問いかけに答えし者
口裂け女の遺体は安置所へと送られ、解剖されることになった。
翼と夏美は事情聴取を受けることになったが、大塚の計らいで何とか逃れられた。
今までの恐怖で疲れた2人を大塚はそれぞれの自宅まで送り届ける。
「これで事件はすべて解決した・・・今までありがとうな」と大塚は運転しながら2人に礼を言った。
「大塚さん、本当に終わったのかな?」
「恐怖でまだ心の整理が出来てないだけだ。俺も初めて犯人を逮捕した時は眠れなかったよ」
先に夏美が車から降り、しばらくしてから翼も降りた。
大塚も警察署に一旦戻り、事件内容を伝え、それを記載した。
数時間が経ち、大塚は両手を上げ、大きく口を開けあくびをした。
「もうこんな時間か・・・俺も帰るかな」
周りはすでに帰宅している。
上着を取り、部屋の電気を消そうとした瞬間、大塚の携帯が鳴り始める。
「おいおい、誰だよ~」と言いながら電話に出た。
「もしもし」
「もしもし、おつかれさまです、中村です」と死体を送った安置所からだった。
「おーどうした?」と訊ねると震えた声で言ってくる。
「どうしたじゃないですよ・・・何かの冗談ですか?」
「はっ?何がだよ」
「さっき運ばれてきた死体の解剖を行ったんですが・・・」
「何かおかしいことでもあったのか?」
「・・・ないんですよ」
「無いってなにが?」
「脳みそですよ」
その言葉を聞いて大塚は大声を発する。
「はぁ!?そんな訳あるか!!バカにしてんのか?」
「バカにしてるのは大塚さんでしょ?何なんですか、この死体・・・口元も裂けてるし」
「すぐに行くから待ってろ!」と電話を切った。
大塚は冷や汗を流しながら、呆然と立ち尽くした。
そしてある事を思い出すと、すぐさま過去の事件資料が保管されている部屋へと向かった。
ある資料を探し、一冊の本を掴んだ。
それには岐阜県で起きた事件内容が書かれていた。
「もしかして・・・あいつは」
何かに気付いた大塚の元へ再び安置所にいる中村から電話がかかってきた。
「どうした?」と大塚が言うも何の反応もない。
すると突然、電話越しから不気味な笑え声が聞こえる。
「ふふふ・・・ふふふ」
大塚はとっさに通話を切ったと思いきやまた着信が鳴る。
今度は荒木夏美からだった。
ピッと通話ボタンを押し「どうした?」と尋ねる。
夏美は小声で言う。
「私の玄関のドアの前に誰かがいる気配がするの」
「確認はしたのかい?もしかしたら翼君かもしれないよ」
夏美は恐る恐る玄関に近づいて行った。
「どなたですか?」と訊ねても返事は無い。
ただ息遣いやたまに聞こえる物が当たる音など誰かがドアの前に立っている気配はする。
夏美はゆっくりと片目を閉じて、覗き穴で外を見た。
その瞬間、夏美の瞳孔は大きく開いた。
ドアの前にはあの口裂け女が包丁を持ってじーっと立っている。
服はさらに血で赤くなっており、ここに来る前に誰かを殺して来たのが分かる。
夏美が「キャッ」というと口裂け女はドアノブをガチャガチャと扱い開けようとし始めた。
またたまに包丁でドアを叩く音が聞こえる。
夏美は怖くなり、布団にもぐりこんで大塚に状況を説明した。
「とにかく落ち着いて!今から向かうから・・・とりあえず翼君にも電話するんだ!」
夏美はすぐさま翼にも電話した。
そして翼も慌てて家を飛び出した。
布団の中で怯えていると、急に部屋が停電した。
それと同時に玄関の方から聞こえていた音が止んだ。
部屋の中は真っ暗になり、夏美は携帯の液晶画面の光を頼りに電気を復旧するためにブレーカを探した。
手で壁を触りながら一歩づつ進み、上に設置されているレバーを上にあげた。
すると部屋の中にあるすべての電気機器の電源が入った。
その時、夏美は後ろに嫌な気配を感じた。
ゆっくりと振り返ったが後ろには誰もいなかった。
夏美は安心して、ベッドの上に座った。
しばらくして、インターホンの音が聞こえる。
夏美が「誰?」と訊ねると、ドア越しに「俺だよ」と翼の声が聞こえた。
夏美は笑って、玄関に向かいチェーンとドアのカギを開けた瞬間、握っている携帯が鳴る。
着信に翼の名前が出ている。
夏美は目の前にいるのにわざわざ電話してくる翼に疑問を持ちながらも電話に出た。
すると息を切らしながら翼が言った。
「もうすぐ着くからなっ!」
「え・・・」
夏美の体はとっさに凍りついた。
玄関のドアがゆっくりと開く。
「ギギギ・・・」
夏美は恐怖でそこから逃げることが出来ずに開くドアを見つめた。
ドアの先には口裂け女が立っていた。




