権力と欲に狂った宰相の哀れな末路
完全崩壊した王国軍でした。
後方の丘の上。豪華な天幕の中から、その光景を眺めていたバルドルは、怒りに顔を真っ赤に染め、わなわなと震えていた。
「……使えぬ! どいつもこいつも、使えぬ愚か者どもめ!」
彼の完璧な脚本は、ケンタの知恵、ガイの覚醒、そして、魔王軍の介入という三つの想定外によって、ズタズタに引き裂かれたのだ。
「こうなれば、是非もなし……。街ごと、反逆者どもごと、全てを焼き尽くしてくれる!」
バルドルは、懐から黒いオーブを取り出した。それは古代の禁断の魔道具。発動させれば、この一帯を、生命の存在しない死の大地へと変える、最終兵器。
だが、彼が、そのオーブに魔力を込めようとした、その時。彼の首筋に、冷たい、鋼の感触が、ぴたりと添えられた。
「……そこまでだ、宰相閣下」
声の主は、いつの間にか、彼の背後に回り込んでいた、俺だった。
ゼオンたちが空から陽動を行っている間に、俺は、森を知り尽くした民兵の精鋭と共に、秘密の獣道を通って、敵の本陣に忍び寄っていたのだ。ドラゴンの炎が敵の注意を天空に釘付けにしている間に、俺たちは影のように、音もなく、丘を駆け上がっていた。
「……き、様……!」
「あんたの負けだ、バルドル。チェスで言うところの、チェックメイト、ってやつだ」
俺の合図と共に、物陰から、武装した民兵たちが現れ、バルドルの護衛たちを、一瞬で無力化した。全ての悪事を暴かれ、最後の切り札さえも封じられたバルドルは、その場に崩れるように膝をついた。その顔には、もはや権力者の威厳はなく、ただ、全てを失った老人の、空虚な絶望だけが浮かんでいた。
戦いは、終わった。
トーキョーの街は、深い傷を負った。だが、俺たちは、守り抜いたのだ。
俺は、捕虜となった王国軍の兵士たちを罰しなかった。傷ついた者はリリアーナの指揮のもと、トーキョーの野戦病院で分け隔てなく治療させた。彼らは、ただ騙されていただけなのだ。最初は戸惑い、怯えていた王国の兵士たちも、俺たちのその処遇に、次第に武器を向けた相手への憎しみではなく、人間としての尊敬の念を抱き始めた。
味方も敵も、みんな同じ人間だよって。
明日も19時に。
どうぞよろしくお願いいたします。




