幸せですか?
「ところで、みんな幸せ?」
という樹里の質問で、
「ええ、幸せだと思います」
そう即答したのは、博美だった。
「えーっ、博美さん意味のないシングルマザーでかなり苦労させられたでしょ?」
その言葉に思わず大声を出してしまったのは、同じくシングルマザーの経験がある未来。
「そりゃ、人それぞれ幸せの形があるのは事実だけど、電話で明日香にありがとうって心から言われたとき、内心この作者鬼だぁ! って思いましたからね」
「ホント、鬼。ウチでも愛実を転生させるとか他に方法なかったのかって感じ」
それに対して、間髪入れずに相槌を打った恵実に、
「恵実、やっぱりあんた私を追い出したいの」
愛実が噛みつく。
「そんなんじゃないわよ。一生あたしにへばりついててあんた幸せ?」
とついに兄弟喧嘩が始まってしまった。
「私が幸せだって言ったら幸せなのよ。大体普通に生きるなんてかったるいわよ」
「あれは、腎う腎炎であたしの身体がへたってたからで……」
「まぁいいじゃないですか。神様は越えられない試練は人にはお与えにならないんです。
私は衛が信仰を持って天に凱旋して行ったこと、それをきっかけにして周りのたくさんの人に福音が拡がった。それだけで充分私の生に意味はあると思ってますから。
それに、転生はさすがにクリスチャンのたすくさんには抵抗あるんですよ」
博美がフォローに入るも、
「そうですか? ウチでは幸太郎さんと美久さんが異世界に行っちゃってますし、セルディオさんってめちゃくちゃチートな魔法使いですけど」
更紗が首を傾げてそう発言した。
「それを言ったらウチも夢オチとはいえ、テンプレ形式だしさぁ」
全然クリスチャンらしくないじゃんと未来は吠える。
「それがギリギリたすくさんの許せる範囲内なんじゃないですか」
それに対して博美はあくまでも穏やかにそう発言する。
「そりゃまた、中途半端にヘタレだね」
それを聞いて、性格が似ていると作者が言っているさくらは、複雑な顔でそう言った。
「かなりヘタレなのを虚勢張って誤魔化してるが正解だろうね」
だから、絶対にさくらは作者とそっくりなんかじゃないよと恵実はそれに対してそう返した。
「ま、全員が微妙に作者の影を引き擦ってはいるんだろうけどね」
だから、実話だって言われるんだろうなと加奈子がため息をつく。
「そうですか? 皆さんに似てるのは私うれしいです」
容姿まで作者似の翼だけがそう言って喜んでいた。
「さてっと、そろそろ帰りますか」
「そうですね、マイケルさん寂しがっていそうですし」
眠ってしまったリュカの頭を撫でながら更紗はそう言ったが、
「案外男同士、奥さんのグチで盛り上がってんじゃないの?」
と、恵実が水を差す。
「修司はともかくとして、マイケルさんが更紗さんの悪口言うかなぁ」
それを聞いて、加奈子はそう言って首を傾げ、樹里もそれに同調して、
「それ言えてるね。なんかさ、マイケルさんが延々と更紗ちゃんの萌えポイントを語るのを主任が何とも言えない顔で聞いてる気がする」
と言うと、それを聞いた更紗の顔が輝く。
「萌えポイントって……修司さんもダグとかスコップお好きなんですか。それともまさか、ビューティーイリスの方?」
と言った更紗に、
「「いや、そっちの萌えじゃないっ!」」
と、恵実と愛実の双子が思わずハモる。
「じゃぁ、なんの萌えなんですか」
それでも首を傾げる更紗に、
「あーんなこととか、こーんなこととか……リュカちゃん作成秘話とか。あんまり言うとレイティングに引っかかること!」
と、その結果に携わるさくらが更紗に小声で耳打ちする。更紗はそれを聞いて、
「リュカの作成秘話……やだ、それはダメです! 修司さんたちどこに行ったんですか? 私止めに行かなきゃ!!」
と茹で蛸のような顔をして、飛び出そうとする。それを加奈子が、
「ちゃんと後で連れていくから」
と、慌てて引き留めた。
「うん、これは正巳君じゃなくても心配になるわ」
と、しみじみ言う翼に、その場にいる更紗を除く全員が深く頷いたのは言うまでもない。