらせ、透けるほど薄い羽衣を身にまとった十七歳の空舞う少女『魔王さま』は、今日も悪を励行する。

 両腕を天へ伸ばすと、突如発生した雷雲が村へスコールを降らせる。叩きつける雨脚は矢のごとく。そんな中、民家から続々と村人が出てきた。

「おお、なんということだ。これは神のご助力に違いない!」

「二年ぶりの雨だっ! これで水不足からも解放されるぞぉ!」

 村は歓喜に沸く。

「う……そ、そんなぁ」

 空中でたじろぐ魔王さまを、一人の村人の視界が捉える。

「むっ、あれはもしや……か、神様だ! 神様がお姿を現してくださった!」

 地に降り注ぐは大粒のスコール。魔王さまに降り注ぐは感謝のコール。

「ち、違うっ! 私は悪の限りをつくす魔王だぁ!」

「魔王さま、精神衛生上ここはいったん引いた方が」

「うぅ……ふ、ふえぇぇぇんっ!」

 泣く泣く村から離れる魔王さまの悔し涙は、スコールに混じり儚くもかき消されたのであった。


 ◆


「ぐすん……」

「元気を出してくださいまし。次はきっと成功しますよ」

 とぼとぼとあぜ道を歩く魔王さま。ク-の激励も効果をなさず、いつものようにうなだれる。

「クーちゃん、私、どうしてみんなに感謝されちゃうんだろ」

 あるときは山火事を起こし、またあるときは竜巻を起こし――しかしその結果は惨憺たるもの。山の木々は猛毒をはらみ、近隣の住民にとっての脅威となっていた。大型モンスターに襲われ、倒壊して散々となった瓦礫の山をどう処理しようかと悩んでいた住民にとって、すべてを浚っていく竜巻はまさに天恵であった。

 悪の限りをつくしたい。されど運命のベクトルは逆向きナリ。

 そんな魔王さまにチャンスが訪れる。


「マリィ、兄ちゃんが絶対治してやるからな」

 魔王さまの前方から、十歳前後とおぼしき少年が、肩で息をする妹を背負って歩いてきた。

「むむ、魔王さま、あの少女、どうやら重病のようです」

「そうみたいだね……よーし」

 魔王さまは二人に歩み寄り、可愛らしく声をかける。

「どったの?」

「僕の妹、病気なんです。それに――」

「じゃあ私が治してあげる。ちょっと見せて」

 少年は訝しげに思いながらも、わらにもすがりたい気持ちに負け、妹を地面に優しく寝かせる。

「ふはは、かかったなっ! これでも喰らえぇぇぃ!」

 魔王さまはフワリと後ろへ舞い、天高く上げた人差し指を思いっきり振り下ろす。と同時にイカズチ一閃、少女へ垂直に落ちる。

 少女は動かなくなった。

「やりましたね魔王さま!」

「うんっ! やったよクーちゃん!」

 球体であるクーをつかみ、クルクルと飛び回る魔王さま。

「マリィ? そんな、マリィっ!」

 妹に駆け寄り、呼びかけながら何度も肩をゆする少年。

「返事を、返事をしてくれよマリィ! マリィ……」

 少年は魔王さまへの怒りよりも、妹の身に起きたことを理解しようと精一杯だった。声は次第に震え、やがてぽろぽろとその瞳からは涙が溢れる。

「あ……」

「……魔王さま?」

 微動だにしない妹の前でぐったりと肩を落とし泣き続ける少年を見て、魔王さまの心はなぜか複雑に絡まり始めた。

「クーちゃん、なんだか胸が苦しい……」

「えぇっ!? まさかさっき食べた野草があたったのでは!?」

 魔王さまの心はどんどん闇を深めていく。

 そして、頬をつーっと伝う一粒の涙。

「ま、魔王さまが毒草にやられた! すぐに薬草をっ」

 あたふたと動き回るクーを尻目に、魔王さまはゆっくりと少年の方へ歩いていく。しかし突然聞こえた「マリィ!」という少年の声に驚き、そこで立ち止まる。

「ん……あ、おはよう」

「よ、よかった、ホントによかったぁ」

「ちょっと痛いよ、どうしたのお兄ちゃん?」

 少年は、何事もなかったかのように起き上った妹を強く強く抱きしめる。

「マリィ、今お兄ちゃんって……」

「お兄ちゃん、でしょ?」

「奇跡だ……」

 少年は涙をぬぐい、魔王さまの方を向く。

「お姉さん、本当にありがとうございました。まさか病気だけじゃなく、記憶喪失まで治してくれるなんて……ホントに、なんてお礼したらいいか……」

 少年はまた涙を流す。

 おろおろと困惑する魔王さま。

 最後にその兄妹は二人でお辞儀をし、仲良く手を繋いで去って行った。


 ◆


「クーちゃん、私って何だろう」

「魔王さまですよ」

「でも、生きててホッとしちゃった……」

「それもまた、魔王さまです」

 魔王さまは胸に手を当て、しばし考える。

「クーちゃん、難しいこと言わないで」

「申し訳ありません……むっ!? あれはっ」

 目の前に、すでに廃墟と化したような関所が見えた。

「魔王さま、チャンスです! すでにボロボロのあの砦、全壊させてやりましょう!」

「おっけー! じゃ、行くよクーちゃんっ!」


 魔王さまは空を舞い、今日もたっぷりと悪意のこもった善を励行する。

魔王様のキャラはちょっと気に入っています。

短編に昇華させるかどうか検討中です。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんばんはー。拝読いたしました。  可愛かったです!  タイトルからどんな悪逆非道の魔王なのかと思ったら、女の子とは。そのギャップに、してやられました。しかも優しい良い子。クーちゃんに踊…
[良い点] >地に降り注ぐは大粒のスコール。魔王さまに降り注ぐは感謝のコール。 この韻を踏んだ表現が好きです。 >泣く泣く村から離れる魔王さまの悔し涙は、スコールに混じり儚くもかき消されたのであっ…
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