第四部:騎士の誓い、愛の誓い
二人の決死の捜査は実を結んだ。
彼らはついに暗殺計画の全貌を突き止めた。建国記念式典でダリウスが民衆の前で演説を行うその最中に、複数の暗殺者が同時に襲いかかる、という恐ろしい計画だった。
そして、運命の式典の日がやってきた。
広場は何万という民衆で埋め尽くされていた。俺たちは、暗殺者たちの顔も潜伏場所も、全て把握していた。だが下手に動けば民衆を巻き込む大パニックになりかねない。計画が決行される、そのギリギリの瞬間まで待つ必要があった。
やがてダリウスが演説台に立った。彼が声を張り上げたその瞬間だった。
「今だ!」
アリアの鋭い声が飛ぶ。
群衆の中から数人の暗殺者が、一斉にダリウスに襲いかかった。だがその刃がダリウスに届くことはなかった。
彼らの前に閃光のように割り込んだ黄金の人影。
ガイだった。
彼はこの日のために、特別に着用を許された、かつての勇者の鎧をまとっていた。
彼はもはや一人ではなかった。彼の周りには、彼を信じ慕う若い騎士たちが、完璧な連携で暗殺者たちを次々と無力化していく。
だが、リーダー格の最後の一人が隠し持っていた毒塗りの短剣を、ダリウスに向かって投げつけた。
誰もが間に合わない、と思ったその時。
ガイは自らの体を盾にして、ダリウスの前に立ちはだかった。
ぐさり、と鈍い音が響く。
短剣は鎧の隙間を抜け、彼の肩に深く突き刺さっていた。
「……ぐっ……!」
だが、ガイは倒れなかった。彼はその手傷を負った体で、最後の一人を完璧に取り押さえた。
「……ダリウス宰相閣下、ご無事ですか」
その言葉を最後に、彼はその場に崩れ落ちた。
数日後。
王城の一室でガイは目を覚ました。
肩の傷は深かったが、王宮の最高の治癒魔術師たちの治療により、一命は取り留めていた。
彼がゆっくりと目を開けると、その枕元でアリアが付きっきりで彼の看病をしてくれていたことに気づいた。
「……アリア、団長……」
「……気がついたか。愚か者め」
その声は厳しかったが、その目には涙が浮かんでいた。
「……なぜ、あんな無茶をした。お前が死んでいたらどうするつもりだったのだ」
「……俺の役目ですから」
ガイは、か細い声で答えた。
「……俺は、ずっと考えていた。俺がなるべきだった本当の英雄の姿を。それは敵を殲滅する者ではない。ただひたすらに守るべきものを、その身を盾にしてでも守り抜く者……。ようやく、それが分かった気がします」
アリアは何も言えなかった。ただ彼のその傷だらけの手をそっと両手で包み込んだ。
「……私は、ずっとお前にそうなってほしかったのだ……。私が憧れた騎士の姿に……」
その涙ながらの告白。
ガイは驚きに目を見開いた。そして、彼は意を決して彼女の手をそっと握り返した。
「アリア様……。俺が、あの暗い絶望の底から這い上がることができたのは、あなたのおかげだ。あなたの、その気高い姿が、俺の唯一の道標だった。……俺が本当に守りたかったのは、いつだって、あなただったのかもしれない」
贖罪を終え、真の英雄となった青年。彼の帰りを待ち続けた気高き騎士。
二人の不器用な恋が、ようやく始まる瞬間だった。
アストリア王国に、新しい希望の光が灯った瞬間でも、あった。
騎士の誓い、愛の誓い(完)
最後まで、ありがとうございました。
また別のお話でお会いできればと思います。




