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スキルなしの最弱勇者、追い出された先が実は宝の山だったので、日本の知識で楽園国家を建国します  作者: 鈴城幻司
サイドストーリー:「ニイガタ」の誕生

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第二部:未知への遠征

開拓します!


数週間後、トーキョーの正門前には選び抜かれた二十名の開拓団が集結していた。屈強な元兵士たちに加え、ギデオン、ボルグとその息子。彼らが身に着けているのは、重い鎧ではなく動きやすい革の服。背負っているのは剣や槍だけでなく、測量に使うための俺が考案した簡易的な測量器具や地質を調べるためのハンマー、そして、この土地に自生する植物を記録するための大量の羊皮紙だった。


俺たちの旅は戦争ではない。未来を創るための未知への挑戦だ。


「……必ず、帰ってきてくださいね、あなた」


見送りに来てくれたリリアーナが、心配そうに俺の服の袖を握る。俺は、彼女の隣で少し不安そうに俺を見上げる息子の頭を撫でた。


「ああ、大丈夫だ。すぐに戻るさ。アラタ、母さんのことをしっかり守ってやれよ」


「うん!」


力強く頷く息子の姿に、俺は笑って馬上の人となった。リリアーナと街の皆の「いってらっしゃい!」という声を背に、俺たちは東へと向かった。


トーキョー周辺の整備された森を抜けると、そこからは全くの手つかずの荒野が広がっていた。道なき道を進み、夜は交代で火の番をしながら獣や魔物の襲撃に備える。そんな緊張の旅が数日続いた。


そして、俺たちは巨大な岩が連なる険しい渓谷地帯へと足を踏み入れた。


「……静かすぎる」


先頭を進んでいたボルグの息子が鋭く呟いた。鳥の声一つ聞こえない。不気味な静寂が渓谷を支配していた。


その時だった。


「上だ!」


誰かの叫び声と同時に、空気を切り裂く鋭い風切り音が、俺たちの頭上を通り過ぎた。見上げると、岩山の頂から十数羽の翼を持つ魔物が、一斉にこちらへ滑空してくるところだった。


疾風竜シップウリュウだ! 厄介なのに見つかった!」


元兵士の一人が顔を青くして叫んだ。それはカマイタチのように風を操り、集団で獲物を狩るという危険なワイバーンの亜種。その速度は矢よりも速い。


「馬車を守れ! 散開するな!」


ギデオンの怒号が飛ぶ。だが疾風竜の動きは、あまりにも速かった。一羽が急降下し、その鋭い爪で俺たちの荷馬車の幌を紙切れのように引き裂いていく。


「くそっ!」


弓兵たちが必死に応戦するが、その矢は俊敏に空を舞う敵には、まるで当たらない。完全に俺たちは獲物として翻弄されていた。


このままではジリ貧だ。俺は岩陰に身を隠しながら、必死に敵の動きを観察していた。奴らは、必ず風上から急降下してくる。そして獲物を奪うと、すぐに渓谷に吹き上げる、上昇気流に乗って空高く舞い上がる。その動きは、機械のように正確で、そして単調だった。


「……分かった。奴らの習性、日本の鷲と同じだ。上昇気流の発生する場所は決まっている。そこに罠を張るぞ!」


俺は、仲間たちに叫んだ。


「この先の道が狭くなっている場所に急げ! そこで奴らを迎え撃つ!」


俺たちは、荷馬車を捨て身一つで渓谷の隘路へと駆け込んだ。そこは両側を高い崖に囲まれ、上空からの攻撃が届きにくい天然の要害だった。


「馬車の幌を、ロープで崖と崖の間に張り巡らせろ! 疑似的な天井を作るんだ!」


俺の突飛な指示に、皆は戸惑いながらもすぐに行動に移してくれた。俺たちは数枚の幌を繋ぎ合わせ、隘路の上に不格好な「屋根」を作り上げた。


案の定、上空からの攻撃ができなくなった疾風竜たちは、苛立ったように隘路の入り口から、低空で突撃してきた。


「今だ! 迎え撃て!」


真正面から直線的に突っ込んでくる敵など、もはや、ただの的だ。隘路の両脇に隠れていた兵士たちが、一斉に槍を突き出し矢を放つ。先頭の数羽が悲鳴を上げて地面に叩きつけられた。


リーダーを失った群れは混乱し、やがて散り散りに逃げていった。俺たちは一人の犠牲者も出すことなく、この窮地を乗り切ったのだ。


そんな死闘を乗り越え、渓谷地帯を抜けた、その時だった。


「……おお……!」


誰もが、息を呑んだ。


目の前に広がっていたのは、地平線の彼方まで続くかのような、広大な広大な緑の平野。その中央を巨大な川が悠々と流れている。


「なんて土地だ……」


ボルグが涙声で、その場に膝をついた。彼は農夫の性で、おもむろにその地面の土を両手ですくい上げた。


「見てくだせえ、領主様。この黒々とした土を……! しっとりと手に吸い付くようだ。これならどんな作物でも育つ! 間違いねえ!」


その目には、故郷を追われた農夫が、初めて再び自分の土地を得たかのような深い感動が浮かんでいた。だが、ギデオンは険しい顔で川の対岸を指さした。


「しかし、領主様。あそこをご覧くだされ。川の氾濫した跡が生々しく残っている。この大平原は一年のうちに、何度も水の下に沈む呪われた土地でもあるようですぞ」


彼の言う通りだった。豊かさと危険は、常に隣り合わせだ。


だが、俺は笑っていた。俺の目には、この広大な平野が、すでに黄金色の稲穂で埋め尽くされている未来が見えていた。


「ああ。だからこそ、やりがいがある。ギデオン、ボルグ。俺たちの本当の仕事は、ここからだ。この暴れ狂う川の神を、俺たちの知識で完全に支配下に置いてやる」


その言葉に、二人の顔にも、笑みが浮かんだ。それは、これから始まる途方もない戦いを前にした開拓者だけが浮かべることのできる不敵な笑みだった。


明日も19時に更新します!


クリスマスが終わると

もう年末って感じですね|´-`)チラッ

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