3000文字で、小説家を目指すの甘えですか?
佐藤 武は、昔から何をやっても続かない性格、全部がダメで自分の人生なんか中途半端で終わると思っていた。
(友だちもろくにできやしない、我ながらホンマに終わってんな……)
ピピピピピピピピ――
時計のアラーム
そろそろ大学に行かないといけない時間、
あまり偏差値の高い大学ではないが、
大学卒というブランド名を取りに行くために通っている。
そして、その日常を進めるアラームがまた朝になってから、鳴り出した。
♢講義
「地球の環境において、ダイオキシンとは……」
世界で一番長い時間、ただ楽と聞いたから履修登録を済ませただけの講義。
「そして、焼却の過程で……」
目が段々とたるんで、視界がぼやける。
気が付いたら、講義は終わっていた。
さっきまで遅かった時間は、
あっという間に加速をし、
自分以外の存在が二倍速に見える。
この謎の現象は何だろうか……
「佐藤君、今日サークルきますか?」
後ろから聞き覚えがある声がした。
「会長……予定も何もないので参加する予定です」
「良かった!!」
話かけてきたのは、影山 雫 執筆サークルの会長をしている。
レンズの大きい眼鏡に、性格とは真反対のピンク髪をしているのが特徴だ。
髪色は、友人から無理やりされたと笑っていた。
なんとも、彼女らしいと言えば、彼女らしいのかもしれない。
「あ~そろそろ、次の講義に行くからまた放課後ね」
ピンク色に染めた髪をなびかせ、彼女は颯爽と走って行ってしまった。
♢
放課後
123号室へ、長い廊下を歩いて向かう。
ここは、普通の講義でも使われる教室、部員数が少ない執筆サークルはまだ自分たちの活動部屋を貰えていないのだ。
そこで、普通の教室を使うという、何とも悲しいことをしている。
「お疲れ様」
「お疲れー」
「お疲れ様です」
このサークルには嫌気がさしてならない。
たるんだ空気感、そして……
「タケルン、何で怖い顔してるんだよ~」
「もともと、この顔です」
「ちぇ、可愛げのないヤツ」
僕の頬に人差し指をぐいぐいと押しつけくるこの女は、
四つ上で一浪目の先輩、秋山 実。
黒髪ボブで、いつも何かしらの研究に没頭している。
はっきり言って、苦手な人間。
浪人した理由も、タイムマシンを作っていたら履修登録をし忘れたと話していた。
そんなことで、執筆サークルのメンバー、僕を合わせて3人が集まった。
少ないと思うが、これが現実だから仕方がない。
今日も僕たちはこの人数で活動を続けている。
思い返せば、あの時の勧誘を断ればよかったのに、僕のバカ。
♢★♢★♢★♢★♢★♢★♢★♢★
つい一年前の春、入学式を終えた僕は、サークルの勧誘活動を見ていた。
『テニスサークルどうですか?』
『いやいや、大学は笑いあってこそでしょ!お笑いサークル見てってや』
『茶道部、日本の伝統を肌で体験しよ!』
どのサークルも、僕の心には響いてこなかった。
というよりかは、興味がなかった。
そんな時に、木の下に奴がいた。
秋山 実、彼女は僕を見るなりニコッと笑顔を向け、変な装置に身体をねじ込んだ。
『『少年、いいところに来てくれた!これは、宇宙が私たちを結びつけるために与えてくれた機会なのだよ。機械だけにね、ワハハハハ』』
何を言っているのかが分からなかった。
多分、誰だってコイツが何を言っているのか、理解できないと思う。
「ちょっと、あなたは誰ですか?やめてください」
「いいから、いいから。この中に入って」
そして、強制的にドラム缶ほどのスペースの、乗り物に押し込まれた。
中は暗くて何も見えない、そして、何も説明もなく外側から鍵を掛けられた。
「少年!歯に力を込めて、そのレバーを私の声と同時に押し込むんだ」
この声に、皆の注目は集まった。いや、それどころではない。
大学の教授たちまでが押し寄せて、なんだなんだと覗きに来たのだ。
「じゃあ行くぞ!3、2、1、GO」
彼女の掛け声のもと、僕は力いっぱい前にあるレバーを引っ張った。
ボスン――
すかしっぺのような音だけが響いた。
「うわ~~~また失敗か~~~」
彼女の残念そうな声だけが、暗いスペースの中で聞こえた。
秋山が、外側から入り口のドアを開こうとした時、もう一つのレバーに僕の足が当たった。
そのレバーは、奥に押し込まれると……
ドン――
と、衝撃波が体を襲う。
そこからの意識はない。
次に意識が戻ったのは、自分の部屋だった。
♢
ピピピピピピピ――
いつもと変わらない時間。
(なんで僕は自分の部屋に?)
