第六十六話 向こうで会いましょう・・・
前回
時風は海上自衛隊の潜水艦から攻撃を受け、その後に信矢が仕掛けたC4爆弾が爆発した
時風
「早く・・・退艦してください・・・もうじき私は沈みます・・・」
大和
「そんな事・・・出来るわけないだろ・・・時風を一人だけで沈めるなんて・・・」
ヒュウガ
「そうだよ・・・それにここで時風さんが沈んだら時波さんや時はどうなるんだ」!?
時風
「・・・生きる者は必ず死が来る・・・私はその時が来たんでしょう・・・皆さんに会えて本当によかったです・・・」
大和
「そんな事・・・そんな事を言うなよ・・・時風・・・」
大和は時風の言葉に涙を流した
飛龍
「お、おい・・・やばいぞ!早く脱出しないと俺達まで仏になるぞ」!!!
ヒュウガ
「兄さん・・・早く脱出しようぜ」
おやしお
「私はひゅうがに救助のヘリコプターを寄こすように言ってきます」!
そういっておやしおは転移した
大和
「・・・飛龍・・・ヒュウガ・・・先に言って乗組員を急いで避難させろ・・・救命ボートや膨張いかだがあるはずだ・・・急げ」!
ヒュウガ
「で、でも・・・兄貴は」?
大和
「俺も後から行く・・・早く行け・・・信矢の亡骸も連れていけよ・・・」
飛龍
「分かった・・・ちゃんと来いよ・・・行こう!ヒュウガ君」
そう言って二人は走って外に出た
時風
「大和さん・・・どうして、ゲホゲホッ・・・どうして嘘を付いたんですか」?
大和
「・・・やっぱりばれてたか・・・時風一人で逝かせるのは・・・かわいそうだろ・・・俺も一緒に逝くよ・・・」
時風
「大和さん・・・そんなの・・・そんなの駄目です・・・ヒュウガさんや飛龍さん・・・雪花さんに闘気さん・・・天国にいるシナノさんだって悲しみますよ・・・」
大和
「そりゃあそうだけどよ・・・この生まれた世の中で・・・愛する少女を置いてきぼりにする奴はいるかい」?
時風
「大和さん・・・うぅ・・・」
時風は大和の胸の中で泣いた・・・小さな声で思いっきり泣いた・・・
大和
「時風・・・死ぬ時は一緒だよ・・・」
時風
「ヒッグ・・・嬉しいです・・・でも・・・大和さんは・・・生きてください・・・」
時風がそう言うと大和の体は光だした・・・
大和
「な・・・これは・・・時風・・・まさか」!!!
時風
「大和さん・・・私の・・・艦魂としての最後の力で・・・貴方を飛龍さん達の所を行かせます・・・私は・・・貴方に出会えて・・・本当によかった・・・」
大和
「時風!・・・止めろ!頼む、止めてく・・・」
大和が最後まで言おうとしたが、時風が転移させた
時風
「・・・大和さん・・・また会える時までさよならです」
そう言って時風は何処かへと歩き出した
その頃の大和は・・・
救命ボートにて・・・
ヒュウガ
「兄貴・・・」
大和
「オワッ」!?
飛龍
「ん!?・・・大和!どうやって来たんだ」!?
飛龍が後ろを向くとそこには大和が居た
大和
「飛、飛龍・・・ここは」?
ヒュウガ
「救命ボートの上だけど・・・」
大和
「ヒュウガ・・・す、すぐに時風に戻してくれ!頼む」!!!
飛龍
「それは無理だ・・・もう駆逐艦時風は沈む・・・お前まで巻き込まれるぞ」!!!
大和
「無理なんかじゃない!早く時風に戻してくれ・・・時風は・・・一人で死のうとしているんだ・・・せめて・・・最後まで一緒にいさせてくれ・・・頼むよ・・・頼むよ飛龍、ひゅうが・・・俺を時風に戻してくれ・・・」
ヒュウガ
「兄貴!時風さんの気持ちも考えてやれよ!・・・自分の最後の力を使って兄貴を助けたんだろ」!?
大和
「そうだけど・・・そうだけど・・・」
飛龍
「・・・諦めろ大和・・・もう・・・手遅れなんだ」
飛龍が大和に手を当てたその瞬間・・・
バッシャアアアアアアアアアアアアアン!!
大和はボートから飛び降りて泳いで時風に向かった
ヒュウガ
「なっ!?あ、兄貴」!?
飛龍
「大和!何をするつもりだ!?そんな怪我で入ったら死ぬぞ」!!!
大和
「時風は・・・俺の大事な人だ・・・こんな所で死なせてたまるか・・・」
ヒュウガ
「止めろ兄貴!!!その怪我とこの水温じゃあ本当に死んじまう」!!!
