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神の住処  作者: 藤野艾林
3/8

私は銃を撃ち、十年前の弟を殺した(中)

中年男は銃を構え、十年前の記憶が脳裏に浮かんだ。


それは彼が一生忘れられない光景だった。


十年前、戦争が始まったばかりの頃、彼は偵察兵として前線へ赴いた。


その年、彼は23歳。弟のサイモンは17歳。


両親は戦争で亡くなり、弟はこの世でただ一人の肉親だった。

彼にとって、弟こそが全世界だ。

当時の彼はただ、戦争が早く終わり、弟と穏やかな暮らしができることを願っていた。


だが、ある偵察任務で、すべてが変わってしまう。


まったく同じ光景。ただ時は十年前、共にいたのは弟だった。


二人は砲撃を受けた敵陣地で、生存者がいないか探す任務を負っていた。


辿り着いた場所には屍が転がり、今日と何ひとつ変わらなかった。


「パス兄さん、僕たちが見つけた生存者って、どうなるんですか?」

サイモンが尋ねた。


「陣地の後方へ送られる。その後の処遇については、俺も聞いたことがない」

新兵だったパスにも、その辺りのことは分からなかった。


「この前、こっそり見ちゃったんだ。

捕まった生存者たちって、結局また戦場に送り出されるんだよ」

サイモンが言った。


「まさか……生き盾として……」

パスの瞳に、わずかな動揺が走った。


「そうなんだ。最低な政治家たちだ。命なんて眼中にないんだよ」

サイモンはため息をついた。


だが、人々が命を落とさずに、戦争が終わるわけがない。

生身の人間が一人、また一人と犠牲になって、

涙のない明日が手に入るのだ。


「サラサラ――」


背後から、落ち葉を踏む音が聞こえた。


敵兵一人が、木陰から姿を現した。


「危ない、離れろ!」


兄であるパスは即座に弟の前に立ち、銃を構えた。


「撃たないでくれ! 悪意はない、武器も持っていない。

話を聞いてくれ、頼む、撃たないでくれ……」


その兵士は、異常に強い生への執着を見せた。


サイモンが先に声を上げた。


「口ぶりからして、Y国の人じゃないようだね。

どうしてここの軍にいるんだ?」


その顔つきは、どう見ても十七、十八歳にしか見えなかった。


「もともとZ国の軍隊に所属していたが、

部隊が全滅し、Y国軍に捕まってここへ送られた……

気がついたら、周りはみんな死んでいた」


「仲間だったんだ……!」

サイモンは心の中で思った。


このときサイモンの脳裏に、ある老人の言葉が蘇った。


それも任務中のこと。村を通りかかった時、一人の年寄りが声をかけてきた。


「おい若者、お前は俺たちの国の兵士か?」

老人が尋ねた。


「はい! 国のために命を懸けて栄光を勝ち取ります!」

青二才だったサイモンは答えた。


「ふふ、栄光か……」

老人は笑った。


「俺の息子は栄光のために、二度と帰ってこなかった。

戦争なんていつだって、栄光なんて衣をまとっているだけだ。

近づいてみれば、ただの残酷なモノだよ」


「国のために戦う者に、どうしてそんな言い方ができるんですか?」

若いサイモンは腹立てはしなかったが、ただ理解できなかった。


だがすぐに、彼は理解した。


幾度もの任務。

次々と散っていく戦友の命。

跡形もなくなる村々。


そのすべてが、彼に考えさせた。


「俺はなぜ戦っているんだ?」


そして今、彼は分かった。

戦争を終わらせられるのは、平和を願う者だけだ。

野望も殺戮も、永遠に尽きることはない。


そして今、彼は自らの行動で、

同じような少年を救おうと決意した。

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