(さっきの、変な女は?)
その時は、なにが起こったのか理解ができなかった。
それは、後になっても分からない。
その不思議な体験から、彼女たちへ接触を図るようになったのが、サークルへ入るきっかけになった……
♢
僕は大学に着くなり、あの女、秋山を探した。
「見つけたぞ!この前はよくもやってくれたな」
「この前?私と君が会うのは今日が初めてだが、誰かと人違いしていないか?」
そのしらばっくれた顔は、見間違えることは絶対にありえない。
そもそも白衣を着た人間は、この大学には浮きすぎている。
「こんな白衣を着てるやつ、見間違えるほど僕はバカではない!」
彼女との口論は、10分も続いた。
そこで終止符を打ったのが、影山 雫。
「ちょっと、ちょっと。二人とも落ち着いてください」
「しずく~コイツ変なんだよ。急に、怒ってきて怖いよ~」
(?!)
(怖いのはこっちだっつ~の、急に変な乗り物に押し込まれて)
そこから雫が双方の話をまとめてくれた。
「ふむふむ、佐藤さんは雫の変な研究材料に使われて怒っていると……」
「そうそう」
「雫はそんな研究に巻き込んだ覚えがないけど、タイムマシンを研究しているのは事実……」
「これは、どういうことだ~」
雫は双方の意見をまとめたのはいいが、脳内がパンクしそうになっている。
最終的に2時間が経過した。
この長い戦いは、結局……
「多分、夢じゃないかな……そうだよ‟夢“だ」
雫のあっけない言葉で幕を閉じた。
「わかりました。それで、手を打ちましょう」
内心、納得なんかしていなかった。
あれは確かに現実だったから。
けどそうしないと、いつになってもこの話は終わらない。
僕は歩いて去ろうとした。
「ちょっと、ちょっと待って!!!!!」
「何ですか?」
「サークルまだ探してる?よかったら、執筆サークル入らない」
不思議な話かもしれないが、これが彼女たちとの出会い。
そして、僕が一番後悔している経験だ。
あの時、断っとけばよかった。
♢
『今日はこの辺でペンを置こうかな』
僕は執筆サークルに入ってから、小説家を目指すようになった。
多分、雫の言葉が大きい。
文字を書く楽しさを知ってしまったからだろう。
しかし、小説家を目指すのが、長続きするか分からない。
文字数だって3000文字程度しか書けていない。
(はぁ~、我ながら情けない)
とりあえず、この学校で起こった不思議な体験を文字で書いてみた……
この後の展開は、僕でも理解できない。
「まぁ、小説なんか書いたことないし、初めはこんなもんだろう」
「どれどれ……」
僕が椅子に座っている背後から、小説を二人が覗き込んでくる。
「私、こんな変な女じゃないんだけど!!」
秋山が顔を赤くして訴えてくる。
(いや、十分変だろ)
なんだかんだ言って、彼女たちと会話するのも楽しいのかもしれない……
ピピピピピピピピ――
遠くから、自分の部屋に置いてある時計のアラーム音がした。
「何か聞こえない?」
僕は首を横に振り向いた。
けど、そこには誰一人の姿も…………ない
ピピピピピピピピ――
最後まで読んでいただきありがとうございます!
「この後の展開気になる!」
「続き読みたい!」
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