第63代司命神、この世に降臨!
「うわぁ、わぁ」
部屋の中から赤ん坊の泣き声が漏れてきた。
「おめでとうございます、司命様。お子様が無事にお生まれになりました」
「それは良かった。今日から、この子が霊屋の第63代司命だ」
「お名前はどのようにお定めになりますか?」
「名付けよう。加茂恵――」
鷹が一帯の雪の森をかすめて飛んでいった。そこに春はなく、一年中吹雪に見舞われている。林の中からわずかな炊き煙が漂っている。ここはまだ戦火の及んでいない浄土だ。
「ママ、人は死んだらどこへ行くの?」
「世の中に霊屋という場所があって、人はみな死んだらそこへ魂が行くのよ」
「じゃあ、ママと私も死んだら、そこで会えるの?」
「会えるわ。たとえあなたがママを見つけられなくても、ママが絶対にあなたを見つけるから」
「じゃあ、来世はどこへ行くの?」
「司命神様が私たちを転生させてくださるの。どこへ転生するかは、私には分からないわ」
「猫になっても犬になっても、ママと一緒に家族になりたい」
少女は顔を母の胸に埋めた。
「いい子、考えすぎないで。早くお休みなさい」
母はその頭をそっと撫でた。
明かりが消えた。雪と風が激しく家の壁を叩き、動乱の時代に残る僅かな平穏を打ち砕かんとするかのようだ。
そして戦火の舌は、まるで毒の蟒蛇のように、ひっそりとこの地に忍び寄っていた。




