賢者、愛する家族の元へ帰還する
全てを賭けた再召喚――
隕鉄の粉末が、黄金のワイヤーが、俺の意志に呼応して膨大なエネルギーを生み出していく。大地が、地脈が、俺の描いた数式に共鳴し唸りを上げる。世界が、歪む。空間が、悲鳴を上げる。
そして、あの、全てを白に染め上げる光の奔流が、俺を包み込んだ。
だが、今度の光は、冷たくはなかった。
それは、懐かしい、温かい光だった。
光が、収まる。
俺の鼻をついたのは、土と、緑と、そして、微かな味噌の匂い。俺が立っていたのは、見慣れたトーキョーの街の広場の真ん中だった。
俺の突然の出現に、周りにいた村人たちが、最初は幽霊でも見るような目で固まっていた。
だが、一人が気づいた。
「……りょ、領主様……?」
その声が、合図だった。
「領主様だ!」
「ケンタ様が、帰ってこられたぞ!」
地鳴りのような歓声が街を揺るがした。ギデオンが、レオが、ボルグが、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、俺の元へ駆け寄ってくる。
俺は、その歓声の輪の向こうに一つの人影を見つけた。
我が家の扉の前で、少し大きくなった男の子を腕に抱き、ただ呆然と立ち尽くしているプラチナブロンドの髪の美しい女性。
リリアーナ。
彼女の瞳から、信じられない、というように、一筋の涙がこぼれ落ちた。
俺は仲間たちの輪を抜け、一歩、また一歩と、彼女の元へと歩み寄った。もう言葉はいらなかった。
彼女が、何かを言う前に、俺は、愛する妻と少し大きくなった息子を、力いっぱい抱きしめた。
「……おかえりなさい、あなた」
涙声で、ようやく絞り出すように言った彼女に、俺は最高の笑顔で答えた。
俺は、ただの書店員として、異世界に召喚された。
だが、今、俺は、自らの意志で、この世界を選んだ。
俺が持ち帰った唯一の宝。それは、「運命は、与えられるものではなく、自らの手で、掴み取るものだ」という、確信。
俺は、愛する家族の温もりを感じながら、心の底から呟いた。
「――ただいま」
俺の、本当の人生が、今、ここから、始まる。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
終わったーーー
が、実を言うと、サイドストーリーが
たっぷりあります(笑)
ちょっとずつ公開していきますので、
引き続き、どうぞよろしくお願いします!