飛龍
「大和・・・そこまで時風さんの事を・・・」
それから数分後・・・時風は・・・
時風は艦橋で一人座っていた
時風
「最後は・・・朝日が見える場所で・・・」
そう言って時風が呟いていた時・・・
大和
「時風・・・」
時風
「っ!?・・・や・・・まと・・・さん」?
時風が声のする方向を見ると、びしょ濡れで体中から血が流れている大和が居た
時風
「大和さん・・・どうして・・・どうして・・・戻ってきたんですか・・・?生きてください・・・って言いましたよ・・・そうして・・・戻ってきたんですか・・・」
時風はふらつきながら立ち上がり大和に言った
大和
「・・・俺が大切な人を一人で死なせる男だと思うか?・・・それに・・・この怪我じゃあ俺はもう持たない・・・陸に上がって治療を受けても間に合わない位血が出ちまってるから・・・今もくらくらして・・・」
バタンッ!
大和はその場で倒れた
時風
「大和さん」!
時風が大和に駆け寄った
時風
「大和さん・・・大丈夫ですか」!?
大和
「はは・・・もう体が言う事を聞いてくれないらしい・・・」
時風
「大和さん・・・」
大和
「・・・時風と一緒に死ねるなら・・・俺は本望だよ」
時風
「大和さん・・・私・・・本当は怖かったんです・・・一人で死ぬの・・・」
大和
「時風・・・」
時風
「一人で・・・怖くて・・・怖くて・・・うぅ・・・ヒッグ・・・大和さん・・・大和さぁん」
時風は大和に抱き着いて泣いた・・・大きな声で思いっきり泣いた
大和
「時風・・・外に出れるかい」?
時風
「ヒッグ・・・はい・・・」
そう言って大和と時風はふらふらになっている足で艦橋から出て、艦首の前に立った
すると、東の海上から太陽が登り始めた、2011年の初日の出である
大和
「人生最後に日の出が見れるとはな・・・」
時風
「大和さん・・・」
時風が大和に話かけた
大和
「なんだい・・・時風」?
時風
「こんな時に言うのはなんですが・・・いや、こんな時にしか言えないんですが・・・艦魂と人間は決して結ばれる事はないと言われているんです、ですけど・・・私の大切な事を教えれば、天国でも結ばれると言われているんです・・・」
大和
「・・・その大切な事って・・・なんなんだい」?
時風
「私には・・・この時風と言う名前の他に・・・人には教えられない名前がもう一つあるんです・・・」
大和
「・・・その名前は」?
時風
「私の・・・もう一つの名前は・・・時姫・・・時の風の中に生きる姫と言う意味で・・・時風・時姫です・・・」
大和
「時姫・・・それが・・・君の・・・本当の名前かい」?
時風
「はい・・・私の本当の名前は時姫・・・時姫です・・・」
大和
「・・・これで・・・天国でも、僕らは結ばれるんだね、時姫」?
時風
「あ、いままで通り時風でいいです・・・その事に付いては、わかりません・・・艦魂の中で語り継がれている伝説ですから・・・」
大和
「そっか・・・でも、君の本当の名前を知れてよかったよ、時風」
時風
「はい・・・私も・・・教えれてよかったです・・・」
大和
「時風・・・」
時風
「大和さん・・・」
大和
「向こうでまた会おうな・・・」
時風
「はい・・・向こうで会いましょう」
二人は抱き合い、顔を合わせてキスをした・・・
バキッ!バキバキバキバキバキバキ!!!!!!
その瞬間、駆逐艦時風は艦中央から真っ二つに折れ、深い海の底へと沈んで言った・・・
ヒュウガ
「兄貴ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」!!!!
飛龍
「大和ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」!!!!
ヒュウガと飛龍はボートの上で沈みゆく時風に向かって、泣きながら叫んだ・・・
2011年1月1日、午前7時20分00秒・・・駆逐艦時風、神奈川県沖訳84キロ地点で初日の出の中、沈没・・・
死者 少年2名、負傷者28名
この後、横須賀の海上自衛隊や矢野海上警備会社から救助の船やヘリコプターが駆けつけ、全員救助された
後にこの事件は『日本原爆事件』と言われしばらく世間を騒がした
この事件の後、時風の沈没地域を調べたが、駆逐艦時風と矢野大和の遺体は見つからなかった・・・
その後、ヒュウガもこの捜索に参加した時、大和の備前長船永光と時風の日本刀が浮いているの見つけた
次回へ
時風・・・大和・・・
次回・・・★駆逐艦時風★ある少年の体験★最終話・・・『時の風』・・・ご期待ください・・・
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