ヒロイン、全員集合!
-3月某日、日進市「いたくら」-
「いらっしゃいませ!」
加奈子がよく通る大きな声で挨拶したとき、そこにいたのは独身時代のかつての同僚、八木樹里だった。
「加奈ちゃん久しぶり。すごいじゃん、今は私の方がデブかも。お好み焼きながらその体型維持してるなんてすごいね」
「別に。みんながちゃんとやってることだよ。何を食べるかじゃなくて、どれだけ食べるかだからさ」
樹里の賛辞に、加奈子は照れながらそう返す。そこに、お好み焼きの下地を持って修司が現れた。
「おう、樹里っぺ久しぶり」
「主任、お久しぶりです。チナも主任によろしくって」
チナ(千夏)という名前が出て慌てて加奈子を盗み見る修司。加奈子は横目で修司を見ているが、その奥は決して怒っている風ではなさそうだ。修司は軽くため息をつきながら、
「何か、今日はキャラ女子会なんだって? 後、誰が来んの」
と、樹里に振った。
「えーっと、「バニシング・ポイント」の寺内博美さんでしょ。「遠い旋律」の松野さくらさん。
この人は、私の出てる「ハムケ~オジッ ハムケ イッソ」の楓さんのモデルらしいわ。なんでも、涙が止まらなくなるから最初さくらさん視点で続編が書けなくて、その後の話を名前を変えてウチらの脇にふったんだってさ。結局、気持ちが落ち着いたら、旦那さんの視点で書き直してるけどさ。
それから、「Future」の飯塚未来さん。「Love Grace」の佐藤恵実さん。それと、「経験値ゼロ」の櫟原更紗さんだって」
樹里は作者の参加者メモを見ながらそう修司に告げる。
「主人公クラスの女子キャラ揃い踏みか」
修司がそう言うと、
「ううん、「満月に焦がれて」の木村小百合さんは、乃笑留ちゃんに子供さんが生まれたばっかだから欠席。それと、未来さんのお母さん「Parallel」飯塚夏海さんはさすがに呼べないしね」
樹里は夏海のことを何とも言えない表情でそう言う。夏海は、「Future」後半で亡くなっているからだ。
「まぁな。しかし、作者ってこういうとこリアルに拘るよな」
それを聞いて修司がちょっとあきれ気味にそう返す。
「たすくクオリティーだっけ? 高いか低いか解んないクオリティーだよね」
「こんにちは。今日はお招きいただきましてありがとうございます」
その時、「いたくら」入り口がガラリと音を立てて開いた。戸口には小柄の着物女性がいて、その後ろには背の高い外人男性が赤ん坊を抱いて立っている。
「はじめまして、今日はお招きありがとうございます。私、櫟原更紗と申します」
「夫の櫟原武です」
「はじめまして。更紗さん、このメンバーでは最年少だよね」
「はい」
「まだ、ボクちっちゃいから、マイケルさんまで一緒に来ちゃったか。でも、今日は女子会だから、ここまでね。あと、主任もその辺で……」
樹里はそう言って修司のヘラを取り上げた。
「俺は今日のホストなんだから良いだろ」
樹里はそう言ってヘラを取り返そうとする修司をカワして、
「ダメダメ、そんなことしたら加奈ちゃんだけ自由にしゃべれないじゃないですか。この後は加奈ちゃんに指示仰ぎながらウチらでやります。ほとんどベテラン主婦ですから、ご心配なく。
あ、何だったらマイケルさんと一緒にドルチェにでも行ったらどうですか」
と言って、赤ん坊をもぎ取って更紗に抱かせると、男二人を追い出した。
そして、それと入れ違いに未来が到着。
「加奈子さん、お久しぶりです」
という未来の言葉に、樹里は膝を打ちながら、
「そっか、作者がここを会場にしたのって、ただ単に飲食業だからって訳でもないのね。加奈ちゃんたちが一番他のキャラと絡んでるもんね」
と一人納得している。
その内、松野さくら・寺内博美が次々やってきて、約束の時間を少しすぎた頃、最後の佐藤恵実が到着し、この日の「キャラ女子会」が始まった。
予想通り集合するまででこのボリューム。
エッセイを占拠するかどうか悩んだ末、いつものように気に入ったタイトルを思いついたので、分割することにしました。