HELL
長時間かけ、3人は岐阜県の山奥にあるすでに廃業した精神病棟へと到着した。
外は薄暗く、まだ日は昇らない。
3人とも懐中電気を持ち、金網をよじ登り敷地内へ入って行き、割れた窓ガラスから病院の中へと侵入した。
屋上付近には何匹ものカラスが鳴いている。
地面には大量のゴミやガラスなどの破片などが落ちている。
3人の足音だけが響き渡る。
夏だというのにやけに寒い。
とりあえず前に進んでいるとナースステーションらしきカウンターのある場所に到着した。
そこで色々と物色していると、この建物の地図が出てきた。
大塚はここでしばらく探索すると言い、翼と夏美は地図を見ながらその辺を調べてみることにした。
コツコツ・・・ガチャン・・・コツコツ
一歩一歩進むたびに何かを踏んでいる。
地図と照らし合わせながら、一つ一つ部屋を調べる。
大塚は暗闇の中で一枚の患者の資料を見つけた。
「これは・・・」
その時、大塚の背後を誰かが通り過ぎる気配がした。
振り返るとそこには誰もいなかった。
そして再び手に持つ紙に目を向けた。
その頃、翼達は手術室があったであろう部屋にいた。
「不気味な部屋だな~」
「ねぇ、あそこに何かない?」
夏美が指差した方には、大塚と同じ一枚の資料が落ちていた。
所々血か何か分からないが、シミで見えない箇所がある。
「片野・・・サチ?」
「もしかしてこれってサチコの事か?」
「サチコって口裂け女が日本中で噂になる前に学校で飛び降り自殺して、一部ではサチコが口裂け女じゃないのか?って言われていた・・・」
翼はさらに資料を読んだ。
「この患者は両親の虐待がひどく、ある時両頬に火傷を受けたみたいだ。その手術をしたさいに医師が誤って口元を大きく切ってしまったらしい」
「そのショックで自殺を?」
「いや、これには病院から脱走し、行方不明になっている」
「それじゃ、もともと自殺なんかしてないって事?」
「噂は本当に噂だったってことか・・・」
「それじゃあ、あの口裂け女の正体は一体?」
そこに大塚が合流した。
2人の話を聞いていたのか、大塚は2人を見るなり喋り出す。
「あの口裂け女は私の・・・妻だ」
2人は大塚の言葉に唖然とした。
「え?冗談ですよね?」
大塚は手に持つ紙を2人に見せた。
「こっちの資料には私の妻の事が書かれているよ。どうしてこんなことが書かれているか知らないが、おそらくこれは真実だ」
翼はその資料を受け取り、上から下まで目を通した。
「あなたの奥さんはこの病院で入院していた。しかし、お子さんを亡くしたショックで精神は崩壊・・・感情を表に出す事なく、いつも一点を見つめてじっと生きていた。おそらくお子さんの死は口裂け女に関連してなく、ただの交通事故だった」
「あぁ、そして何をしても言葉を発しない妻にある一人の医師は性的行為を犯していたんだ・・・」と大塚は涙を流しながら語った。
「毎日、毎日犯され、私はそんなことも知らずに妻の部屋から出て来るその医師と頻繁にすれ違っていた。妻は心の中で助けを求めていたはずだ。そして、ある時からその医師は興奮が高ぶり妻を痛みつける様になったんだ。それがエスカレートして・・・」
「奥さんの口元が裂かれた?」
「あぁ、その痛みで意識をとり戻したが頭が混乱しこの病院の屋上から自殺したんだ」
2人が話し終わると夏美が口を開いた。
「生きようとしたが、口元の傷が悪化して感染症で死んだサチコ、そして醜い顔になり精神の病で生きるのを拒絶した奥さん・・・だぶん私にはサチコの生きようとする霊が付いていて、奥さんはそれを今求めているってこと」
翼は夏美の言葉を批判した。
「そんな仮説が通るのかよ?」
しかし大塚は翼の言葉に批判した。
「今はもう何でも信じるしかないだろ?」
3人が手術室から出ると廊下の先に何かがいるのを感じとった。
「ねぇ、誰かいるよ・・・」
地面に落ちている破片が割れる音が徐々に近づいてくる。
大塚はその向かってくる者に言った。
「ともえ・・・なのか?」
それは奥さんつまり口裂け女の正体を意味しているのであろうか。




